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ミナスの願い

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ミナスの願い

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ミナスの書

(……早く見つけないと)
 御神楽 陽太(みかぐら・ようた)のパートナー御神楽 舞花(みかぐら・まいか)は思う。
 探しているのは5000年前にミナスが書いたとされる書。虱潰しに探したが見つからない。遺跡を調査した契約者たちからも見つかったという報告はない。
(……もしかして、この村にはないんでしょうか?……それとも既に失われて……)
 そうだとすれば……
(いいえ。きっと見つかるはずです)
 後ろ向きになりそうな自分の心を諌めて舞花はリネンから聞いた情報や自分が集めた情報の整理を始める。
 本は失われているか、ミナスが書いた当時とは違う形になっている可能性が高いこと。
 前者の可能性を排除し後者の可能性だけを考えるなら、それはミナスが書いたものを元にした新たなる本である可能性が高い。
 新たなる本はおそらくミナスが書いた本と同系統の本である可能性が高い。
 そしてそのミナスの書はこの状況を打破する可能性を持っていることから『儀式』関係のことを記した本である可能性が高い。
(……可能性ばかりの話ですが)
 けれど、その可能性をすべて是とするならば、一つだけ舞花の中にミナスの書の心当たりがあった。
「他に手がかりはありませんし……今はその可能性にかけるしかありませんね」
 村を救い、ミナホを救うために舞花は藁を掴むような可能性にかける。

「……あたしが、ミナスの書ではないか……ですか?」
 自分と主のもとにやってきた舞花に、蒼天の書 マビノギオン(そうてんのしょ・まびのぎおん)は聞き返す。
「すごい! マビノギオンがミナスの書だったなんて」
 彼女の主である芦原 郁乃(あはら・いくの)は舞花の言葉に興奮した様子で言う。
「マビノギオンは魔道書、それも力ある書物として有名だしね。ミナスの書でも納得だよ」
 自信気に言う郁乃。
「いえですね主……どうして、そんなに自信満々なのか疑問なんですが……流石に私5000年も前から存在していませんよ?」
 自分が生まれた頃がいつなのかはマビノギオン自身よくわかっていないが、それでも5000年も前から存在していないのは分かる。
「えー……せっかく解決策が見つかるかと思ったのに」
 郁乃やマビノギオンも村を救う方法について独自に模索していた。
(ニルミナスの、そしてゴブリン達。みんなの笑顔を守らないといけないんだから)
 そのためにはニルミナスが滅びることもミナホが死ぬことも認めることは出来ない。前村長にしてもミナにしても一緒だ。死を持って終わらせようだなんて郁乃は認めない。……もしも彼女が死のうとしていた前村長に会っていたら、違った結末があったかもしれない。
「それなんですが、『まじないのレシピ』として有名なマビノギオンさんが、もしかしたらミナスが書いた『儀式の書』をもとに書かれたんじゃないかと……そう思ったんです」
「………………」
 舞花の言葉を受けてマビノギオンは考えこむ。
「どう? マビノギオン。その可能性はありそう?」
「あたし自身、自分のことについて覚えていることは少ないんです。ただあたしを作った人が『あなたの力の深部は本当に信頼の置ける相手にしか見せてはいけない』と言ったこと」
 その深部がミナスが書いた部分であるとしたら……。
「それに、あの遺跡都市……行ったことなど無いはずなのに、懐かしさと寂しさを感じました。それがミナスに書かれた書に残された感情だとするなら……」
 マビノギオンは一つ息を吐く。そして続けた。
「主。あたしの力のすべて……魔導書の深部を見てください」
 魔導書としての本体。その本の深部に掛けられた封印を解き、マビノギオンは郁乃へ渡す。それを受け取り、郁乃はめくり、調べていく。
「どうですか……? 当たりでしょうか?」
 舞花は郁乃に聞く。もしも違えばもう第三の方法は間に合わない。
「これは……当たりだよ。マビノギオンはミナスの書だよ」
 その中に書かれている『恵みの儀式』関係の記述。
「それを言うならミナスの書『でも』あるですよ。主」
 蒼天の書はミナスが書いた書をもとに作られた魔導書だった。
「それで……どうですか? 村を『破産』から救うにはどうすれば……?」
 舞花は待ちきれない様子で郁乃に聞く。
「……うん。それなんだけどね。…………分かんない」
「「…………はい?」」
「だって、恵みの儀式の破産を逃れる方法とかそういうの書かれてないし!」
 舞花はリネンから伝えられたユーグの言葉を思い出す。『現状しらみつぶしに探したが見つからない。もともとの手がかりが少ない上に、5000年前の本で本当に残っているかも微妙だ。……さっきも言ったとおり、見つかったとしてもあるいはってレベルの話でもある』
「と、とりあえず村長の元へ行きましょう! 第三の方法を待っている方たちが集まっているはずです」
 こうして大きな手がかりを得た舞花たちはミナホの元へと急ぐのだった。