天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

【大罪転入生】物語の始まり

リアクション公開中!

【大罪転入生】物語の始まり

リアクション

「…………」
「…………」
 ぺロ子は焦っていた。目の前にはソラン・ジーバルス(そらん・じーばるす)の顔。「ちょっと抱かせて」とソランに言われ、ぺロ子は拒否したものの、ベル子があっさりとソランにぺロ子を渡し、現在に至る。
「本当にモモンガなんだね。ブリュンヒルデちゃんも大変だね」
「……そう思っているのならそろそろおろしていただけないかしら?」
「あ、はいはい。はい、どうぞ」
 ぺロ子をベル子へと渡す。
「……ふぅ」
「……ため息なんてついてどうしたにゃぁ?」
「……顔が近かったから」
 恥ずかしそうに言いながらぷいっと顔をそむけるぺロ子。
「ちゅーされると思ったのかにゃぁ?」
「ちゅ、ちゅー!? そ、そそそんなんじゃありませんわ! 顔が近かったら誰だってドキドキ……そう! 顔が近かったらからドキドキしてただけですわ!」
「……図星かにゃぁ」
「うぐっ……」
「あら、楽しそうなことしているわね」
 やってきたのは鳴神 裁(なるかみ・さい)とユニオンリングで合体したアリス・セカンドカラー(ありす・せかんどからー)。武具として身にまとっているのはドール・ゴールド(どーる・ごーるど)黒子アヴァターラ マーシャルアーツ(くろこあう゛ぁたーら・まーしゃるあーつ)の二人。
「アリスにも抱かせてもらえないかしら?」
「いや、私は――」
「はい。どうぞにゃー」
 何か言いかけたぺロ子を遮ってベル子がぺロ子を渡してしまう。
「ちょっと!?」
「ふふ、可愛いわね。もふりたくなるわね♪」
「あ、ちょ、そ、そこは……! あふぅ〜……♪ って、すでにやっているでは……! そこはらめぇー!」
 エセンシャルリーディング、イヴィルアイでぺロ子の弱点を的確にもふもふしていく。
「楽しそう……私にも!」
 そこに黙って見ていたソランまでもが加わって二人でぺロ子を徹底的にもふもふしていく。
「……ブリュンヒルデさんも大変そうだな」
 二人のもふもふタイムを静観しているのはハイコド・ジーバルス(はいこど・じーばるす)
「あっ……って、そう思っているのなら……助けても……いやぁ……!」
「でもまぁ、本人も気持ちよさそうにしているし?」
「確かにそうだにゃぁ」
 ハイコドには手を出したりする気一切ないらしい。
「でもまぁ、そんなことより……」
 ハイコドが周囲を見る。そこにはとてもイライラしていらっしゃる憤怒の化身配下の蛮族さん達が待機していた。
「まずは周囲の相手をどうにかすることが先なんじゃないだろうか?」
「俺達を放置して、その可愛い小動物の相手ばかりするとはいい度胸じゃねぇか……!」
「俺達はその小動物よりも人気が低いとでも言いたげだなぁ!?」
「俺にも触らせろ!!」
「……なんか一人違う事言っている気が……」
「でも待ってくれたんだにゃぁ?」
「お約束は守る! だが、やっぱり放置されるとイライラするぜ!」
「敵なのに律儀だね……」
「だが、もう良いだろう!? もう我慢の限界だぜぇー!!」
 丸太を手に蛮族達が突撃してきた。
「ハイコド、よろしく! 私はもう少しもふもふしてるから♪」
「ふふふ♪ こことか気持ちいいんじゃないかしら?」
「やぁ〜……もうだめ……なのぉ〜……!」
「……すみません。こちらもまだみたいです。少し時間を稼いでもらえませんか?」
「まったく……危機感がなさすぎるんじゃないかな……!」
 ソランとドールの言葉にため息をつきつつも、自身の触手を振り回し、迫ってきた蛮族達を吹き飛ばす。
「なんだと……!?」
「なら……おい、行くぞ!」
「おぅ!」
 体格の良い蛮族の持つ太い丸太の上に蛮族が乗る。
「こいつでぇ……!」
 その蛮族が丸太を思いっきり丸太を振り上げる。その勢いを利用して乗っていた蛮族が跳躍!
「どうだい!!」
 そして、ハイコドの真上から強襲をかける。
「へぇ。考えたようだけど……」
 触手を腕の形状に変化。その大きな腕で飛んできた蛮族を見事キャッチ。
「なっ!?」
「その程度じゃダメだったね」
 そのまま、蛮族達向けて放り投げる。
「ぐはっー!!」
 ボウリングのように綺麗に倒されていく蛮族。
「ストライク……だね」
「やってくれるじゃねぇか……だったら……」
「数で勝負だぁ!!」
 先ほどと同じ要領でぴょんぴょん飛んでくる蛮族達。
「さすがにこの数は対処できない……!」
 最初の方は対処していたハイコド。だが、途中から対処しきれなくなり、少しずつ蛮族が降ってくる。
「うらうらぁ!」
「くっ! そろそろ限界だよ……!」
「ぎゃあぁぁ!!」
 ハイコドがそう言った時、少し離れたところにいた蛮族が燃え始めた。
「なにが起きた!?」
「ぎゃあぁぁ!!」
 蛮族達が驚いている間にも次々と燃えていく。
「空だ! 空に敵がいるぞ!」
「……空?」
 蛮族達の言葉にハイコドが空を見上げる。飛んでいたのは三つ首の龍。そこから炎が発生し、降り注いでいた。
「あれは……味方? とりあえず、こちらには撃ってくる気配なさそうだから良いけれど……」
「おい! 今度は向こうから何か来るぞ!」
 そして、地上の方では、遠くから何やら土煙を上げながら高速でこちらに向かってくる物体が一つ。
「なんだおま――ぐはっ!」
 地上の物体は蛮族を蹴散らしながらハイコド達の方へ迫ってきている。三つ首の龍も心なしかこちらに迫ってきている。
「ちょ、ちょっと!? もふもふしているみんな! なんか色々迫ってきてるよ!?」
「もう、何よ一体何が――」
「ぺロ子ぺロ子ぺロ子ぺロ子ぺロ子……!!」
 土煙を上げて突撃してきたのは風森 望(かぜもり・のぞみ)。あっという間にみんなの前を通りすぎて去って行った。
「……今の何?」
「ちょっと待って。ぺロ子ちゃんは?」
「え? ここに……」
 ソランが手元を見る。だが、そこにぺロ子の姿はなかった。
「あぁ、それならさっき目の前を通り過ぎた人がさらっていったにゃぁ」
「いつの間に……」
 その時、ちょうど三つ首の龍の方から誰か降りてきた。
「ブリュンヒルデ・アイブリンガー! あなたを助けにしました!」
 降りてきたのは牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)ナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)ラズン・カプリッチオ(らずん・かぷりっちお)とユニオンリングで合体したシーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)の三人。
「ブリュンヒルデさんならいないよ?」
「なんですって?」
「先ほど、神風のようにやってきた人にさらわれた!」
「……そうなんですか。では、急いで追いましょう」
「任務了解。援護を開始する」
「アリス達も追いかけないとね」
「行くよ、ハイコド!」
「分かっているよ」
 シーマを先頭にぺロ子をさらっていった望を追いかけることに。
「いかせるかよ!」
「俺達の事を忘れて貰っては困るぜ!」
 もちろん、蛮族達が黙って見ているわけもなく、全員を包囲する。
「……邪魔ですわよ」
 ナコトが天の炎を詠唱。空から巨大な火柱が降り注ぎ、蛮族達を焼き尽くす。
「魔力回路解放。星脈正常、動作確認。ゾディアックフロー起動。自動迎撃モードに移行」
 シーマがゾディアックフローを発動し、ゾディアックローブを脱ぎ捨てる。するとローブが自在に動き始め、敵に向けて槍を投擲。自動戦闘を開始する。
「食らえ!」
「させない!」
 攻撃をかいくぐってきた蛮族に対して、ハイコドが触手で応戦。
「上からならどうだ!」
 飛んできた蛮族。
「敵視認。防御態勢」
 シーマがつかさず、シールドマスタリーによる鋼龍翼壁で防御。弾き飛ばす。
「同時に行くぞ! そおぃ!」
「ふんっ!」
 今度は複数人で丸太を投擲してきた蛮族。
「防壁展開開始」
 今度はアブソリュート・ゼロによる氷の壁を展開。丸太は氷の壁に突き刺さるも貫くことは出来ない。
「ソラン……やるよ?」
「了解! 任せて!」
 ハイコドの合図でソランとハイコドの二人が、お互いの尻尾を絡ませてくるくる踊ったり、手を握り合ってキスをし始める。
「こんなところでいったい何を……」
「……む! これは……!」
 急に声を上げたのは、黒子アヴァターラ。
「急にどうしたの?」
「あの動きは……お互いの愛を確かめあう行動です!」
「あ、うん。それは分かってるけど……なんで今なの?」
「七つの大罪の中に色欲というものが存在します。その色欲は自分や他人の愛情を力や魔力に変える力があります。そして、今ここであの行動をするという事はその色欲の力を使おうというわけなのです!」
 博識による知識を披露した黒子アヴァターラ。
「なるほど。それでどうなるの?」
 アリスが言っている時、ハイコド達の周囲を輝くオーラが漂い始める。
「集めた愛情は大きな魔力となり……」
「……行くよ?」
「盛大に……ね!」
 二人が発動したのはシャイニングラブ。術が解放されると漂っていたオーラが消失すると同時に集めた魔力が周囲へ爆散する。
「その力は敵をも倒す! 愛とは偉大ですね!」
 黒子アヴァターラが力説すると同時に、爆散した魔力が蛮族達を吹き飛ばしていく。
「な、なんだこの力……ぎゃあぁぁぁ!!」
「お、覚えてろよぉーーー!」
 愛の力にかなわずほとんどの蛮族が吹っ飛んだ。
「……敵の殲滅を確認」
「あ〜……目がまわる〜」
「すみません、回復魔法使える人いませんかー?」
 シャイニングラブを放った二人は力を使い果たしたのか、その場に倒れていた。
「集めた愛の量に応じて、術者にかかる負担も大きいみたいですね……」
「そうなの……でも、おかげで追いかけられそうね。行くわよ」
「え……助けないんですか?」
「後よ。まずはぺロ子ちゃんを助けないと!」
「こちらも行きますわよ」
「……対象の支援を開始」
「あ、ありがと」
「仕方ないにゃぁ……」
 全員が急いでぺロ子を追いかける中、ソーマとベル子がハイコドとソランを連れてみんなの後を追った。

「ふふふ……成功ですね」
「ちょ、ちょっと……いったい何をする気なのですわ……?」
 バーストダッシュで神風の如くぺロ子をさらい、そのままある程度まで移動した望。
「何をするか……そんなのぺロ子たんの唇を頂きに来たに決まっていますわ!!」
「えっ、ちょ、ちょっとま――」
「待ちませんわぁ♪」
 しっかりとぺロ子の顔を固定し、熱いベーゼをプレゼントする望。すると、どうでしょう。モモンガの姿だったぺロ子が本来の姿――ブリュンヒルデ・アイブリンガーへと戻ったではありませんか!
「むーっ!?」
 戻ったのにも関わらず、未だ唇を離してくれない望の肩をタップするブリュンヒルデ。
「ぷはぁ! ごちそうさま……でし、た……?」
 満足そうに唇を離した望だが、元に戻ったブリュンヒルデを見て固まった。
「うぅ……こんな形でファーストキスを取られるなんて……」
 がっくりと項垂れるブリュンヒルデ。
「やっと追いついた……って、あら?」
「ぺロ子ちゃんが元に戻ってるにゃぁ」
 事が終わった後に到着したベル子達面々。
「初めては取られてしまいましたか……」
「う……裏切りましたねっ!」
 そして、急に声を荒げる望。
「んー? どうしたにゃぁ?」
「私の心を裏切りましたわねっ! ゴスロリ衣装の似合う少女と聞いていたから、きっとロリィでペタターンな幼女だと信じていたのにっ! あなたは私を怒らせた! 覚えておきなさい!」
 そう捨て台詞を残して望はバーストダッシュでどこかへ去って行った。
「……なんだったにゃぁ?」
「さぁ……? それよりも……」
 ハイコドがブリュンヒルデの方を見ると、他の面々がブリュンヒルデへと群がっていた。
「うぅ……私のファーストキス」
「あらあら、可哀そうに……私が忘れさせてあげます♪」
「……え?」
 アルコリアの言葉に顔を上げたブリュンヒルデにアルコリアがキスをする。
「!?!?」
 ブリュンヒルデはあまりに突然の事に反応できず固まっている。少しして唇を離したアルコリア。
「ふぁ……な、なにこれぇ……」
 一方のブリュンヒルデは惚けた表情で座り込んでいる。
「きゅふふふ。満足頂けたかしら?」
 キスした後の幸せの歌を受けて恍惚状態になっているらしい。
「ちょっと何してるの!? ぺロ子ちゃんが可哀そうでしょ!」
 つかさずアリスがブリュンヒルデを抱き抱えるようにして、アルコリアから距離を取る。
「うぅ……」
「大丈夫、アリスが護るから♪」
「あ、アリス……」
 感動したようにブリュンヒルデがアリスを見る。だが、とうの本人であるアリスは悪巧みしているような笑みを浮かべた。
「うん。アリスが護るから……ね♪」
「……っ!?」
 急にアリスが掌でブリュンヒルデの口を塞いだ。その掌には、武装細胞と防護細胞で顕現した唇があった。
「ふふふっ♪ 忘れられないキスをしてあ・げ・る♪」
「あなたも私と同じ考え、ということね。せっかくだし、二人で何も考えられないぐらいに壊しちゃうのも楽しそうね」
「それは面白そう♪」
「ぷはっ! もう、やめてぇー!!」
「……百合百合しいにゃぁ」
「た、助け……!」
 ポンッ! と音を立てて再度モモンガに戻ったブリュンヒルデ。
「キスされて時間が経ったから元のぺロ子に戻ったにゃぁ」
「こちらが元ではありませんわ!」
「そういえばさ。別に回数が決まっているわけじゃないんだったらモモンガになるたびキスすれば人間のままでいられるんじゃ……?」
 それを見て思った事を呟いたハイコド。だが、言う場所とタイミングが悪かった。
「確かにそうだにゃぁ。元の姿で居られる時間が短いだけで他に制約はないにゃ」
「……なるほど。そうね。それは良い考えね」
「人間の姿で居たいのでしょう? なら、私達に身も心も委ねて……ね?」
「ひっ……!」
 迫りくる二人に怯えるぺロ子。だが、ガッチリと捕まえられているので逃げられず。
「さぁ、楽しみましょ♪」
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 そのあと、延々と二人にイジリ倒された挙句、何度もキスをされたブリュンヒルデ。解放されたのはかなり後の事だった。