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【第三話】始動! 迅竜

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【第三話】始動! 迅竜

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 同日 シャーレット宅

 自宅でセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)はガラステーブルにノートを広げた。
 彼女とパートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は『偽りの大敵事件』の調査を続行していた。
 調査方針は前回と同様に、『証拠隠滅を図ったが故に生じた矛盾点』を調査の軸としている。
 いくつか判明したことを改めて列挙し、それを基に話し合ってみるべく、彼女は先程からセレアナと二人で自宅に詰めていた。
 場所が自宅なのは、盗聴等々を警戒してのことである。
 無論、既に自宅は検査済みだ。
 はじめにセレンフィリティは今まで判明した事項を思い出していく。
「まずは、これまでに判明した事実を徹底的に精査し、注意深く疑問点を抽出してみるのが良いかしら」
 そう切り出すと、セレンフィリティはガラステーブルの上に置いたノートに一つ一つ書きだしていく。
「事件の発端となった惨劇、その原因となった学生サークルへの技術供与の件だけど、いくら開発に焦っているからと言って、機密保持やリスク管理の面から見ても下策よね? にも拘らず、一介の学生サークルに対してそれは行われ……惨劇が発生した。そこにこそ、九校連内部の暗闘の痕跡が残っていると見るわ」
 ゆっくり、確かめるように語っていくセレンフィリティに、セレアナは静かに頷くのみだ。
「九校連内部の反主流派……と仮称するわね。それも同様にこの学生サークルの存在を既に把握していたはずで……技術供与を行ったのは、反主流派側――少なくとも、あたしはそう仮説を立ててる」
 するとセレアナは頷かず、問い返した。
「その反主流派というのがいるとして、なら、反主流派の目的に関してはどう思ってるの?」
「目的は無論、統一規格イコンの開発阻止ね。反主流派もそれなりの勢力を持つ以上、開発陣に内通者がいてもおかしくはなく、そこから漏洩したとみるべきよ……ただ、それでも疑問が残るわ」
「聞かせてちょうだい」
「なぜ、彼らは技術をそのサークルに供与したのかが今ひとつ解せないのよ。あのような惨劇が起きれば反主流派が一気に窮地に追い込まれるのに……現実は違う。もしかすると、そのサークル自体に何かあるのかもしれないわね」
 セレンフィリティがあらかた語り終えると、今度はセレアナの番だ。
「私の方は件のサークルの方を調べてみたわ。主にこのサークルの人間関係を中心に、どういう人物が顧問であり、その人脈はいかなるものか、サークルメンバー個々人はどのような人物であり、家族や関係者に九校連に関係する者がいるのかいないのか……と言った事を中心にね」
 だが、そこまで言ってセレアナは浮かない顔をする。
「とまあ、調査を開始したはいいんだけど、どうやらそのサークル、学校に公認されたものではなかったらしくて、しかも、仲間内だけである種ひっそりと動いていたサークル――いわば、学生同士が集まった秘密サークルだったせいか、なかなか情報がなくてね。だから、顧問もいないらしいわ」
 そこで一旦間を置くセレアナ。
「でも、何も掴めなかったわけじゃないわ。完璧な証拠隠滅が不可能なのと同様、人間関係も一度構築されたらそれを完全に抹消するのは不可能よ……必ず痕跡が残るから」
 セレアナの言わんとすることを察し、セレンフィレティは黙って続きを待つ。
「まだ一人だけだけど、そのサークルのメンバーだったかもしれない学生の情報を掴んだわ」
 そう前置きして、セレアナは告げる。
「詳しくはまだ不明なんだけど、金団長と同じく資産家の家――といっても、規模は比べ物にならないけど、に生まれた学生で、いつかは団長のような地位を手にすると息巻いていた学生がいたらしくてね。今の所、そのサークルに関わっていそうな人物で判明しているのはその一人だけよ」
「了解。セレアナはそのとっかかりを更に深く調べてみて。あたしは今調べてることを更に深く調べてみるわ」
「わかったわ。セレン、気をつけてね」
 セレアナに頷くと、セレンフィリティは戦慄した様子で言った。
「まいったな……あたしたち、途方もない闇の中へはまり込んでる……もう後戻りできないわ……」