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第四章 捕縛、入学へ


 数巡の戦闘を経て、美羽達はドッジのタイミングを掴み始めていた。シャーレットの読み通り、スキル頼りの戦闘行為。
 組立てた戦闘が出来ていないのは、美羽の幾度の攻撃で分かっていた。

 「行けるわよね?」
 美羽はシャーレット、セレアナ、香菜にタイミングを伺う。
「一瞬あれば、十分!」
「ええ、こちらも問題ないわ」
「先輩方、援護します」

 「ココで決めるわよ」
 シャーレットは『ゴッドスピード』で行動速度を再強化。その上で『メンタルアサルト』を発動させる。
「援護宜しく」
 シャーレットがドッジに向かい走り出した。
「こいつ、さっきと動きが……」
 メンタルアサルトの効果で『行動予測』を削いでいるのだ。不意に雷撃が撃ち出される。
「くっ!」
 『アブソリュート・ゼロ』で雷撃を弾く。
「貰った!」
 『タイムコントロール』をシャーレットが発動させる。
「そんなもの俺に効くか!」
 ドッジの『T・アクティベーション』がシャーレットの老化現象を防いでいた。
「なら、これはどうかしら?」
 セレアナの『ソーラーフレア』がレーザーを吐き出す。
「ちィ!」
 ドッジが再び『アブソリュート・ゼロ』を展開させる。レーザーを氷壁が吸収。
「ふふ」
 『機晶爆弾』を投擲するセレアナ。
「おりゃああ」
 シャーレットが『サンダーショットガン』の連射する。
 「読めていたかしら?」
 ドッジの真上から『機晶爆弾』が落下してくる。
「舐めるな!」
 『機晶爆弾』が炸裂。だが、それをドッジは再度防ぐ。
「喰らえぇ!」
 刹那、美羽が『バーストダッシュ』で飛び込んできた。
「たああああぁ!」
 『機晶スタンガン』を持った手を美羽は突きだした。
「ぁああああ!」
 スタンガンから零れる電光がバジンと鳴り、ドッジの身体が崩れ落ちた。


 「喰らいやがれ!」
 キロスの剣をアスタは事も無げに避ける。『行動予測』によって、キロスの動きが見切られているのだ。
「何人現れても同じだよ!」
 アスタは言い切っていた。
「誰も僕達の邪魔を出来ない」
「それはどうかにゃ」
 ルカは隣のキロスに声を掛ける。
 「行くわよ、キロス」
「分かってる」
 ルカの『超加速』により、思考と肉体が加速される。
「GO!」
 ルカとキロスが左右に飛び出す。
 アスタは左腕を前に突き出した。
「『グラビティコントロール』」
 空間が僅かに歪み、強制的な加重力が発生。ルカを潰しに掛かる。
「『グラビティコントロール』!」
 自身へとスキルを発動させ、重力同士が干渉し相殺する。
「馬鹿な……」 
「おらぁああ!」
 その隙にキロスが斬撃を繰り出す。
「くっ!『アブソリュート・ゼロ』!」
 氷壁が斬撃の間に割り込み、肉体を護る。剣と硬質な氷がぶつかり合い、火花が散る。
「ちぃ!」
 一撃を加えてキロスはアスタから直ぐに距離を取った。
「邪魔を……」
 アスタの輝く瞳はキロスへと向けられる。炎が揺らめきキロスへ向かう。
「『火術』」
 ルカが腕を振り払う。召喚された火炎がキロスの全面に立ち塞がり、アスタの炎を防いだ。
「そんな……」
 アスタは自身の能力との干渉に目を剥いた。
「火を操る魔法よ。発火だけが火の使い方じゃないわ」
 アスタが身構える。
「『ホワイトアウト』」
 一帯に猛吹雪が吹き荒れた。
「『天候操作』」
 アスタの願いが『ホワイトアウト』を軽減させる。
「へえ、そんな事もできたんだ」
「僕を馬鹿にするな!」
 アスタは激高する。
「別にそんなつもりはないんだけどなぁ」
 ルカの姿が掻き消え、次にはアスタの背後にいた。『ポイントシフト』を使用しているのだ。
「君に追いきれるかな?」
「くぅ!」
 輝く瞳でルカを睨み付ける。火炎が現れた時には、ルカは別の場所に立っていた。
「キロス行って!花火、アレを使うよ!」
 ルカの合図でキロスはアスタに向かって駆け出した。
「だらぁあ!」
 剣を振り抜く。
「ふん」
 氷壁があっさりとキロスの攻撃を防ぐ。
 ドンッと爆風に乗り、花火も走り出す。途中、花火が『超加速』の効果で急加速した。
「あたしにも効果があるんだよ!」
 『ヘルスパーク』でバリッと花火の身体から電光が散る。
 一気にアスタへと接近する。
「キロス、お前も道連れだあああ!」
「何!?」
(拝啓――天国のお母さん。私は今日も、全力で爆破します……)
 事前に『トラッパー』で地面下に仕掛けられた『シリンダーボム』群に引火させる。
 本日、最も激しい爆発が起きた。空気が激しく震え、周辺のビル群まで被害が及んだという。
「「ぎゃああああああ!」」

 激しい爆発の後、アスタはその場所に立っていた。『アブソリュート・ゼロ』を使い、傷を受けてはいなかった。
「はあ……はあ……」
 しかし、戦闘のスキルの多様による疲労で、空間認識もおぼつか無いようだった。そのせいか、視界はフラフラと辺りを見回していた。

 「今日は……ここまでだよ」
 『ポイントシフト』で背後に立ったルカの手刀が、アスタの首に打ち込まれた。

 ――場所は蒼空学園会議室。
 「へへーん、どうキロス?」
 美羽が香菜と一緒に勝ち誇った顔をしていました。
「くっ」
 苦々しい顔をして、キロスは下を向いた。そして恨みがましそうな顔で花火をチラッと見た。
「ん、何だキロス?」
 花火本人もキロスと同じ状態だったのだが、本人は堪えていないようだった。
「……何でもねえよ」
「キロスは大活躍だったからねー」
 ルカはキロスの惨状を思い出し、苦笑した。

 「皆さん、お疲れ様でした」
 海が柚と会議室へとやって来た。
「皆さんのお陰で、放火犯だった二人を捕まえる事ができました」
 フゥと会議室全体に安堵の空気が流れた。

 「ゆかりさん達もお疲れ様でした」
「良いのよ、これも軍の仕事のうちだから」
 ゆかり達は会議室の端で壁に身体を預けて立っていた。
「シャーレットさん達は?」
「デートの予定があるからお先に失礼するって言っていたわ」
「わかりました」


 「ねぇ、海。あの二人って、蒼空学園で更正させる事って可能なの?」
 ルカが海に尋ねた。
「はい、一定期間を経て蒼空学園に強制入学となります。学園でコントラクターとしての知識を習得してもらうことになります」
 海はルカの提案に頷いた。
「まあ、あの二人は暴れん坊してた頃のキロスに比べたら、可愛いもんだったわからね」
「うるせぇよ」
「もう、クラスは決まっているの?なんだったら時間がある時に、僕が教えるよ?」
 三月が手を上げた。
「いえ、クラスの方は馬場さんが改めて決めるそうです」
「そっか、一緒のクラスになれるといいな」
「それと二人は街の損壊の弁済がありますので、何か良いバイトがあったら紹介してあげて下さい」


担当マスターより

▼担当マスター

村野憂規

▼マスターコメント

 皆さん、こんにちは。
 村野 憂規です。ノーマルシナリオ『火炎の能力者』に参加して頂き、ありがとうございました。
 
 公開が遅くなり、大変ご迷惑をおかけ致しました。
 申し訳ありませんでした。

 予想以上のアクションが掛けられており、楽しく書かせて頂きました。
 リアクションにあまり反映出来なかった部分があり、申し訳なく思います。

 皆様、お疲れ様でした。
 御参加頂き、ありがとうございました。

▼マスター個別コメント