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闇狩の末裔たち

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闇狩の末裔たち

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 一方、周辺の集落には立ち寄らずに遺跡の探索に専念していた東 朱鷺(あずま・とき)らは、巨大な空間へと到達していた。
「ここは……随分と開けたところに出てしまいましたね」
 すると朱鷺の下へ駆け付けるふたりの姿があった。
「葛城探検隊・隊長、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)でありますっ」
コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)よ……って、ワタシもこれ続けるの? 最初だけでよくないですか?」
「コルセア隊員、いい質問である。適宜、省略することを認めるっ。でもなるべくは自分に付き合って欲しいっ」
「了解しましたー続けてください」
「うむっ。――ここまで幾多の困難を乗り越えてきた戦友、東 朱鷺隊員が、遂に遺跡の円形ドームと思われるエリアに到達しましたっ。おーっと、部屋の中央付近には巨大な建造物がそびえ立っている模様ですっ。いやあ、コルセア隊員、どうですかこの展開っ」
「葛城隊長、中央の建造物から敵の編隊、無数に湧いてきてます」
「コレだあああっ! やはりタダでは通してもらえないー。戦友、東 朱鷺隊員のこめかみに、冷たいものが滴り落ちるうーっ!」
「隊長ー討ち死にしますよー。第一戦闘配置ー。コンディション・コード:R。もう、夢中になると止らないんですよねー。大洞さーん、お願いしまーすっ!」
「ここまで来ると、やはり切り札の投入と相成りましたっ。機晶兵器と融合されたリザードマンの兵は、優に200隊を上回る勢いです。先ほどまでの半機晶兵器ドラゴンや機晶兵器・大蛇のような大物はすっかり態を潜めています」
 コルセアに呼ばれて奥から駆け付けたのは、大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)大洞 藤右衛門(おおほら・とうえもん)である。彼らは朱鷺が単独で潜行するのを知り、そのお伴を買って出たのである。
「この有様……超じいちゃんは、どう思われますか」
「こりゃあ凄い数じゃな。まるで関ヶ原の合戦を思い出せずにはおられんわい。頭数では圧倒的に不利じゃて、早いところ耕してしまわねばエラいコトになるのっ」
「では、自分と超じいちゃんで防衛線を張りましょう。東殿、あなたは身の危険を感じたら速やかに後方の通路へ退避してください。後は自分と超じいちゃんを信じていただきたい」
「わかりました。キミたちの支援に感謝します。ですがこれしきのことで朱鷺は退いたり致しませんっ」
 朱鷺は懐よりお札を取り出すと、そのすべてを宙に放った。
「乾(ケン)、坤(コン)、震(シン)、巽(ソン)、坎(カン)、離(リ)、艮(ゴン)、兌(ダ)」
 術者の身体に方術がみなぎり、神獣である玄武、白虎、青龍、朱雀(スザク)、麒麟(キリン)が召喚された。
「並み居るリザードマンを前に、葛城探検隊の面子も臨戦態勢に入ります。コルセア隊員、自分も甚だしく燃え上がっております」
「葛城隊長、わたしも狙撃手としての腕を振るわせてください。展開中の部隊は、近接戦闘に傾倒していますし、正直なところだいぶピンチです。負けちゃいますよ」
「うむ、出撃を要請する」
「は。コルセア・レキシントン、状況を開始します。PCM−NV01パワードエクソスケルトン、起動。セーフティを固定。残弾を確認、カートリッジ装填」
「いってらっしゃーい、コルセア隊員。――さて、ナレーターからの助っ人を含めた葛城探検隊の戦力は4人となりましたが、果たしてこの後どうなるのか。固唾をのんで見守っていきましょうっ!」
「東さん、大洞さん、ワタシも狙撃手として参加しますので、どうぞよろしく」
「じっ、自分の方こそ、よろしくお願いしますっ! コルセア隊員」
「ほほうっ、そなたもかなりのやり手じゃな。こんな事なら、おろしたての農具を一揃え担いでくるんじゃった……って、違うかっ」
「超じーちゃん、裏からの援護を頼みます」
「存分にやってこいっ。じゃが、あまり暴れすぎんようにな。敵の出方からして、なにか壊れては困る重要なものを守るために、あえて半機晶兵器リザードマンのような火力の低いものに抑えているきらいがありそうじゃ」
「なるほど。朱鷺も心得て戦いましょう」
「無数の半機晶兵器リザードマンを前にしても、葛城探検隊は進むしか道がないのですっ。大洞 剛太郎隊員に飛びかからんとする半機晶兵器リザードマンを狙った小銃の偏差射撃が、死闘の口火を切りました」
「さあ神獣の子らよ、行きなさいっ」
 剛太郎とコルセアによる遠距離射撃のサポートを受けながら、朱鷺の放つ神獣と八卦術により、半機晶兵器リザードマンはことごとく掃討されていった。
 しかし、剛太郎やコルセアの射撃をくぐり抜けた半機晶兵器リザードマンも続々と現れ始めた。背面の推進装置の機動性はやはりかなり優位である。
「――超じいちゃん、頼むーっ!」
 小銃に素早く装弾しながら、剛太郎は後方の藤右衛門を振り返えると、半機晶兵器と生身の境を綺麗に割かれたリザードマンが真っ二つに開いていくところだった。
 超じいちゃんこと藤右衛門の振るう、稲荷の鉄刀の錆となり果てていたのである。

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「しかしここで、思いもよらぬ増援に恵まれました。それは、禍々しい闇の混沌です。葛城探検隊とかの存在による、半機晶兵器リザードマンの挟み撃ちとなりました。実に手に汗を握る展開ですっ」
 暗闇より出でたヌギル・コーラスに気づいたのは、葛城 吹雪だけだった。
「葛城隊長、妄言はいけません」
「妄言などではない、自重せよコルセア隊員」
「隊長、士気に関わります」
「通信を終る」
 数百体の半機晶兵器を屠ったヌギル・コーラスは、新たな災厄に惹かれて姿を消した。