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バレンタインはチョコより甘い?

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バレンタインはチョコより甘い?

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第7章

 カオスな坩堝に叩き込まれてしまったフォンデュ祭りを立て直したのは、ステージに現れたワイヴァーンドールズの五十嵐 理沙(いがらし・りさ)セレスティア・エンジュ(せれすてぃあ・えんじゅ)だった。
 SPBワイヴァーンズで、応援アイドルユニットとして活躍しているふたりにとって、司会はお手のもの。ファンとの集いのイベントなどで身につけた軽快なトークと巧みな話術、そして、細かいボケを拾う心遣いで温かな笑いを生み、ステージを楽しく華やかに盛り上げていく。
「野球応援アイドルユニットのわたくしたち『ワイヴァーンドールズ』は……」
「同じアイドルとして、『温泉娘』ちゃんたちのデビューと、CMソングの売り込みを応援するわよん」
 キラッと決めたポーズに合わせて、オーケーとフルフィが、昼用打ち上げ花火に点火する。青く晴れた冬の空に、色とりどりの煙が走り,紙吹雪が舞った。
 歓声と拍手の中、まずは、ワイヴァーンドールズが、持ち歌の野球チーム応援ソングの中から、チーム名を「温泉娘」に換えたものを披露。もちろん、マネージャーを通じて、歌詞換え許可はもらっている。
 ステージを撮影した録画は、「ワイバーンドールズの旅して乾杯」という旅番組で放映の予定だ。1ヵ月ほど後、地方ローカル深夜枠で、風船屋が紹介されることになるだろう。
(後で、料理とお風呂も堪能させてもらっちゃおっと)
 歌い終わった理沙は、そんなことを思いながら、音々にインタビューマイクを向けた。
「フォンデュ祭り、とってもステキですね! でも、どうして温泉でフォンデュ祭りなんですか?」
「詳しく聞かせていただきたいですわ」
「……はあ、清盛はんのアイデアで……」
「どうせ作るなら、チョコ風呂がいいと言ったのだ」
「チョコ風呂って、温泉みたいな効果効能があるんですか?」
「それは、その……」
「チョコレートは滋養に富んだ食物だ。風呂にすれば、効果抜群だ!」
 音々はかなり緊張気味、清盛は勝手気ままだが、理沙とセレスティアは、上手にふたりの魅力を引き出し、さらに、風船屋の露天風呂や料理、サービスの素晴らしさなどをアピールしていく。
 旅番組のカメラマンは、ワイバーンドールズのマネージャーの兼任だ。撮影した素材は、旅行雑誌にも売り込んでくれることだろう。
「フォンデュ祭りはいつまでですの?」
「ホワイトデーまで、毎日開催……です」
「チョコ風呂は混浴なの?」
「混浴になってしまったな」
 キャットファイトの後、皆が飛び込んで、混浴状態になってしまったチョコ風呂を見て、音々と清盛が、楽しそうに笑い出す。
「それでは歌っていただきましょう、『温泉娘』の風船屋CMソングです!」
 予定していた巨大ひよことの共演はできなかったが、理沙とセレスティアのおかげで、音々も清盛も、練習のときとは比べものにならないほどの歌と踊りを披露することができた。
 大勢の観客の後ろでは、淵とアレフティナが、巨大なまま、こっそりとステージを覗きにきていた。
「あれが、平清盛? なにゆえ子供、しかも娘!」
 はじめは愕然としていた淵だったが、司会の語りと演出に引き込まれ、いつの間にか、アレフティナと一緒に声援を送っている。
「ふたりとも、可愛いですね」
「俺は、ワイバーンドールズを応援したくなったな。ライバルを応援する心意気が立派だ」
「CMソングもいいですね。つい、口ずさみたくなっちゃいます」
「来月から、深夜番組でCMが流れるそうですわ。楽しみですわね」
 笹野 朔夜(ささの・さくや)笹野 冬月(ささの・ふゆつき)笹野 桜(ささの・さくら)アンネリーゼ・イェーガー(あんねりーぜ・いぇーがー)も、ステージの4人のアイドルに、惜しみない拍手を送った。