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今日はハロウィン2023

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今日はハロウィン2023
今日はハロウィン2023 今日はハロウィン2023

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「大変お待たせして申し訳ありません」
 シロウはブラウニー達の前に現れるなりぺこりと頭を下げた。
「やっと来たか。待ちわびたぞ」
 と、ザッハ。
「そちらは? 確か残りの案内は雌の猫又と二口女と聞いたが」
 ドゥルスは歌菜達を見るなり首を傾げた。予め案内の顔ぶれは聞いていたのだ。
「少々、事情があり来られなくなりまして急遽このお二人に代わって貰いました。本当に申し訳ありません」
 シロウはまた頭を下げて不在の者達に代わり謝罪した。
 それに続いて
「初めまして、今日はシロウさん達のお手伝いで、パラミタをご案内させて頂きます」
「代わりを精一杯務めるつもりでいるので何か希望があれば言ってくれ」
 ハロウィンサブレでハロウィンな魔女になった遠野 歌菜(とおの・かな)とハロウィンなスーツ姿になった月崎 羽純(つきざき・はすみ)が挨拶をした。事情は全てシロウに確認済み。ちなみに引き受けたのは、歌菜が夢を配る部分が魔法少女と似てるサンタクロースの仕事に興味があったためだ。
「まぁ、楽しそうになりそうでいいかのう」
「私らはここに不案内故色々頼む」
 ザッハとドゥルスは気を変えて挨拶を返した。
「はい、お任せ下さい。まずはTrick or Treat! ってことで、このカボチャクッキーをどうぞ。ハロウィンですし」
 歌菜はさりげなくお近づきの印にと【虹色スイーツ≧∀≦】で作ったクッキーと用意しておいた紅茶を紙コップに入れて渡した。ブラウニーはそれぞれ楽しんだ。
 それから
「希望があれば何でも聞くなら、噂のごみ屋敷を案内してくれよ。俺はまだ住み家を探さないといけないからさ」
 ブリッツが住み家としてオルナの自宅を希望した。
「希望と言ってもドゥルスが言ったように儂らパラミタは初めてなので何があるのか分からぬ故全ておぬしらに任せたいのじゃが」
 ザッハは全てをおもてなし組に任せた。
 結局、ハロウィンを楽しみながら歩き、古城の主であるオルナに出くわさないように気を付けながらササカの店に向かった。歌菜が買い物があると言って。

 雑貨屋『ククト』。

「えぇ、掃除好きの妖精があの子の家に興味を持ってる!? 本当に? あんな汚い家に!?」
 羽純から事情を聞いた途端、ササカは目が点になるほど驚いた。
「……それで古城に案内したいんだが」
 羽純はササカの驚きように苦笑しつつ話を元に戻した。
「いいわよ。あの子には私から連絡しておくから。顔合わせは……さり気ない方がいいならしない方がいいわね」
 そう言うなり合い鍵を羽純に渡した。
「ただ、お礼の仕方だけは念入りにな。物忘れで忘れられそうな気はするが」
 合い鍵を受け取った羽純が気掛かりなのはオルナが激しい物忘れを持つためうっかりあからさまに礼をしかねない事。
「……多分、忘れるわね。またこっちが苦労しそうな気がするけど心配しないで」
 羽純の指摘にササカは新たな悩みに重い溜息をついた。

 この間、歌菜は買い物をしながらブラウニー達と話していた。
「クリスマスはやっぱりこの格好をするんですか?」
 歌菜はソリに乗ったサンタクロースの置物を手に新米サンタ達に訊ねた。
「それは人に最も近くにいたブラウニー・ニコラの姿を模した物じゃ」
 ザッハが答えた。
「それはどんな方なんですか?」
 興味津々の歌菜はさらに訊ねた。
「ニコラは妖精としては劣っていたが最も人の心の解る者だったそうだ。真っ赤な衣装は住み込んだ家からトナカイとソリは別の所から手に入れ、髪と髭が白くなるほど長くどんな時も一人で仕事を全うし人の中で常に暮らしていたという」
 ドゥルスは近くのサンタの置物を手に取りながら教えた。
「特徴的なのはあの笑い声だ」
 ブリッツが肩をすくめながら会話に加わった。
「あれですよね。ホゥホゥホゥと言う」
 歌菜はすぐにどんな笑い方なのか思い当たった。大抵の人が知っている事。
「その通りだ。私はあんな笑い方は品が無いと思う故せぬが」
「俺もあれはちょっとな」
 ドゥルスとブリッツには不評だが、
「儂は個性的で面白いとは思うがの、おぬしもそう思わぬか?」
 ザッハは違うらしく歌菜に同意を求める始末。
「……何というか印象的ですよね。クリスマスが来た実感が湧くみたいな」
 歌菜は笑いながら答えた。
 そんな時、
「歌菜」
 合い鍵を借りた羽純とシロウがやって来た。
「うん。勘定を済ませて来るね」
 歌菜は急いでカートに入れた商品の勘定を済ませた。
 そして、店を出て街をぶらつきながら古城に向かった。

 古城に向かう道々。
「やっぱり、お仕事というのはプレゼントを配る事ですよね」
 歌菜がブラウニーに質問したのは肝心の仕事について。
「そうじゃが、それだけではない」
 ザッハは真剣な表情で頭を左右に振った。
「では何か他にもあるのか?」
 羽純が訊ねた。
「奇跡だ。光を失った目に光を宿したり昏睡状態を覚ましたり失った記憶を呼び出したり何かのきっかけを与えたり人が望むのは必ずしも形あるものとは限らぬからな」
 そう答えるドゥルスの脳裏にはこれまで住み込んだ家の温かなクリスマスの光景が浮かんでいた。
「そうですね。私もどんな素敵な物を貰うより羽純くんと過ごせる時間の方が欲しいですから。ね?」
 歌菜はドゥルスに力強く同意するなり大好きな旦那様の方に満面の笑顔を咲かせた。
「そうだな」
 羽純もまた歌菜と同じ思い。
「それを25日に送るのだ。24日の夜は子供が望む玩具だがのう」
 仲睦まじい夫婦に和みながらザッハが仕事日程を明らかにした。
「その奇跡とやらはずっと続くのか?」
「儂らは新米だから与えたきっかけ以外は朝になれば効果は消えるじゃろう。熟練者になれば効果は伸びるかもしれぬが」
 羽純の鋭い問いかけにザッハが髭を弄りながら答えた。
「それでは二度も辛い思いをする者がいるかもしれないな」
 ザッハの言葉から羽純はクリスマスの翌日に溢れるのは喜びだけではないだろうと予想した。
「かもしれぬが、一人でも希望を持つ者もはいる。だからこそ我らの役目は消えず現代まで続いている」
 とドゥルス。人を知るブラウニーとして羽純の言い分は理解出来るが、やるべき事であると自分の存在に誇りを持っていた。
 その時、
「ねぇ、それって妖怪でも貰える」
「人間じゃないけど大丈夫」
「どうしても欲しいものがあるの」
 首切れ馬を連れた男女の幼い六人の子供達が会話に入って来た。
「ハッピーハロウィン。欲しい物って何かな?」
 歌菜がにこっと笑顔で挨拶をしながら子供達と視線を同じくしながら訊ねた。
「……消えたあの子に会いたいの」
 少女が今にも泣きそうな顔でぽつりと理由を話した。
 それをきっかけに他の子供達が次々と
「あたし達、七人童子。いつの間にか一人いなくなって」
「それからずっと六人」
「僕達、捜してるけどどこにもいないんだ」
 窮状を訴え始めた。
「つまり、消えた一人と再会するきっかけが欲しいんだな」
「うん」
 七人童子の意見を総括した羽純に七人童子は同時にうなずいた。
「心配は無用。来たる日に君らにきっかけを送ろう」
 ドゥルスは決めていたのかすぐに答えた。
「ありがとう。待ってるからね」
 七人童子は礼を言って嬉しそうに馬と一緒にどこかに行ってしまった。
「早くクリスマスになったらいいね。そしたらあの子達、仲間に会えるのに」
「そうだな」
 歌菜と羽純は童子達の後ろ姿を見送っていた。童子達が早く仲間に再会出来ればと思いながら。

 この後、ブリッツを古城に案内したところ、掃除し甲斐のある汚さに満足した上に我慢出来ずに一人留まり掃除を始めた。
 歌菜達はシロウと一緒に二人のブラウニーを案内しながらハロウィンで賑わう町並みを案内していった。