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年忘れ恋活祭2022 ~絆~

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年忘れ恋活祭2022 ~絆~
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「……確かここに」
 初めて恋活祭に来た柚は片思い中の海がいる『にゃあカフェ』を捜していた。実は先輩の匿名から連絡があったのだ。海を恋活祭に引っ張り出して『にゃあカフェ』に待たせているから来てくれ、大丈夫だからと。
「あ、海くん」
 柚は匿名に放置された海を発見。告白した時の事を思い出して胸がチクリと痛むも勇気を出して近付く。
「柚か。お前もこの祭りに来ていたのか」
 やって来た柚に気付いた海は少し驚いたように迎えた。これが匿名の謀とは知らない。
「はい」
 こくりと柚はうなずいた。内緒にするように言われているので決して匿名の事は話さない。
「突っ立てないで座れよ」
 ぶっきらぼうに海は柚に座るように言った。
 柚はこくりとうなずき、向かいの席に静かに座った。
「……」
 女性の扱いが苦手な海は向かいに座る柚を見ながら誘うべきかどうか誘うならどうやって誘ったらいいのかなど匿名に言われた事を考えている。柚も沈黙して同じく祭りに誘うかどうかで迷っている。
 そこに
「どうぞ」
 海と匿名のやり取りに加わっていたエースが気を利かせてカップルケーキを配達。
「可愛いケーキですね」
 柚は可愛いケーキに喜んだ。
「……いいのか?」
「構いませんよ」
 エースは急な出来事に慌てる海ににこやかに答えてから退散した。
「……それ食べたら祭り見て回るか」
 心を決めた海はカップルケーキを食べながら柚を祭りに誘った。多少なりとも匿名の説教が効いたようだ。
「いいんですか」
 柚はぱっと顔上げた。匿名に大丈夫だと言われてはいたが信じられなかったのだ。
「……せっかくだしな」
 嬉しそうな柚から顔を背ける海の顔はどことなく照れていた。まだ恋人になると答えてはいないが、端から見ればこれは歴としたデートだから。
 『にゃあカフェ』でゆっくりした後、柚と海は仲良く店を出た。
 その様子を影ながら見守っていた匿名は店から出てくる二人を確認するなりこの場を後にした。これ以上は野暮なので。
「……土産でも買って帰るか」
 用事で来られなかった恋人のために美味なる紅茶の葉を買って帰宅した。恋人と仲良く美味しいひとときを過ごすために。

 匿名の企みにはまった柚と海は店を出て賑やかな商店街にあるスポーツ用品店で楽しんでいた。柚は海の買い物を手伝いながらこっそり海の好みやバスケをしている人の情報調査をした。以前、バスケットチームを作る応援をしてもらえると嬉しいと言われたから。柚は海のために何かしたいのだ。この後も様々なスポーツ用品店を歩き回った。

 数店目のスポーツ用品店から出た時、
「助かったぜ、柚」
 海は友人割引で安く買えたシューズの礼を言った。
「どういたしまして」
 柚は笑顔で答えた。
「……柚、何か欲しい物は無いか?」
 急に海は真面目な顔で訊ねた。歩き回った店は全て自分に関連する所ばかりだったから。
「欲しい物ですか?」
 急に訊ねられても答えられない。というか海と一緒にいるだけで満足していたりする。
「あぁ、お礼だ」
「別にお礼なんていいです。海くんの役に立てればそれでいいですから」
 海の言葉に柚は手を振りながら要らないと主張。
「それじゃ、俺の気が済まない」
「本当に大丈夫ですよ」
 気が済まない海と気遣いの柚の攻防。
「……」
 海はじっと柚の笑顔を言葉無く見ていたと思ったらぐいっと柚の腕を引っ張って歩き出した。
「ちょっと、海くん!?」
 柚は海の行動に大慌て。女性の扱いが苦手な海は一切振り向かない。
「あそこの店に行くぞ」
 海が柚を引っ張って辿り着いた先は可愛らしいアクセサリーや服などを販売している店だった。あのままだと柚は自分に気遣うばかりだから。
「……」
 柚は胸が嬉しさでキュッとなっていた。結局、友達割引でバスケットボールの飾りが付いた携帯ストラップを海に買って貰った。選んだ理由は海の大好きなスポーツだった事といつでも持ち歩きたいから。
 この後、二人は存分に祭りを楽しんだ。

 中央広場の時計塔の前。

「……来てくれて良かったです。もしかしたら迷惑ではと思ってしまって」
 紅き祝福の装束を身に付けたシャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ)は待ち合わせをしていたセイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)が来るのを発見して心底安心していた。
「当然でしょ、約束したんだから。というかすっかりサンタじゃない」 
 と言いつつセイニィはシャーロットの服装に目をやった。シャーロットはサンタクロースをイメージさせるようなミニスカ風の愛らしいデザインの衣装を着ていた。
「……似合いませんか?」
 シャーロットはセイニィにちょっと聞いた。
「あなた可愛いからそんな事無いと思うわ」
 セイニィはさらりとシャーロットを褒めた。
「……セイニィ」
 シャーロットは嬉しさに頬を染めた。
 そんな事は見て見ぬふりをしてセイニィが行き先を訊ねた。
「で、どこに行きたいの?」
「記念品の金と銀のベルが欲しいんです。ただ、カップルに配っている物で、だからセイニィが良ければですけど」
 シャーロットは控え目に答えた。まだカップルではないのに誘うのは少し失礼かなと思いながら。
「……あぁ、もう、ほら、貰いに行くわよ!」
 シャーロットの気遣いに焦れたセイニィは腕を掴み、引きずって金銀ベルを貰いに行った。ベルは金をセイニィ、銀をシャーロットが持つ事に。ちょうど髪の色だったりする。
 その後、夜になるまでクレープを食べたり露店を楽しんだりした。