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【創世の絆・序章】涅槃に来た、チャリで来た。

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【創世の絆・序章】涅槃に来た、チャリで来た。

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第十章 そして、手にしたもの 3

「さっきは外したが……今度はもらうぜっ!!」
 先頭を切って、再びラルクが突っ込む。
 それを回避しようとする「ギフト」の動きは、先ほどとは違って追いきれぬほどではない。
「そこだっ!!」
 エヴァルトがその回避行動を先回りし、「必殺奥義」を叩き込む。
 全身の筋肉を激しく振動させ、相手に殺人的な振動を叩き込む技……らしいのだが、どこまで効果があったのかは定かではない。
 ともあれ、その一撃を受けてひるんだ所に、ラルクの七曜拳が炸裂する。
「……っと、何だ、お前ずいぶん硬いな!」
 それでも、まだ「ギフト」は戦意を全く失わない。
「まだやるか……ならば!」
「ギフト」に正面から立ち向かうハーティオン。
 その後ろから、オルベールとコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)がタイミングを合わせて左右に飛び出す。
 それぞれの側の前足を狙った、タイミングを揃えてのアルティマ・トゥーレ。
「ギフト」は左右に避けることを諦め、あえて正面のハーティオンに向かうことでそれを回避した。
 だが、ハーティオンの背後には、さらに美羽とベアトリーチェが隠れていたのだ。
「これでっ!!」
 爆砕槌とサンダーハンマーによる、これまたタイミングを合わせた強烈な一撃。
「ギフト」はこれも回避しようとしたが、先ほどのアルティマ・トゥーレで足元が凍っていたせいもあって避けきれず、再び大きく吹き飛ばされた。

「……もうそろそろいいんじゃない?」
「ギフト」が二度目の痛打を受けたのを見て、カレンがそう尋ねてみた。
 けれども、相当のダメージを受けてなお、「ギフト」は首を横に振った。
『まだまだ……これでは、我を倒したとは言えぬぞ?』
「ギフト」のダメージも大きいが、一同もまた無傷ではなく、打開策を閃くまでの防戦の際の疲れやダメージ、そして大技を使った者の「攻め疲れ」もやや目立ってきていた。
 だとすれば、そろそろ勝負を決めなければならないだろう。
 そして、まだ大技を温存できているのは――八重だ。

「八重、当てられそうか?」
 奈津の言葉に、八重はこくりと頷く。
「今なら、おそらく」
「よし。それじゃ、フィニッシュと行こうぜ!」
 そう言うや否や、まずは奈津が飛び出す。
 真っ正面から突撃する八重に、「ギフト」は素早く――といっても、最初とは比較にならぬほどに動きは鈍っているが――右へと飛ぶ。
「来るぞ!」
 正面からカウンターを当てるのではなく、いったん回避しての側面からの攻撃。
 この消極策が、すでに「ギフト」の受けているダメージの大きさを物語っているが、それでもその攻撃の鋭さは健在である。
「ああ、来いっ!!」
 避けることは難しいし、避けては意味がない。
 故に、奈津は「ギフト」の振り下ろした爪の一撃を避けるのではなく、逆に一歩前に踏み出して受けることを選んだ。
 爪に切り裂かれる心配こそないが、強烈に張り飛ばされるのと同じである。
 その凄まじい衝撃を、しかし、彼女はどうにか受け切った。

 そして、その時には、すでにブラックゴーストが「ギフト」のすぐ真横に迫っていた。
『!?』
 ウィリー状態のブラックゴーストが、そのまま「ギフト」の横っ腹に噛みつくように体当たりをし。
 その背から、ふわりと八重が跳んだ。
「フェニックス・ブレイカァァァッ!!」
 真紅の刀の一振りが、闇を照らす炎の鳥を具現させ。
 とっさに飛び下がろうとした「ギフト」に、狙い過たず直撃した。
 爆炎が「ギフト」を飲み込み――誰の目にも、勝敗は決したかと思われた。

 だが、それでも。
「ギフト」を倒すには、まだ、もう一押し足りなかった。
『ふふふ……まだ! まだ我は倒れてはおらんぞ!!』
 どこか戦いを楽しんでいるような様子で、「ギフト」が最後の力を振り絞って床を蹴り。
 その目指した先にいたのは、いつのまにか、なぜか前線に出てきていた良雄だった。
「良雄っ!?」
 何のつもりでふらふら最前線にでてきたのか知らないが、まさか自分が狙われるとは思っていなかったのだろう。
「うわああああっ!?」
 逃げることすらできず、良雄が、とっさに手にしていたバットを突き出す。
「ギフト」はそれを左に跳んでかわし、そこから飛びかかって、その爪を良雄の血で染める――はずだった。
 だが、これまでの戦いで大きなダメージを受けていた「ギフト」の身体は、すでにその頭脳が期待したほどのパフォーマンスは発揮できなくなっていた。

 床を蹴るはずの「ギフト」の足が滑り、身体は左に跳ばずに真っ直ぐ突き進んだ。
 真っ直ぐ――そう、良雄の突き出したバットめがけて、真っ直ぐに。

 良雄の突き出したバットが、カウンター気味に「ギフト」の喉元に炸裂する。
 カウンターの一撃なので、当然「ギフト」自身の速さも威力に上乗せされ……結局、これがトドメとなった。
 目の前で、「ギフト」が、その場に崩れ落ちる。
 その様子を、良雄はどこか他人事のように呆然と見つめていた。