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【創世の絆・序章】未踏の大地を行く

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【創世の絆・序章】未踏の大地を行く

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16.劇〜【魔法少女 マジカル☆たいむちゃん!】・4場 おうちで団らん♪〜

 ナレーションの声(元の司会):
 ――家に帰り、家族との団欒。
 
   その夜、たいむちゃんの元に“使い魔”が現れ、
   たいむちゃんに魔法少女になってくれるよう頼む。
   魔法の国を襲った魔物たちが今度は、この世界を狙っているという。 
 ■
 
 テーブルを囲んで、3人の役者たちが座っている。
 
 1人は新聞を広げた、父親(魔術師)・アルツール役のアルツール・ライヘンベルガー。
 1人は、弟・空京める役のメルヒオール・ツァイス(めるひおーる・つぁいす)
 1人は、妹・空京える役のエルヴィーネ・ツァイス(えるう゛ぃーね・つぁいす)
 このうち、えるは魔鎧としてアレイ・エルンストに装着されているため、実際にはアレイが「空京める」役として出演していた。
 だが、もちろん台詞を話すのは、当のめるだ。
 
 幕が上がるまでの間、アルツールはこの場面の意義を説明する。
「アッシュ君達からは何も聞かされていないだろうと思うから、2人ともよく聞くのだ。
 これは、たいむちゃんの元気を出す事が目的の演劇。
 君達はいつも通りに、元気に話しかけてくれ。
 それで君は独りじゃないって、彼女が思ってくれるだけでいいのだよ、わかったかな?」
「はーい、センセ!」
 双子の内兄は声で、妹は片手を挙げて、素直に返事をする。
(先生の言うことちゃんと聞くんだぞ、て言っといてよかった……)
 アレイはホッと息をつく。
「よしよし、良い兄妹だな、君達は」
 アルツールは目を細めて、また新聞に目を向ける。
 
 幕が上がって、4場が始まった。
 BGM、スタート!
 
 たいむちゃんは、袖幕から玄関に入り、アルツールのいるリビングセットまで歩いてきた。
 だがその顔は、感情を映さないまま――。
 
 ■
 
「おお、お帰り、たいむちゃん!」
 新聞を読みつづけたまま、父(魔術師)・アルツールはたいむちゃんを見た。
 弟・めると妹・えるも振り向いて、椅子から飛びおりる。
 えるはそのままたいむちゃんの下に駆け寄って、抱きついた。
「たいむおねーちゃんお帰りなさいー!」
「たいむおねーちゃんお帰りー!」
 と、この声は魔鎧から。
 アレイは黙って苦笑いをする。
「……ただいま、めるとえる、それに……パパ」
 弟(魔鎧)と妹、父親に視線をゆっくりと向けてゆく。
 3人のありったけの笑顔は、たいむちゃんを戸惑わせた。
 
 ここにきて、こんな風に表情の揺れは時折みられる。
 だが、まだ持続させるだけの気力はない様子だ。
 
 メルヒオールは、たいむちゃんを見て辛そうだと思う。
(そうだよね、やっと戻ることができた故郷が瓦礫になっているなんて……
 でもこんなときこそ、元気を出してもらわなくっちゃ!)
 
 一方のえる役のエルヴィーネは、兄とは全く別の事を考えていた。
(皆で一緒に劇、とっても楽しそう!
 めいっぱいがんばるね!)
 そういえば学校の場面って、アレイも出てたのよねー、と言うことに思い至る。
 本気半分で、たいむちゃんの裾をひっぱった。
「ねぇねぇ、気になる男の子いた?」
 って、いきなりその話題かよ!
 しかもこの台詞は、確実にアドリブだ。
「好きな人できた?
 どんな人だった?」
 袖幕の向こうから複数名の息をのむ声が聞こえるのは、気のせいだろうか?
 アレイを見上げる。彼はぎこちなく別の方を向いている。
「えるはどう思うの?」
 たいむちゃんが尋ねてくる。
 えるは嬉しくなって、答えた
「ワタシは恋とかよく分からないけど。
 なんかキラキラしてて素敵だと思う。
 そしたらワタシ、応援する!」
 
 突然たいむちゃんは、えると魔鎧をぎゅっと抱きしめる。
「私ね、めるとえるみたいな弟妹が欲しかったな……ありがとう」

 そのまま彼女は退場してしまった。

 ■
 
 ナレーションの声:
 ――その翌日、平和な日常を送っていた学校に
   魔物たちが現れ……