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怪魚に飲み込まれた生徒を救え!

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怪魚に飲み込まれた生徒を救え!

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■ エピローグ ■



 割いたパラミタワカヅマの腹からズルリと海がずり落ちる。
 男八人の犠牲を経て、高円寺海の救出はなんとか成功したのだった。
 同時に船の上には収穫として二匹のパラミタワカヅマが横たわっていた。
 安全圏から世にも珍しいパラミタワカヅマの群れを堪能した男は緩やかに船の進路を変える。
「あー、びっくりした。結構鋭い牙だったね」
「食べられかけて言う台詞かねぇ」
 危なかったと語るエースの余裕にメシエは両肩を竦めて船の上に横たわる契約者達を眺めた。
 三匹のパラミタワカヅマにもみくちゃにされていながらエクソスケルトンとポータラカマスクという完全防備で身を固めていたダリルは、横たわり動けない人間の診療にあたっている。ルカルカは二匹の内既に解体されたパラミタワカヅマの切り身を許可を得て焼き始めていた。
 香ばしい匂いが周囲に立ち込める。
「で、行方不明になった勇を羽純が発信機を辿って追いかけている最中だ。 ……大丈夫か?」
 オリバーは横たわる甚五郎に簡単に状況を説明する。甚五郎は最後のほうでどうやら飲まれたらしい。そして勇は連れ去られたらしい。
「お、おつかれさまです」
「うむ。だいぶ役に立っていたのだよ」
「モテるってのは罪だよなぁ〜」
「うむ。しかし、吾輩もいつ食べられるかハラハラしたぞい」
 無事役目を終えて戻ってきたケルピーとアガレスにリースと隆元は無事な面々に安堵に胸を撫で下ろした。
 パラミタワカヅマの毒牙にかかりながらも鱗のおかげか症状が軽く済んでいたブルーズは動かない魚を正子の包丁片手に解体することに忙しい。
「上品な白身は、天ぷらも美味しいかもしれんな」
 どう調理しようか考える彼から少し離れた場所で一仕事終えたと天音は休憩に入った。
「海くん」
 診療と処置が終わり後は目覚めるのを待つだけの海の元へ、三月と共に柚が訪れる。
「よかった」
 ただ健やかな寝息を立てている想い人の無事な姿に少女の肩は微かに震える。三月はそんなパートナーの体を抱きしめた。
「ほれ、高級魚の大盤振る舞いだって」
 目を覚ました永夜にアンヴェリュグは程よく焼けた切り身を棒に刺さったままの形で差し出した。
 先に気絶から回復した白影はそれを不審げに、手に持ったまま食べようとしない。
「んー、お魚美味しい♪」
「そうだな」
 変装を解く機会を失いアニスと二人振舞われる焼き魚を食べながら和輝は手にした電子ゴーグルに記録されている情報を確認する。しながら、スノーにも焼き魚の一切れを持ち帰り用に用意しておいた。
「お疲れ様ですわ。それとどうぞお食べになって」
 焼き魚を受け取り戻ってきたフィリシアは武具の手入れをしているジェイコブにそれを差し出した。
「ああ、すまない」
 彼女の気遣いを知ってか知らずか当然とばかりに魚を受け取ったジェイコブをフィリシアはらしいといえばらしい態度と、軽く笑ってから邪魔にならないように彼の隣に座った。
「んー、美味しいわね!」
「高級魚っていうだけあるよね。パラミタワカヒトヅマが釣れなかったのは残念だけど、うん、採れたては美味しい」
 白身魚なのにたっぷりと脂が乗っていてい、しかし、しつこくない甘さが舌の上でゆっくりと広がる。焼き魚特有のほくほく感とパリッと焼けた皮の香ばしさが堪らない。
 滅多に食べられない魚を堪能するルゥと紅月の側で打ちのめされているルースに近づいたのは知流だった。
「おつかれやす。エライ目に遭いましたね。これでも食べて元気だして」
「……ん」
「そないなに元気ないと困ります。デートでけへん」
「へ?」
 お茶くらいならお付き合いできますよと微笑まれ、ルースの顔は輝いていった。
 事が終わっても怒りが収まらない人間もいるもので、
「俺を餌にしやがって、許さねェ、ブチ込んでやる……」
 粘膜保護薬聖夜とまっすぐドリンコJを懐に忍ばせ、復讐を日も落ちぬ時間から誓う虎徹であった。
「貴女達の犠牲は忘れない……美味しい。女の子、美味しい」
 二匹の尊い犠牲を出したこと以上にパラミタワカヅマの美味しさにレオーナは涙していた。
「貴女達は愛を貫いた為にこれだけ美味しくなるのね」
 成長するごとに美味しくなる魚なのでその解釈は間違ってはいない。
「私も愛を貫いて美味しくなりたい」
 そうよ私は女の子を食べるパラミタワカダンナ……!
「なりたい。 ……なりたいわ、雅羅ちゃぁぁぁぁああああああああ”ー」
 どこで思考がぶっ飛んだのか突如として愛を叫び雅羅と共に海へランデブーを決行しようとタックルをかましたレオーナはしかし見事避けられ勢いで船から落ちてしまった。
 悲鳴の余韻が尾を引いて雲の底へと沈んでいった。
 一部始終を見ていた平穏を求めるクレアは、愛に生きるパートナーの生き様を見ながら、何事もなかったかのように片づけを始める。
 丁寧に切り分けられた高級魚の切り身を船を貸してくれたお礼にと雅羅は男に渡した。
「ありがとうございました」
「いや、いいってことよ。たまには契約者様達のボランティアもいいもんだな」
 田舎でのエンターテイメントは少ない。
「漁師のおじいさんたちもありがとうございます」
 心配でついてきてくれた漁師にも同じく切り身を差し出し礼を述べる雅羅に漁師は首を横に振った。
「んだば、礼さいらねぇ。ところで嬢ちゃん、今度家さこんか?」
「え?」
「嬢ちゃんおればパラミタワカヅマぁ、ぎょうさんとれそうだが」
 あくまで高級魚。田舎なので一匹取れれば一年遊んで暮らせる。若者の少ない地域では採りたくても採れない魚なのだ。
「ええっ」
「魚っこ呼ぶさぁ、女神さまぁみてぇだ」
 だからまた来いと雅羅を漁師は口説き始めた。
 飛空艇は緩やかな進路で帰港を目指す。
 雲海から徐々に姿を現す巨大な巨大な巨大な魚の姿を知らずに。
 彼女を呼び寄せたのは女神の力か、はたまた、粒ぞろいの男たちのせいか。
 飛空艇が襲われてもその真意は彼女しかわからない。

担当マスターより

▼担当マスター

保坂紫子

▼マスターコメント

 皆様初めまして、またおひさしぶりです。保坂紫子です。
 今回のシナリオはいかがでしたでしょうか。皆様の素敵なアクションに、少しでもお返しできていれば幸いです。
 私ばかりが楽しませていただいたシナリオだったので、本当にお返しできていればと思います。
 最初こそのんびりワカサギ釣りでもと考えていたシナリオがここまで変わるとは当初は全く想像もしておりませんでした。
 色々と考える時間が楽しくて本当に本当に参加してくださった皆様には感謝の言葉が尽きることがありません。ありがとうございます。

 また、推敲を重ねておりますが、誤字脱字等がございましたらどうかご容赦願います。
 では、ご縁がございましたらまた会いましょう。