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女王危篤──シャンバラの決断

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女王危篤──シャンバラの決断
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児玉 結

「マキモノもウマいけど、やっぱクレープ最強!!」
 児玉 結(こだま・ゆう)がもりもりクレープを頬張りながら言う。
「……髪の毛にクリーム、ついてっぞ」
 瀬島 壮太(せじま・そうた)は呆れた様子だ。
「甘ぇムースだと思えば問題ないっ」
「蟻にたかられるんじゃないか?」
 そこは空京のショッピングモールだ。ヒダカについて空京に来た結は、さっそくバーゲンでの買物に繰り出したのだ。
「ソータンがユーを呼び出すなんて、さては……カワイイおっばいを紹介させる気だな?!」
「ああ、まずはアドレスから……違った。それはこの後として、頼みたい事がある。
 児玉から、女王へのメッセージをもらえねぇかな」
「ほへっ?! なんでまた?」
 結は驚いて、クリームまみれの口のまま、壮太を凝視する。
「児玉とアムリアナ女王は多分あんまり面識ねえと思うんだけど、女王って児玉が慕ってたダークヴァルキリー……つまりネフェルティティの姉ちゃんだろ」
 壮太に説明されて、結もそれに気付いた。
「そーいや、そうか。みっそんの姉ちゃんだったわ、あの人」
「ダークヴァルキリーの姉ちゃんが死にそうになってるんだ。なんか励ましの言葉とかくれてやってくれないか?
 オレも女王のことは詳しくわかんねえけど、ジークリンデはオレの学友の高根沢の大事なパートナーだ。できれば助けてやりてえからな」
「OKOK、姉ちゃんがキトクとかマジ泣けるし」
 結はカラフルにデコられた日記帳を取り出し、これまたデコられたペンで励ましのメッセージを書き始める。
「オニキバレ! 妹おいてくんじゃねーぞ! って内容でいいかな?」
「児玉が思う事を書けばいいんじゃないか?」
「うぃーす」
 メッセージを書く結をながめながら、壮太は考える。
(オレも児玉も肉親なんかいねえけど……だからこそ家族ってのが大事だってのは分かるぜ)

 結がメッセージを書き終えると、壮太は言った。
「そういやさ。鏖殺博士の本名って知ってるか? あいつ、男か女か?」
「んーーー、たしかカリーナ・イエル……ん? イエルネだったかな、イエルナだったかな? とにかく、そんな名前。すんげえ、むかつく女。カガク者ぶってる上にイイ女ぶってるけど、性格わりーわりー。あいつ、おっぱいでかいけど、アレだけはやめた方がいい。マジで」
 神妙な顔で止める結に、壮太はそっぽを向いて言う。
「そうじゃない。オレは児玉の体をできれば元に戻してやりてえし、聞くからにアブネー奴を放っておきたくねえからな」
「おぉおぉお? さっすがダチ! ソータン、ランラン並にイイ奴!」
 結は壮太をべしべし叩きながら喜ぶ。
「いてぇって。……そのランランって誰だ? よく聞く名前だけど」
 結はにやりと笑う。
「ざーんねん。ユーはランランって言ってるし、マッチョなカレシがいるけど、おっさんだよ。まぁイケメンだけどー」
「そいつなら鏖殺博士について、もっと知ってるのか?」
「かもねー。ランランもあの女に手術されてっから。ランラン……えー、ミスター・ラングレイこと砕音・アントゥルース(さいおん・あんとぅるーす)つーて、色々オニくわしいし、いま空大にいるみたいだから聞いてみっといいかも」
「そうか、参考になったぜ。あゆみさんと仲良くな」
 壮太は結のメッセージと、ついでに「おっぱいアドレス」を持って、彼女と分かれた。