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 第2章

「おらおらぁー! パラ実をなめんじゃねーぜ!」
 ワイルドペガサスにまたがり、暴走族風に叫んだのはゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)。彼はアテナを乗せ、誘拐犯がひそむアジトに突撃していた。
「ところで、アテナは9歳なんだよな。おっぱいにとっては、いちばん大切な時期だ。しっかり育てないとな」
「うん。アテナ、おっぱい育てるー!」
「いいぞ! その意気だ! ほら、アメでも食え」
 ポケットから取り出したアメを差し出すゲブー。そうするうちにも、ペガサスはフェンスをぶち破り、突進していく。
 作戦もなにもあったものではない。
「このまま瑛菜のとこまで行くぜー。うおー!」
「おーっ!」
 考えるよりも行動するほうが得意なふたりは、すっかり意気投合していた。 

「ちっ。変装して紛れ込もうと思ったんだがな」
 突進するゲブーたちの前にいたのは、ローグ・キャスト(ろーぐ・きゃすと)とそのご一行。パートナーのコアトル・スネークアヴァターラ(こあとる・すねーくあう゛ぁたーら)フルーネ・キャスト(ふるーね・きゃすと)が並んで立っている。
 彼らが対峙するのは、ふたりの誘拐犯だった。
「バカめ! そんな変装で騙せると思ったか!」
「途中まで騙されてたくせに……」
 フルーネが口を尖らせながら、誘拐犯に言った。
「やれやれ。さすがに見くびりすぎたようだよ」
 武器形態のコアトルが嘆いた。財閥に雇われただけあって、ネットワークはそこそこ堅い。
 激昂する誘拐犯が、ローグたちに向けて叫ぶ。
「お前ら! 俺達のアジトに侵入して無事で済むと思うな!」
「もちろん。このまま終わると思っちゃいないさ」
 ローグが、武器化したコアトルを構える。蛇矛を手にしたローグは敵に向き直り、戦闘態勢をとった。
「バレちまったもんはしょうがねぇ。とことん暴れてやるよ」
 開き直ったローグが、誘拐犯に斬りかかる。
 蛇矛となったコアトルが一閃した。激しい剣戟の前に、犯人のひとりがなぎ倒される。
 物足りなさそうに、ローグが嘆いた。
「おいおい。これで終わりかよ。こんな弱いんじゃ、小細工する必要なかったな」
 構え直したローグの蛇矛が、残りの敵を眠らせるまで、さしたる時間はかからなかった。
「……証拠。しっかり取っておかないと」
 その間、フルーネは誘拐犯が残した痕跡を保存していた。この手の事件は黒幕を捕らえない限り決着がつかない。
 証拠をつかみ、依頼主を逃さない思惑だ。
「……でも。こんなこと企むなんて、いったい何者なんだろう」
 誘拐犯の歯型を取りながら、彼女は事件の黒幕に考えを巡らせていた。