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平行世界の人々と過ごす一日

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平行世界の人々と過ごす一日
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「忘れていましたが、一つだけ。今回のように安易に二人のお願いを聞いちゃ駄目ですよ? この世界のお二人は、とびきりにやんちゃな悪戯小僧なんですから!」
 リーブラは人差し指を立て、今回の事態を鑑みた注意をした。注意とは言え表情は柔らかいものだった。
「いくらお前を生んだ奴の平行世界の奴だからって甘くするなよ」
「すぐに調子に乗って惨事になって惨事が大惨事になるからね」
 シリウスはカラカラと笑いながらと北都は呆れながら双子が聞いたら怒るような事を口走った。
「随分なんだな」
 ロズは率直な感想を述べた。
「随分以上だけどね。ここにいる人達はほぼ関わっているからなぁ。でも今回、大勢の人達が平行世界の人々と笑顔の時間を過ごせて喜んでいる人も多い」
 陽一もまた双子を不機嫌にさせる事を言うも本日は少し優しい。
「俺達もその一人だ。今日はありがとう。あなたの行動次第で、もっと沢山の人達を笑顔にできる筈だ」
 平行世界陽一が平行世界代表として感想を言った。
「こちらこそ感謝する」
 ロズは丁寧に礼を述べた。
 そこに
「ふふん、報告したのですよ!」
 報告を終えたポチの助が報告。いつの間にか豆柴に戻っていた。
「それで返事はどうですか?」
「今回の件が片付いてから返事をするという事でしたよ」
 案配を訊ねるフレンディスにポチの助はすぐに報告。却下ではなく検討という希望ある返答であった。
「そうですか。報告お疲れ様でした」
 フレンディスは立派な仕事をしたポチの助の頭を撫でた。
「ふふん、当然なのですよ」
 役に立った事にポチの助は満足顔でフレンディスの褒め言葉に尻尾を振っていた。
「今回の件が片付いてからか」
「良い返事であればいいですわね」
 シリウスとリーブラ。
「まだ時間はたっぷりあるし、今後ここに留まる事を考えて見て回ったらどうかな」
 北都が時間潰しに最適な案を提供。
「……そうする」
 ロズはこくりとうなずいた。
「その前にいいかな」
 ジブリールが賑わう会話に加わり、ロズの所に近寄り
「腕輪を見せてくれないかな。そこに込められた記憶を見てあげるよ」
 銀腕輪を出すようにお願いする。
「記憶を……あぁ」
 ロズはそろりと二つの腕輪を渡した。
 そして、
「……」
 『サイコメトリ』で込められた記憶を読み取る。
「どうですか?」
 フレンディスは終わったの見計らい訊ねた。
「……この腕輪の持ち主は」
 ジブリールが語ったのは、双子の楽しく過ごす姿、片割れを亡くして形見の腕輪を握り締め廃人のようにぼんやりするヒスミの姿、いつまでも二人で楽しく過ごそうと笑い合う様子であった。
「とても互いを大切にしていたからこそ貴方を生み出したのですわね」
 リーブラがしみじみと言った。互いを失いかけた出来事を思い出し、ますます納得していた。
 ロズは巻いていたストールと帽子を外し
「もう一度感謝を述べさせてもらう。何もかもありがとう」
 素顔を明らかにした状態で頭を下げた。ここまで自分を気に掛けてくれた人達に対して顔を見せないのは失礼だとでも思ったように。
「……予想はしていたが、本当にそっくりだな」
「あの二人が成長した感じだな」
 ベルクと陽一。
「……三人並んだら兄弟だろうな」
「ですわね」
 シリウスとリーブラ。
 明らかになったその顔はあの双子が大人になったらなるだろう顔をしていた。ようはそっくりと言う事。
「姿を隠していたのはやっぱりあの二人に知られたくなかったからかい?」
 北都は改めて訊ねた。双子に内密にすると持ちかけた時の様子を思い出しつつ。
「色々とまずい事になると判断して……彼らに知られると面倒かと」
 ロズはこれまで見て来た双子の様子から知られない方がいいと判断したらしい。受け入れられないではなく、受け入れられて悪い方に利用されるのではと思ったから。
「そりゃそうだな」
 ベルクは呆れ気味に笑った。
「本当にありがとう」
 そう言うなりロズは再び元の姿になった。
 そして、会合は終了した。皆はロズのこの世界見学に付き合ったという。
 ちなみに陽一は平行世界の自分と別れる際、
「彼女と仲良くしろよ」
 と言って別れたそうだ。

 この後、悪戯双子兄弟と姉妹はエリザベートとアーデルハイトに蝶ばら撒き騒ぎによる説教を受けるも当然懲りる事はなかったという。
 平行世界の人々は約束の時にロズによって無事に元の世界に帰された。
 今回の騒ぎ収束後に回されたロズの処遇はというと許可が下り、ロズが納得するまでここに留まり双子の監視をする事となった。
 その際、ロズは双子に問うた。双子が自分の製作者であればどう生きて欲しいかと。
 その答えは
「そりゃ、楽しく生きて欲しいのに決まってるだろ(こいつ何変な事聞くんだ? でもこいつには妙な親しみが)」
「何、難しい事考えてるんだよ(このロズとか言う奴は悪い奴じゃなさそうだけど……)」
 というものであった。胸中ではロズに妙な親近感を感じていた。おそらく別世界のヒスミが製作した存在だからだろう。
「そうか」
 ロズは静かにうなずいた。何かを得たかのように。
 それよりも双子が気になるのは監視が付く事で
「そんな事よりもまた何か手伝ってくれよ」
「そうそう、今回みたいにさ。監視なんてやめてさ」
 ロズに軽口を叩いて監視をやめさせようと必死だった。
「……」
 ロズは黙ってその双子の仲の良さを静かに見守っていた。

 騒ぎが収まってすぐに魔法中毒者の遺跡は無事に取り壊された。

担当マスターより

▼担当マスター

夜月天音

▼マスターコメント

 正体不明の魔術師や平行世界に関わって頂いた方、今回初めて平行世界に関わって頂いた方、お疲れ様でした。そして大変ありがとうございました。
 平行世界の人と思い思いに過ごして頂いた皆様、ありがとうございました。
 双子に関わって頂いた方々、ありがとうございました。馴染みの悪戯だけでなく今回は平行世界の双子も登場となり本当にお疲れ様でした。
 ロズと関わって頂いた方々のおかげでロズの正体が明らかになるだけでなく彼のこれからも示して頂きありがとうございました。常識的ではありますが、相手が双子なだけにどうなる事やらですが。

 最後に少しでも楽しんで頂ければ幸いです。