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昔を振り返り今日を過ごし未来を見よう

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リアクション

 現在、2024年。イルミンスールの街、朝。

「イルミンスールに来たでありますよ」
 コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)を引き連れた葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は満を持してイルミンスールの街に立っていた。
「そうね(イルミンスールと言えば……)」
 吹雪の隣でうなずくコルセアはイルミンスールからある事を一番に思い浮かべていた。
「では、早速行くでありますよ!」
 吹雪は早速ある所を目指して走りだそうとして
「何となく予想は出来るけど、一応場所を教えてくれないかしら?」
 コルセアは溜息を吐きつつ念のためにと目的地を訊ねた。場所を知るためではなく確認のために。
「もちろん、イルミンスール魔法学校でありますよ!」
 吹雪はコルセアに振り返りニヤリとしながら場所を明かした。
「……やっぱりね」
 コルセアは自分の考えが正しかった事を確認した。イルミンスール魔法学校が目的地とすれば考えるまでもない。やる事はただ一つ。
「双子を追跡して監視とお仕置きをするであります。それにはまず朝の挨拶からでありますよ!」
 吹雪は猛ダッシュで因縁深い双子と楽しく戯れるために向かった。
 その後ろ姿に
「……とんでもない朝の挨拶になりそうね……愛しき日常の始まりかしら」
 コルセアは呆れの溜息を吐いてから慌てず追いかけた。いつもの事なので慌てる必要はないのだ。
 二人は無事にイルミンスール魔法学校に到着し、双子の居所を突き止める事に成功した。

 イルミンスール魔法学校内、賑やかな実験室付近。

「では、朝の挨拶に行って来るでありますよ! もはやこれは義務であります!」
 歴戦の段ボールを手に持ち、双子がいる実験室に向かって嬉々と向かおうとするのを
「その挨拶、吹雪の事だから当然普通の挨拶とはならないんでしょ?」
 コルセアは吹雪の手にある段ボールに目を止めながら訊ねた。いつもの事なので愚問ではあるが念のためにと。
「ふふふ、見てのお楽しみでありますよ!」
 吹雪はニヤリとコルセアに笑いかけてから実験室の前に卓越の忍者足袋を利用して音を立てずに向かった。
「…………はぁ(吹雪がやり過ぎないように見ておいた方がいいわね。でもまぁ、相手はあの双子、吹雪のこれまでのお仕置きでもぴんぴんしていた事だし、過剰に心配する事はないわね)」
 コルセアは溜息を吐きながら吹雪が監視やお仕置きをやり過ぎないよう監視する事に。 しかし、コルセアは双子と交流したこれまでの事を振り返り彼らの丈夫さに特に心配し過ぎる事はないと思っていた。

 実験室の前。

「……(早速、待機でありますよ!)」
 吹雪は歴戦の段ボールを扉の前に置いてからそろりと音を出さないよう用心に用心をして中に入り、双子が出て来るのを待った。

 実験室から離れた場所。

「……(二人が出て来たら段ボールから出て驚かせるつもりね)」
 コルセアはすぐに吹雪のお仕置きを見抜きながらも止めはせずそっと見守り続ける。

 しばらくして
「とりあえず、どこかに行くか」
「そうだな」
 ロズに部屋の片付けを押しつけて双子はひとまず出掛ける事に決めたのか実験室の扉を開いた。
 途端
「何だこの段ボール?」
「オレ達は何も注文してねぇよな。だったらなんだこれ。間違って送ってきたのか? それともオレ達へのプレゼントか?」
 ヒスミ・ロズフェル(ひすみ・ろずふぇる)キスミ・ロズフェル(きすみ・ろずふぇる)は足元にある段ボールに気が付くも心当たりがなく小首を傾げた。
 その結果
「……とりあえず、確かめてみるか」
「あぁ、誰宛なのか分かるかもだしな」
 双子は段ボールの蓋がすぐに開く状態になっているため中身を確認する事にした。
「……」
 段ボールの蓋に手をかけ、特に手間取る事無く開けた瞬間
「グッドモーニング、気持ちの良い朝でありますな双子達よ」
 声高らかに吹雪登場。

 途端
「!!!!!!」
 いつもの恐怖の監視者の予想外の登場に双子は声が出ない程驚き、腰を抜かしてその場に尻餅をついてしまった。
「な、何でお前がここにいるんだよ!?」
「オレ達まだ何もしてないぞ!」
 双子はこれまでの経験から嫌な予感がしたのか慌てて立ち上がり猛ダッシュで逃げ始めた。
「まだという事は何かをやる予定でありますな!」
 吹雪は自分から逃げる双子をニヤリと余裕の笑みを浮かべて見ていた。
「……さあて、追跡開始でありますよ!」
 吹雪はこれまでの経験と『行動予測』で双子の行動を読み取り『兵は神速を尊ぶ』で双子の行き先に先回りして
「……(待機でありますよ! 早く来るでありますよ! 存分にもてなしてあげるであります!)」
 『歴戦の段ボール術』で段ボールに潜んで待機する。胸中では二人を違う意味で大歓迎する台詞を吐きながら。

「……さすがに二度目は引っ掛からないはずだけど」
 そう思いながらもコルセアは吹雪に駄目出しをする事はなかった。
 なぜなら
「……引っ掛からなくとも段ボールがあるだけであの二人には効果があるだろうし、吹雪の追跡力を身に染みて分かっているはず」
 これまでの双子とのお仕置き経験が存分に発揮すると知っているからだ。

 そうこうしている内に
「……よし、いなくなったな。キスミ、学校を出て行くぞ。ロズはどうする?」
「ロズには黙っておくぞ。知られたら余計に面倒だ。あいつがいないか警戒して……」
 双子が異常に左右を警戒しながら現れ
「キ、キスミ……あ、あれ」
「段ボールだ。ま、まさか……」
 双子は自分達の行き先にある段ボールを見た瞬間嫌な予感がよぎり、一歩後退した。
 その瞬間
「グッドモーニング!! また会ったでありますな!!」
 ばっと段ボールが勢いよく開き、再び吹雪が登場。
「!!!!」
 双子は顔を一瞬にして真っ青にし背を向け逃亡。逃げ足だけは相変わらず速い。
「相変わらず、逃げ足だけは速いでありますな」
 吹雪は自分に背を向けて逃げる双子を相変わらず余裕の笑みで見送っている。

「……会う度にいつもいつも懲りないわね。吹雪もあの二人も」
 コルセアは変わらずのんびりといつもの日常を過ごしていた。

 吹雪は
「……今度はもっと愉快にするでありますよ!」
 双子を先回りしながら細工を考えていた。その成果はすぐに披露となる。

 そして三度。
「……またあるぞ!」
「……三度目だ。オレ達の行動読まれてるのか!!」
 双子は自分達の前に置かれている見覚えのある段ボールに青い顔でわめき出す。開けていないのに中身を知っているかのように。
 双子がわめいている間に段ボールの蓋が自然と開き
「!!!!!」
 双子はまた来る恐怖に硬直するが、
「……あれ?」
「……いない?」
 ただ蓋が開いただけで何も出て来ず、拍子抜けする双子。
 数秒間、段ボールを見つめた後
「……あいつどこかに行ったのか?」
「……本当にいないのか?」
 何も出て来ない事から不審に思った双子は恐る恐る中身を確認しようと接近。
 そして段ボールの中身を覗き見るとそこには
「……いない。もう諦めてどこかに行ったのか?」
「かもしれねぇ。でもどうしてこれがあるんだ?」
 吹雪が入っていない事に安堵するも引きの良さに不審に思う。
 しかし
「まぁ、いいか」
「だな。ヒスミ、さっさと遊びに行くぞ!」
 切り替えのはやい双子は外に遊びに行こうと段ボールから視線を離した瞬間
「!!!!!!」
 自分達を目がけて二発の弾丸が飛んで来たのだ。
 弾丸の先には
「ふふふ、朝のプレゼントでありますよ!!」
 段ボール製の銃ダンボール・ガンを構えた吹雪がいた。弾丸は吹雪が撃った物である。
「!!!!!!」
 弾丸と吹雪の姿を認めた瞬間、置いてあった段ボールが陽動と知るが、すでに手遅れ。
 弾丸は見事に双子にヒット。ただし与えるのは物理的な効果ではなく
「あちちちち」
「びびびびび」
 炎熱属性と雷電属性の効果。双子の口からはダンボール・ガンの弾丸に当たった人が必ず発する事を叫んでいた。
 それを見るや
「……どうでありますか! もう一発!」
 吹雪はもう一発お見舞いしようと構えるが
「……吹雪」
 さすがにやり過ぎだろうとコルセアが現れ止めに入った。
「むむ、何でありますか? 止めるでありますか?」
 吹雪は銃を構えたまま、コルセアに少し不満そうに訊ねると
「……そうね。大概にしてあげたらどう?」
 コルセアは溜息を吐きながら言い
「というか、あなたこそ監視される対象だと思うわ……」
 吹雪を見て溜息を洩らした。双子に会う度に繰り広げられている光景にすっかり呆れている。
「むむ、自分でありますか?」
 想定外の指摘に吹雪は頓狂な声で聞き返す。
 そこへ
「そうだ、そうだ!」
「そっちの方があぶねぇだろ」
 復活した双子が調子に乗ってコルセアの尻馬に乗ってきた。
「……調子に乗らないの」
 コルセアが溜息混じりに双子に注意すると
「おお、こわっ、逃げるぞ、キスミ」
「退散だ、ヒスミ」
 双子は大袈裟に怖がるなり猛ダッシュで逃亡を始めた。
「自分からは逃げられないでありますよ!」
 吹雪は素速く双子を追いかけだした。またいつもと変わらない日常に。

 再びいつもの光景が始まると
「……また始まったわね。堂々巡りというか……本当に平和ねぇ」
 コルセアは溜息を吐きながら追いかけた。
 この後、吹雪は散々双子の先回りをして現れるなり脅かしては仕置き人としての役目を果たしていた。コルセアは吹雪の監視役を頑張っていた。
 双子は自分達の行動を把握する吹雪からは逃げ切る事は出来ず、吹雪の気が済むまで学校中を走り回っていた。