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【潜入任務】要塞へのスニーキングミッション

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【潜入任務】要塞へのスニーキングミッション

リアクション

 4


『連絡する。サオリ・ナガオがたった今拠点に帰って来た。要救助者も救助済みだ。もうそこに用は無い。帰ってきていいぞ』
「それができたら苦労しねぇんだよ!!」
 恭也は全力疾走しながらHCに向かって叫ぶ。
 彼らは未だに逃走中だった。
 機晶姫と古代兵器は、要塞を破壊しながら、恭也と国頭に砲撃しながら、ひたすらに追っていきているのだった。
「つーか! あの機晶姫は何なんだ!? 突然現れてミサイルポッドで白衣金髪殴りつけて! 仲間だと思ったら古代兵器乗っ取って攻撃してきて! 古代兵器は無駄に強いし! 仕方なく気絶したふりしてやり過ごそうとしてたんだけど! あーもう! とりあえず何なんだよアレ!」
 HCの向こうにいるマーゼンは、冷静に言う。
『今、サオリ君に見せてもらった写真を見ると、この機晶姫は作戦の参加者だな。ヘンゼル・オルバーツ(へんぜる・おるばーつ)。作戦開始前に彼のパートナー、瀬山 裕輝(せやま・ひろき)に、暴走の危険があるようだから気をつけるように、と連絡が入っている』
「あぁ!? なんじゃそりゃ! パートナーくらいちゃんと管理しろっての!」
『ついでに言うと、暴走状態は人型を発見し次第、誰彼構わず攻撃してくるようだ。……全く、コイツの報酬も減らしておくか』
「あんな邪魔しかしてねぇ奴に報酬なんざいらねぇよ!!」
『あと、その古代兵器は危険なようだから絶対に外に出さないようにしてくれ』
「逃げ続けろってか! 死ぬまで! 馬鹿なの!? 死ぬの!? 死ねよ!」
『そうだな。とりあえず古代兵器を動かしているのは機晶姫なんだな? なら機晶姫の機能を停止しろ』
「それは……無理だ。それくらい試してる。攻撃を全部古代兵器が弾いちまうんだよ。古代兵器についての情報は無いのか? 弱点とか」
『あぁ、なら情報をもってきた奴に直接聞くといい。ダリル君、説明を頼む』
 HCの向こうで通信機を手渡す音が聞こえて、程なくすると、
『ダリルだ。俺が手に入れた情報によると……っておい! 何する!』
 という声が聞こえ、通信機を奪い取るような音がする。
『あなたが情報とったから私の手柄が無くなったのよ! 説明くらいさせなさい! ……天貴よ。古代兵器について説明するわ』
「うん。もうさ、何でもいいからはやくしてくれ」
『その古代兵器は、操縦者の防御に徹した兵器。操縦者に向けられた【敵意】とか【殺意】に反応して、攻撃される前に攻撃する。そうすることによって、操縦者への攻撃を未然に防ぎ、防御するわけ。攻撃方法は武器の召喚。レールガンやら刃物やら、その【敵】に一番効果のある対処法を分析し、自動的に攻撃するみたい。そして操縦者への攻撃も全て、分析されて、無効化される。古代兵器自体への攻撃も、すべて無効化される』
「防御ってこれが? まぁいいか。それじゃ、【敵意】を持たなければいいのか?」
『いやいや、無理でしょ。そんなこと。自分を殺そうとしている相手に向かって、思いやりとか優しい気持ちが持てる?』
「あぁ……、無理だな。じゃ、どうしようもないじゃないか! 攻撃はできないし……。あ、古代兵器のエネルギー切れとかは?」
『これの管理者によって改造されて、核融合炉が仕込まれているわ』
「あの白衣金髪め…。某人型決戦兵器でもケーブル無しじゃ5分だぞ。使徒かアレは」
『まぁ、結局、操縦者をどうにかするか、コントローラーをなんとかするしかないわね』
「コントローラー?」
『えぇ、カチューシャ型の脳波測定機みたいなもの。それを装着する者を守るように設計されているみたいよ』
 恭也は追ってくる機晶姫を見る。よく見ると、カチューシャのようなものを頭に着けている。
「そういやあの白衣金髪が着けてたな。アレを奪ったのか。……つーかどっちにしろ攻撃できねぇんだから意味無いじゃないか」
『そうねー。絶体絶命ってやつかしら』
「他人事だなオイ……」
 その時、並走している国頭が、呟く。
「【敵意】に反応するんだな? 攻撃も防御される。ふむ。ということは、こちらからの攻撃は全て、【敵意】あるものとして防御されているんだな?」
『まぁ、そうね。盾で受けるのではなくて、攻撃に攻撃をぶつけて【相殺】する感じ』
「なら、なんとかなるかもしれない。つまりは【敵意】の無い攻撃は防がれないんだろ? よし、着いてこい」
 国頭はHCで誰かに連絡をとりながら、先行し始めた。

   ■

「オイオイオイ! 行き止まりじゃねぇか!? この先って!」
 恭也と国頭はしばらく走り続け、やがて一本の通路に出た。しかし、その先は行き止まりだった。
 逃げ場を失い、ヘンゼルと古代兵器がだんだんと迫ってくる。
「オーイ。これで死んじまったらマジで呪うぞ」
「大丈夫だ。勝算は十分ある。そしてもう、俺達の仕事は終わった」
「えぇ? 何もしてなくね? 逃げてただけじゃね?」
「まぁ、見てろ。すぐ分かる」
 そうしている間にも、機晶姫と古代兵器は迫ってくる。
 しかし、ヘンゼルと恭也たちの距離が20メートルを切った時だった。
 突然、ヘンゼルの足下が、ドッ! と爆発した。
「!!?」
 ヘンゼルの体が吹っ飛ぶ。
 国頭は呟く。
「クレイモアって知ってるか? アメリカ軍が使ってた地雷の一種だ。トラップなら、物だから【敵意】、意識すらもないだろう。つまり、防げない」
 国頭は、潜入した直後、紫月と遭遇し、彼がクレイモアを持っているのを知っていた。
 そこで、先程の連絡で、指定した場所にクレイモアを仕掛けるように頼んでおいたのだ。
 紫月に着いて行った、葛城の【トラッパー】のスキルを使えば、特定の機晶姫だけに反応するように仕掛けることも可能だ。
 ヘンゼルの体は、クレイモアにより吹っ飛び、機能が停止した。古代兵器も操縦者の意識が無くなったので動かなくなった。
「ふぅ。とりあえず落ち着いたが……、こんだけ派手にやらかせば流石にマズいか。柊、だったか。そこの機晶姫連れて、人が集まってくる前にとっとと逃げようぜ」