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架空大戦最終回 最後は勇気で!

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架空大戦最終回 最後は勇気で!

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05 デウス・エクス・マキナ02 

「ちっ……やっぱ強いな」
 直撃を受けた恭也はそう呟くと、最後の一撃を発動する。
 ビッグバンブラスト――それは禁忌兵器の設計図を基に造られた戦略・戦術ミサイルだ。それを発射するということは周辺の地形は壊滅し、国軍も星喰も消滅することになるに等しい。
 それでも、恭也はそれを発射する。
 そして――
「アルタグン、ダメージ40%オーバー。このままですと押し切られます、マスター」
 セイファー・コントラクト(こんとらくと・せいふぁー)がマスターの猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)にそう告げる。
 勇平は悩んでいた。ヒーローとは現実世界で簡単になれるわけじゃない。でもここにいれば少なくても勇者、ヒーローでいられるのだ。それを……で壊すべきなのか。
 それ故に、動きが鈍い。
 普段ならなんともないような雑魚の攻撃さえ被弾し、ダメージを受ける。
「くぅ……」
 そんな迷いのために苦戦する中、セイファーは勇平を信じてじっと待っていた。
「敵、禁断兵器を射出しました。このままですと周囲100kmが灰燼と化します……」
 そして、こと、ここにいたり、このままではビッグバンブラストで大変なことになる。それが勇平の覚悟を後押しした。
「ちっくしょおおおおおおおおおおおおおお!」
 その叫びが、流れが変わった瞬間だった。
「知るか! 知ったことか! そんなの関係ない!!! ヒーローだの何だの関係ない! 俺には、俺達には帰るべき場所があるんだ! 夢のなかでまでイジイジして、それで負けたら、それこそ格好つかないじゃないか!!!」
 それは、じっと耐えていたセイファーが報われた瞬間だった。
「ええ、そのとおりです、マスター。あのような敵などさっさと蹴散らして帰りましょう」
「わかった! やってやる! やってやるぜ!!!!」
 そして、セイファーはリミッターを解除する。
「アルタグン、リミッター解除。ジェネレーター、フルドライブ。マスター行けます!」
「よっしゃああああああ! フルバースト・シュート!!!」
 マクベスが、アナイアレイターが、アルタグンが全力を尽くして、すべての力を解放する。
 ジャバウォックの周囲のモンスターが消滅し、ジャバウォックにもダメージを与え、恭也が放ったビッグバンブラストも何とか食い止める。
 文字にすればそれだけのことだが、そう、それだけのことだが、消費したエネルギーは100%以上。余力など残っていない。マクベスとその中の洋たちはダメージもあってそのまま光に還元され、微粒子となってキラキラ光りながら消えていく。
 ローザは自らの分身の活躍を見届けると、そのまま目を閉じて、意識を手放す。
 勇平とセイファーも力尽きて、この世界から離れていった。
 勝利を確信した国軍だったが、ピンチはいつまでも続いた。
 天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)が、妖精たちが泉から悪しき勇者たちの力を切り離した瞬間を狙ってそれをかっさらい、その勇者たちの力と意志を国軍の兵器に宿らせる。
 さらには紫(し)の翼を持つ死を呼ぶ魔神サタナエルが現れる。
「勇者も国軍もヘルガイアも、やっている事は全て同じ…………が進みたい道を進むが為に、その先にいる別の目的を持った者達を排除しているに過ぎない……」
 そう、サタナエルの中から声が響く。それは怒れる中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)の声だ。
「弱者を守るため、仲間を守るため、世界を守るため、世界を手に入れるため……どんな理由をつけたとしても『その目的の為に他者を撃ち倒している』事実だけは変わることのない事実」
 綾瀬は漆黒の ドレス(しっこくの・どれす)を纏いながら、空中から世界の終わりにも等しい争いの光景を睥睨する。
「あまりにも身勝手ではありませんか? 我が侭だとは思わないのですか? 倒した相手の分まで、その意志を、罪を、全てを受け入れて血塗られた道を歩んでいく……と、そんなのは……の行いを正当化する為の言い訳に過ぎませんわ。」
 それに対して十六凪が嗤う。
「何を言っているのです? それは当然のことではないですか。生きるものとして、魂あるものとして。目に見えるものを守り、生きていくためにはしかたがないことですよ」
 しかし、綾瀬はそれに取り合わなかった。
「お話はここまでに致しましょう……自身の行いが正しいと思うのでしたら、私を撃ち倒して先へと進みなさい……『今までそうして来た様に!』」
 そして、魔王 ベリアル(まおう・べりある)が使い魔を召喚する。
《Real Illusion》そして数十匹の使い魔は、それらが全てサタナエルへと変貌する。
「さぁ、向かってきな正義の使者達よ! キミ達が討ち倒すべき相手は、紛れも無い『勇者』だ!!」
 ベリアルが啖呵を切る。
 これらは幻術でもなんでもなく、実際にサタナエルのコピーである。その戦力は推して知るべしであるのだが、十六凪がノット他国軍機もオリジンシステムで強化されている。そして、無人の国軍機が一斉に動き出し、十六凪のコンソールの操作で一糸乱れぬ統率された動きを見せながら数十機のサタナエルに襲いかかる。
「ふん……堕ちた勇者など……それはすでに勇者じゃないのではないかな?」
「戯言をおおおおおおおおおおおおお!」
 十六凪の挑発にサタナエルは怒声を返す。
 サタナエルと無人機が互いに潰し合う中で、グレート・エクスカリバーンとジャバウォックが熾烈な戦いを繰り広げている。ジャバウォック=リリーはそろそろなりふり構わなくなってきて、ジャバウォックを巨大化させたり外皮のモース硬度を12.5、すなわち仮想の金属であるオリハルコンと同等にしたりと無茶苦茶なことをしはじめた。
 そのため、最強の伝説の勇者と言えども苦戦を強いられており、その周辺で戦う小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)の搭乗するグラディウス紫月 唯斗(しづき・ゆいと)の操る夜叉も迂闊に近づけずに、戦いを見守るしかなかった。
「先生、どうしよう?」
 国軍の機体とサタナエルが潰し合いを始めたことによって、美羽は迷っていた。どっちも敵だが、国軍の機体が傷つくのは見過ごせない。
「連中が民間人や国軍に攻撃をかけてきたら守れ。それ以外は放置でいい」
 それに対して唯斗はそう答えて、人が乗る国軍機を守りながら戦いを続ける。
 その周辺で、ジヴァとミレリアが超能力でコントロールして獲物をどこまでも追っていくミサイルで周辺の敵を次々と落としている。
「鬱陶しいのよ! あんたたちはぁ!」
「同感! 面倒くさいのよぅ!」
 ジヴァの罵倒にミレリアはノリノリで同意しつつ、無制限に湧き出るミサイルを延々と発射し続ける。
「リリー! 聞きなさい! あたしの【ママ】からの伝言よ! 何がいやなの? 何をしたいの? つかれてない? 大丈夫? 話しならいくらでも聞いてあげるから、そろそろ起きなさい! 以上よ!!!」
 その言葉を聞いた途端、世界中に響くような鳴き声が響き渡った。
「ふわああああん! コリママスターってばパートナーをこき使いすぎなのよう! そりゃ肉体的には疲労しないけどさあ、精神が考えるのを放棄するくらいには疲れちゃうわけよ!」
 それを聞いたジヴァはドン引きした。割とドン引きした。
「……あ…そう……それは、ご苦労様だったわね」
 もちろんジヴァだけではない。ジャバウォックが突如リリーの姿になり、空中で正座。そして何処からともなくちゃぶ台を出現させてそれをドンドンと叩きながら愚痴りだしたために相対していたカリバーンやミレリア、美羽や唯斗も、何のことかはわからないままに、戦意が喪失するほどにひいてしまったのだった。
 ここで流れているBGMを想定してみよう。勇壮なオペラを、リコーダーで演奏しているものを想像すればわかりやすいだろうか? とにかく、非常に気が抜ける。そんな雰囲気が蔓延していた……