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学生たちの休日10

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タシガンのフィーニス・アンニー

 
 
「はあ、疲れたなあ。なんで、この屋敷はこんなに大きいんだあ?」
 炬燵に突っ伏したまま、冴弥 永夜(さえわたり・とおや)が言いました。
「さあ、自分の屋敷ながら、ときどき広すぎるとは思いますね」
 アンヴェリュグ・ジオナイトロジェ(あんう゛ぇりゅぐ・じおないとろじぇ)が、空になったワイングラスを指で弾きながら言いました。
 アンヴェリュグ・ジオナイトロジェ邸を二人で大掃除しただけなのですが、とにかく広かったのでもうくたくたです。
 普段住まわせてもらっているときはあまり気にしないでいたのですが、あらためてみるとやっぱり大きなお屋敷です。
 やることはやったので、後は年越し宴会ということになったわけですが、買いおきが少なかったので、あっという間にワインとつまみが尽きてしまいました。
「困ったねえ。誰か買いに行く人いないかねえ。おや?」
 自分たちでは買い物に行こうとしないアンヴェリュグ・ジオナイトロジェたちでしたが、ちょうど運よく凪百鬼 白影(なぎなきり・あきかず)ロイメラ・シャノン・エニーア(ろいめら・しゃのんえにーあ)がやって来ました。
「おっ、いい所へ。ロイメラ、白影、ちょっとワイン買ってきてくんないかあ」
 炬燵板にほっぺをくっつけたまま、冴弥永夜が言いました。
「あ、つまみもお願いだよ」
 アンヴェリュグ・ジオナイトロジェがつけ加えます。
「買い物なら行くところでしたが……」
 ロイメラ・シャノン・エニーアが答えました。
「資金なら、そう、永夜君から……」
「あっ、金ね」
 アンヴェリュグ・ジオナイトロジェに言われて、冴弥永夜が財布をごそごそとかき回し始めました。
「いえ、それ以前に量が……。ただでさえ、持ちきれなさそうなので白影さんにお手伝いを頼んだのですが。困りましたねえ」
 ロイメラ・シャノン・エニーアが、ホントに困ったように言いました。
「だったら、永夜君を連れていくといい。ここは、若い二人と一緒に、若い永夜君が行くべきだよね。聞いてる?」
 アンヴェリュグ・ジオナイトロジェが、冴弥永夜の方を見て言いました。
「えー、何か言った? オレはスポンサーだから、行かないの。炬燵に入ってぬくぬくするのー」
 きっぱりと、冴弥永夜が答えました。どうも、二人とも、少し酔っているみたいです。
「まったく、いい年こいた二人が、何を言っているんだ。そんなの関係ないから、一緒に来て荷物持てよ」
 少し怒って、凪百鬼白影が言いました。ロイメラ・シャノン・エニーアに手伝ってほしいと言われて一つ返事で荷物持ちを買って出た凪百鬼白影ですから、この二人の態度は我慢ができません。
「いーやーだー」
 炬燵に突っ伏したまま、冴弥永夜が答えます。
「やっちゃっていいですよね。答えは聞いてません」
 そうロイメラ・シャノン・エニーアに言うと、ホントに返事を聞かずに凪百鬼白影がグーで冴弥永夜をひっぱたきました。ロイメラ・シャノン・エニーアが止める暇もありません。
「いってえ、グーはないだろうが、グーは!!」
 一気に酔いが覚めて、冴弥永夜が叫びました。
「仕方ないですね。一緒に行くとしますか。でないと、こっちまで殴られそうだ」
 そう言って冴弥永夜を炬燵から引っ張り出しながら、アンヴェリュグ・ジオナイトロジェが言いました。
 
    ★    ★    ★
 
「ええと、後買いそろえる物はと……」
 メモを見ながら、ジェイムズ・ターロンが、タシガン商店街を歩いていました。年末年始は、とかく買い物が多くなります。
 商店街も、買い物客で賑わっていました。
 ちょっとじゃれ合うようにたくさんの買い物をかかえて歩いてくる青年四人組とすれ違い様に軽く会釈します。
 アンヴェリュグ・ジオナイトロジェが、軽く目で挨拶を返しました。
「さてと、急ぎますか」
 ジェイムズ・ターロンは、次のお店へとむかいました。