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雨姫様の恋雫

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雨姫様の恋雫
雨姫様の恋雫 雨姫様の恋雫

リアクション


色香を纏う魅惑の人々

 小雨が降る中、傘をさして森の中を進んで行く冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)泉 美緒(いずみ・みお)

 樹の陰から現れたり、背後から現れる夢魔。
 そのどれもが皆、容姿端麗で胸の大きいスタイルの良い人であるが小夜子の好きな人はただ一人。

「美緒、こんな所まで呼び出してごめんさないね」
「なにをおっしゃいますの、素敵な話でしたわよ」
「それにしても、あくまで『好み』ですわ。そんな外見だけで誘われても……」

 全く興味ないといったように二人はアウトオブ眼中よろしく、立ち止まることなくどんどん奥へ歩いて行く。

「こちらの方であってると思うのですが」

 トレジャーセンスを駆使して双樹の樹を探していく小夜子。

「あ! これですわね」

 小夜子が見つけたのは細見ながら、複雑に絡み合う二本の樹であった。
 樹の下で見つめ合う二人。

 傘を降ろし、合わさる手の器に、樹から滴ってきた雫が丁度落ちてくる。

「ふふ、雨姫様もわたくしたちを祝福しているのかしら」
「えぇ、きっと。……美緒、愛してますわ」
「わたくしもよ」

 合わせていた手を解き、互いに優しく抱きしめる二人。
 それを見ているのは双樹の樹だけである。



◇          ◇          ◇




 元気いっぱいに森を歩いている及川 翠(おいかわ・みどり)

「お姉ちゃん、早く恋人さんが木さんになった不思議な樹を見つけようよ!」
「恋愛成就の話しなんですけどねぇ〜。でも、面白そうだからなんてぇ〜、確かに翠ちゃんらしいですねぇ〜」
「恋愛……お姉ちゃん、かぁ……」
「ミリアさん、どうしたんですかぁ〜?」
「ううん、なんでもない。気にしないでスノゥ」

 今にも駆けだしていきそうな翠を追うような形で歩いているのは、スノゥ・ホワイトノート(すのぅ・ほわいとのーと)ミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)の二人。

 三者三様の思いを胸に歩を進めて行く。


「キミ可愛いね。どう? 向こうに綺麗な川辺があるんだけど」
「あなたのその白い髪に映える花があるのですが、よろしければ見に行きませんか?」
「三人でいるよりも、俺と一緒にデートしない?」

 それぞれに声をかけてくる異性の姿で現れた夢魔。

「(言い寄られても全く嬉しくないわ)異性には興味が無いの。あっちに行ってよ」
「しつこい人は嫌いですぅ〜(なんですかぁ〜この変な人たちはぁ〜)」
「……私に一緒に行こうとか言うなんて、ロリコンの変態さんで間違いないの! そんな変態さん達は……飛んでけなの〜っ!」

 こちらもそれぞれ違う思いを抱きつつ、夢魔から離れようとする。

 翠は迫って来る夢魔に対しロリコンの称号を与え、龍騎士の槌をぶんぶん振り回して吹っ飛ばしていく。 
 あちこちから声をかけに現れていた夢魔たちは翠のレジェンドストライクが上乗せされた槌によって吹き飛ばされていく。

「ロリコンの変態さんは、どこかなぁ?」

 次々現れる夢魔に翠は双樹の樹探しを忘れてロリコン変態退治へ目的が変わり、スノゥたちとから遠ざかっていった。
 聴こえてくるのは翠が振り回す槌と飛ばされる夢魔の悲鳴だけである。

「あらあら、翠ちゃんはあの変な人たちの退治へ興味が移ったようですねぇ〜」
「……お姉ちゃん」
「ミリアちゃん、どうしましたぁ〜?」
「翠なら大丈夫。一緒に双樹の樹を探そう?」

 そう言ってスノゥの手を引いて双樹の樹を探し始める。
 探している最中でも、言い寄って来る夢魔がいたが、二人は誘惑に惑わされずに双樹の樹を見つけることができた。

「これがあの……」

 深呼吸をするミリア。

「確かに不思議な感じのする樹ですねぇ〜」

 見上げているスノゥの裾を引きこちらに視線を向けさせたミリアは、スノゥの手を握ってまっすぐスノゥを見る。

「……だいすき、お姉ちゃん」
「(え? ミリアちゃんが私を好き? ………そういえば私、ミリアちゃんと二人きりの時ちゃん付けで呼んでる。それって……)」

 今まで恋愛を意識した事がなったスノゥ。
 ミリアに告白され、突然ミリアを恋愛対象として意識する事になったが、無意識下で恋愛に該当する感情を持っていたことに気付く。

「私も、ミリアちゃんが好き」

 ぎゅっと握り返すスノゥ。
 ぱぁっと花が開くように笑うミリアに釣られてスノゥも微笑む。
 すると、樹の枝から雫が滴り落ちてきた。

 そっと優しくすくい取ると、雫はすぅ……と消えていった。