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粛正の魔女と封じられた遺跡

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粛正の魔女と封じられた遺跡

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プロローグ

「さてと……手配も済みましたし、私はそろそろ行きましょうかね」
 ウエルカムホームの一室。粛正の魔女に備えて話し合っていた前村長はその相手熾月 瑛菜(しづき・えいな)にそう言う。
「行くって……どこにだよ?」
「ミナホを関わらせないのと一緒ですよ。動けない人も信用出来ない人も責任者としていれば動きが乱れます」
 瑛菜同様自分に信をおけない契約者は少なくないと前村長は言う。
「ま、信用出来ないって言ったのはあたしだし、あからさまに隠し事してるあんたを信用出来ないってやつが多いのは確かだけどさ。ミナホもダメ。あんたもいなくなる。誰が責任者になるんだよ?」
 村長であるミナホ・リリィ(みなほ・りりぃ)。その父親である前村長。その二人以外で誰がこの村の責任者になるのかと。
「それは瑛菜さんに決まっているでしょう」
 あなたなら文句を出す人はいないだろうと前村長。
「……ま、いいけどさ。けど、あたしは遺跡の方だしユニコーンの方はどうすんだよ? アテナもあたしについてくるみたいだし」
 自分のパートナーであるアテナ・リネア(あてな・りねあ)も遺跡担当でユニコーンの方の責任者はどうするのかと瑛菜は聞く。
「あちらはラセンさんを守ろうと言う人が多く集まっています。特に責任者などいらないと思いますが、ラセンさんを名目上の責任者にすればいいんじゃないですか。ただ遺跡にしろユニコーンの護衛にしろ契約者各自の判断に任せる場面が多いでしょうから」
 その前提でこの事件全体の責任者を瑛菜に任せると前村長は言う。
「ああ、後聞いておきたいことがあったんだ。その粛正の魔女だけどさ、明日襲撃するって言葉信じられるの? 今日襲ってきたりとかしない?」
「そこは大丈夫でしょう。あれは自分で『粛正』を名乗っています」
「……つまり、自分は正しいと?」
「ええ。だから暗殺や奇襲を宣言なしには行わない。明日襲ってくるといえばその前の日や後日に襲ってくることはないでしょう」
「……安心したような、腹立たしいような」
「質問はそれくらいですか? では、後のことはお願いします」
 そう言って前村長部屋を出ようとする。
「なぁ、前村長。あたしは確かにあんたを信用してない。でも、別に嫌いではないよ。だって、あんたはあたしら契約者に一度しか嘘をついてないから」
 立ち去ろうとするその背中に瑛菜はそう投げかける。
「……気づいていたんですか」
「いや、ただの勘とカマかけ。あんたとミナホの両方同時に話す機会が多いから少し違和感を感じるくらいだったんだけどね」
 その反応で確信したと瑛菜。
「嘘を合図をしながらするあんたのことあたしは嫌いにはなれない」
 でも、と。
「だからこそ好きにもなれない。なんであんたは娘に嘘をつき続けてるんだ」
「……別に常に嘘をついてる訳じゃありませんが、ある時から私はあの子に本当の自分で接することができなくなったんです」
「……その理由は聞いても?」
「実は……あの子が私のおやつを食べてしまったんじゃよ。その時からじゃな」
「…………嘘二回目。やっぱあんた嫌いだわ」
 呆れ顔で瑛菜はそう苦笑した。