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クールな天変地異?

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クールな天変地異?

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 第 4 章−調査開始!−

 シャンバラ教導団の金 鋭峰から大荒野に降った大雪の調査員募集をうけて、それに応じた酒杜 陽一(さかもり・よういち)は大雪を前にひとまず【パスファインダー】で共に調査のためこの地を訪れた調査員達の機動力を上げた。
「人為的と見られているが、むしろ水の少ない大荒野ではありがたい現象だと思うぜ。この季節なら避暑地や観光地としても使えるかもしれない」
 何故か既に踏み固められているらしい雪原に足を踏み入れ、、陽一は【ホークアイ】の視力で周囲に異常がないか捜索を始めた。
「原因究明とかまどろっこしいのは陽一に任せるぜ! とにかく、トラブルの中心をとっとと見極めてそこへ【イクシードフラッシュ】をぶちかませば一発で解決するさ! ……っくし!」
 シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)はくしゃみをしながら【空飛ぶ魔法↑↑】の効果を調査に来ている全員にかけて異常気象の観察に乗り出した。
「真夏に冬服着るハメになるとは思わなかったけど……って、サビク!? お前いつもの恰好で何で平気なんだよ! ずるい!」
 見れば、サビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)は特に防寒対策はしておらず見たままの『いつもの通り』だった。
「防冷モード……ええと、【アブソリュート・ゼロ】による氷結耐性を起動しただけだよ。だからずるくない、魔法防御のちょっとした応用なんだ。ほらほらシリウス早く中心見つけようよ」
 ぎゃーぎゃーと騒ぐシリウスとサビクを上空からの調査に見送った陽一は改めて雪原を見渡した。

 既に遊んでいる一団があったものの、然程気にならない人数であった事から、シリウスとサビクが大雪の原因になっている中心を探り当てるのもそう難しくは無い――と思われた。
「そうだ……セレンフィリティ、セレアナ、ってどうしたんだ、雨雲を頭の上に乗せて」
 教導団からの指示を受けた2人の手順を聞こうとした陽一が訊ねると、調査にやってきたセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)であったが、セレンフィリティの頭の上には雨雲ならぬ雪雲がどんよりと漂った雰囲気を醸し出していた。
「そりゃあ……暑いヒラニプラを避けて大雪降ったシャンバラ大荒野で雪遊びをしつつ涼もうと思ったら……」
 代わりにセレアナが答えると、気分はすっかりブルーとなっているセレンフィリティへチラリと視線を向けた。
「それはそうと、陽一は何か聞きたかったんじゃないの?」
「ああ、そうそう。調査するにしても、教導団では先に何か見解を出しているんじゃないかと思ってな」
 セレンフィリティが未だ頭の上に雪雲を乗せたまま、陽一の方を向くと座り込んでいた体勢から立ち上がり、防寒着に付いた雪を払いながら見解を伝えた。
「まあ、原因はあるでしょうね。人為的なものという可能性が高いとみられているから当然犯人がいる、目的はまだ推測だけど気象制御……気象操作だかの実験を行っていたんじゃない? で、その結果この大雪で予想以上に事が大きくなってしまったから、犯人も出るに出られない……と思われるわ」
「セレンの補足をすると、今回の犯人と思しき人物もそう遠くへは離れていないと思うわ。成功しようと失敗しようとその結果を検証することで対応策を取るでしょう、観察に適したところに拠点があると判断して捜索し、速やかに捕まえる……シリウス達がそれらしい場所を発見したら逃走する前に包囲して確保かしらね」
 陽一が2人の見解を聞きながら、怪しい人物若しくは危険な存在を見逃さないように更に視野を広めて【ホークアイ】の効果を最大限に活かせるようにした。
「でも、雪原で隠れるような場所もそうないだろうし……埋まった建物のどこかに潜んでいる可能性もあるかもしれないが」

「見つけたー! 怪しい建物と、ついでに怪しいヤツ!」
 
 陽一の声と被りながらシリウスが知らせてくるのだった。


 ◇   ◇   ◇


 『試作型パワードスーツ』を身に纏い、『ペルセポネ専用ビームブレード』を構え、アジトの上空から見下ろすシリウスとサビクを警戒しているペルセポネはアジトの周りに【マグネティックフィールド】を展開した。
「ハデス先生達が無事に撤退するまで、このアジトは私が守り抜きますっ! この『試作型パワードスーツ』を纏っていれば負けません!」
「……つまり、この大雪の原因を作ったのはハデスか……」
「なるほど……シリウス、【イクシードフラッシュ】というか【魔闘撃】で殴った方が早く捕まえられるんじゃ? 女の子殴るのは気が引けると思うし」
 しかし、当のハデスはアジトの周りに姿がない。その上、【マグネティックフィールド】で阻まれているせいか、サビクの【ディメンションサイト】もどうも効きが良くなかった。
「ボクも気が引けるけど、あの子に大人しくなってもらわないとハデスを殴るのは無理かも?」
 シリウスとサビクが上空からペルセポネと睨めっこしている間に、陽一の【パスファインダー】でシリウス達が発見したアジトの場所へ思いの外早く駆けつけたセレンフィリティとセレアナ、陽一はペルセポネをじりじりと包囲していく。
「さて、ペルセポネさん。いくら何でも多勢に無勢だと思うぜ、ここは大人しく引き下がってくれないかな」
 陽一が諭すように話しかける間にセレンフィリティは『希望の旋律』を構えて【爆炎波】を仕掛けようとした。
「まあ、諦めるのね。私もこれは一応準備してきた装備なのよ。出来れば雪は溶かしたくないの……まだ遊んでないんだから」
「……セレン」
 セレアナが思い切り呆れたところでペルセポネもハデスからの任務をそうそう放棄するわけにいかなかった。
「そ……そんな事言われても、私にはこのアジトを守る任務がありますっ! ハデス先生が実験で作り出してくれたこのパワードスーツが、あなた達の攻撃も防いでくれますっ!」
 『実験』という単語に陽一は片手で顎を擦り、考え込んでしまいながら1つの仮定に辿り着いた。
「もしかして、その『実験』とやらがこの大雪の原因か……?」

 持ち前の天然さが仇となったのか、ペルセポネはハデスが犯人である事と纏っている『試作型パワードスーツ』が原因である事を明かしてしまった。シリウスとサビクも飛行状態から雪原の上に立ち、ペルセポネを囲む。
「ハ……ハデス先生、私苛められてます……っ!」
「人聞きの悪い事言わないでくれよ、ハデスの居場所を聞いてるだけだって!」
 ペルセポネとシリウスの押し問答の中、近くで休んでいたエリザベートが再び暖を取るために【炎の聖霊】を呼び出した途端――
「……ん? 何だかパワードスーツが軽く……へ? や、装甲がっ!?」
 炎の熱がペルセポネの『試作型パワードスーツ』の装甲を溶かし、次第に薄くなった装甲が剥がれ落ちてペルセポネの素肌を露わにしていった。

「きゃあああああ! ハデス先生、またですっ! また私全裸にっ」

「ちょ、待て待て! なんか羽織るもの……あ! 陽一は後ろ向けーーー!」
 シリウスが言う前に陽一は既に背を向けていた。
(俺は見ていない……見ていないぜ理子さん!)
 陽一は頭の上で汗をかきながら、間一髪でペルセポネの全裸から目を逸らして心の中で愛しい婚約者へ必死に弁解する羽目となった。セレンフィリティが咄嗟に防寒着を貸そうとするが、セレアナがそれを止めて自分の黒いロングコートを手渡そうとした。
「遊ぶなら防寒着を着てなきゃダメじゃない、セレン」
 なんだかんだとセレンフィリティに甘いセレアナであったが、もうほぼ全裸となっているペルセポネ――と、“なにか良く分からないが”ひらりと一枚のタオルが舞い落ちた。
「よくわからないけど助かりました……すっごく!!」

 理不尽な奇跡と呼ぶべきかどうかは解らないが、とにかく全裸を防ぐことは出来た。
 ……その不可思議な出来事はシリウスのリトルウィッシュの効果だったが、それは誰にも知り得ないこと。
「さ……流石にこれじゃアジトの守りは無理だろ、諦めてハデスの居場所を……」
 シリウスがペルセポネに訊ねながら何とも言えない顔をしていた。『蒼空学園新制服』に見えるが、胸から下は5段フリルとなりスカートはバルーン型に膨らんでいる。ペルセポネが『試作型パワードスーツ』を身に纏う際に消えた制服が何故か形を変えて現れていた。今のペルセポネでは戦えず、アジトを放棄したハデス達が出来るだけ大荒野から離れるように時間を稼ぐだけであったが、そのアジトの影に隠れていたハデスの 発明品は、囲まれるペルセポネを確認すると秘密保持のためアジトごと自爆しようと【ハルマゲドン】を発動させようとしていた。