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【ダークサイズ】続・灼熱の地下迷宮

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【ダークサイズ】続・灼熱の地下迷宮

リアクション

 フレイムタン・オアシスのビル内で見つけた階段から、ダイソウ達はさらに深く深く地下へと下ってゆく。
 フレイムたんと『亀川』の距離感に気を使い、【氷術】スキルで熱をごまかし、ようやく最下層まで降りると、いかにもといった感じの分厚い扉がある。

「ふんどし一丁で何もできなかったとあっちゃ、さすがに恥ずかしーからな」

 と、ここでラルクが、

「おっらあああああ!」

 全身の筋肉を使って扉を横に開ける。
 扉の向こうからは、やはり強い熱が流れてくるが、その中には、やはりいかにもな雰囲気で巨大な装置が置かれていた。

「ほう、俺ですら見たことのないマシンではないか。ククク、これは天才科学者の琴線に触れるというものだ。そうは思わぬか鈿女博士?」

 ドクター・ハデス(どくたー・はです)はやはりメガネをくいをあげ、高天原 鈿女(たかまがはら・うずめ)を振り返る。
 ダイソウは鈿女を見て、

「ハーティオンと一緒でなくてよいのか?」
「ああ、別にいいのよ。あっちにはハデスのカリバーンがついていってるみたいだし」

 悪の秘密結社であるハデス達オリュンポスとハーティオン達正義の味方は、立場上敵対しなければならないはずだが、コアと聖剣勇者 カリバーン(せいけんゆうしゃ・かりばーん)は、以前の対イレイザーでの合体技以降、どうも気が合うらしい。
 ならばこちらも科学者同士だと、ハデスと鈿女は知恵を出し合う。

「ふむ、ニルヴァーナと言えど、基本の命令系統の打ち込みはキーボードを使うのだな」
「うーん、でも文字はさっぱり分からないわ。下手に打ったら、まさに鬼が出るか蛇が出るか、だわ。じゃ、分解しましょうか」
「フハハハハ、鈿女博士は結論が早いな。だが分解での解析では、余計な時間がかかってしまうぞ」
「でも、通電の方法が分からない以上、中の配線くらいは見なきゃ、対策が立てられないわ」
「ホントだー、なーんにも反応しない」

 ハデスと鈿女の脇を抜けて、カレンとクラウンが適当にキーやらスイッチを押す。

「フハハハハ! 何をやっておる貴様らー!」

 ハデスは、ツッコんでるのか叱っているのかよく分からないテンションで叫ぶ。
 カレンは、全然気にもせずにボタンを押しながら、

「ダイソウトウさまー、どうやったら反応するんだろうね」
「うむ、ここならば、入電スイッチか何かがあると思うのだがな」
「何一緒になって押してるんですかっ」

 クロスがまたダイソウを【ピコハン】で飛ばす。
 鈿女はよし、分解だと腕をまくるが、白夜が止める。

「待て待て。先刻あの学者が、時間がかかると言ったばかりじゃろうが。まずは【博識】で構造を探るのが順当ではないか?」
「そうね……ちっ
「なぜ舌うちするのじゃ……」

 白夜としぶしぶながら鈿女の【博識】によると、

「ん? その隅にある蓋のようなものは一体?」

 と、二人が装置の反対側になる、直径二メートルくらいのドーム状になった蓋を見つける。

「ペンギンぶたーい」

 円が【ペンギンアヴァターラ・ロケット】の上で指を指すと、ペンギン達が蓋にまとわりつく。
 ペンギン達がうごうごと試行錯誤するのに加えて、ラルクが近寄り、

「くっそー、風呂はまだかー? お、これ開くぜ」

 ラルクとペンギン部隊が二手に分かれて左右に引くと、ドームの蓋は両方に割れるように開いた。

『!?』

 開いた後に見えるのは、精密な機械などではなく、綺麗な形に穿たれた台である。
 そして、注目すべきはその穴の形。

『六角形……』

 全員が、『亀川』を振り返る。

「まさか……」
「いや、まさかねぇ……」

 全員の中に同時に湧いたアイデアは、一つしかない。
 ダイソウは全員の考えを感じ取り、

「だが、どうやって『亀川』をこの台に乗せる? 今の『亀川』に触れれば、凍って壊死してしまうぞ」

 だがそれには、イリスが羽織っていたマグマイレイザーの皮を、『亀川』に被せることで応えた。

「や、やっぱりこれ脱ぐと暑いわ……」

 脱ぐと暑い、というのはなかなか奇妙なことだが、溶岩の熱を断絶できるこの皮は、『亀川』の冷気封じにもある一定以上の効果があるようだ。

「おっしゃ、まかしとき」

 裕輝が、残りの皮で『亀川』を覆い、そして数人がかりで『亀川』を六角形の穴に収めた。
 すると、『亀川』が沈んでいく。

「やっぱり……」

 全員息を飲んで『亀川』が沈んでいった後の、六角形の穴を見守る。
 少しした後、突然あたりが真っ暗になった。
 フレイムたんの炎が消えたのだ。
 ということは同時に、穴に消えた『亀川』からの冷気も消える。

「いかん、【氷術】を最大で放て!」

 ダイソウの言葉と同時に、冷気スキルを使える者が、急いで冷気を放つ。
 しかしメインの防熱方法を失って、

「あっつーい! こっちにも冷気ちょうだい!」
「こっちってどっちですか!? 暗くてわからない!」

 完全な暗転の中で、混乱するダークサイズ。
 同時に、地の底から大きな揺れが襲ってくる。
 続いて、聞いたことのないような大きな音。
 さらに方々から、たくさんの穴から何かが吹き出すような音。
 最後に、天井の明りがともって、一気に視界が開けた。

『!?』

 皆が天井の照明を見上げる。

「これは、まさか……」
「フレイムタン・オアシスが、稼働し……!」

 と、状況を飲み込もうとした直後、沈んでいったはずの『亀川』がまた押し上げられて戻って来た。
 そしてフレイムたんが燃え上がる。

「あーちちちち!」
「こっちは冷てーっ!!」
「フレイムたん! フレイムたん、あっち行ってー!」

 完全に封じられ、機晶エネルギーも尽きていたはずのフレイムタン・オアシスビルの再起動という偉業だが、最後の混乱のせいで感動もへったくれもないのであった。




☆★☆★☆




 一体、どういう原理なのか、今は詳しくは分からない。
 ただ推測できるのは、フレイムタン・オアシスの地下のさらに深くに、例えば氷などの層があり、『亀川』がスイッチになることでそこからの冷気や空気が大量に解放され、ビルまで吸い上げられる機構が備えられていた、ということ。
 ビルの最上階に到達した向日葵達から見ると、突如最上階の外壁がシャッターのように開き、その360度パノラマからは、ドームの出入り口になっていた部分が閉じ、ドーム内にはビルから冷たい空気が放出され、ビルと共にフレイムタン・オアシスそのものが、周辺の溶岩の熱から解放されたことが分かった。

「あら、ダイソウトウったら、ちゃんとやることやれちゃったのね」

 菫が嬉しいような期待外れのような言い方でつぶやく。
 コアが菫を振り返る。

「何っ、ダークサイズに先を越されてしまったか!」
「あんたちょっと、その目眩しいからこっち見んな」
「ねーねー、あれ何だろー。きれーい」

 ノーンがオアシスの外を指さす。
 その先には、フレイムタン・オアシスから、見えなくなるほどはるか先まで、薄い光の筋が現れていた。

「こ、こっちにも!」

 ちょうど反対側で、涼介が窓に張り付く。
 小次郎が汗をぬぐいながら、

「まさかこれが……フレイムタンを繋ぐ、線路というわけですか……!」

 向日葵は、【粘体のフラワシ】が服の中蠢くのを思い出したのか、急に身体をもじもじさせ始め、

「何か面白い物見つけなきゃ、気持ち悪いまんまだよおー」

 と、最上階の一番奥にある、指令室と思われる部屋を見つける。

「ねえみんな! ここなら何かあるんじゃない?」
「ッシャー! 何か指揮系統を操れる部屋だな? ここを押さえりゃ、ビルは俺様たちのもんだぜーっ!」

 ゲブーが意気揚々と部屋に飛び込み、他のチーム・サンフラも続く。
 この中も既に電気が入っていると見えて、管制塔を思わせるような機械が並ぶ。
 だが、チーム・サンフラは残念ながら失望させられる。

「だめだ。照明と空調は電気で動いてるが、他の装置らしきものは反応しないな……」
「それ以外は機晶エネルギーか? 何にせよ、完全に失われてるみたいだな。エネルギーの補充方法が分からない」

 どのボタンやキーボードをいじっても、反応らしきことは何も起こらない。
 やはり、生命維持以外の技術は失われていると見てよいようだ。
 そんな向日葵たちを見てひやっとしたのは菫で、あえて諭すように、

「ちょっとあんたたち。色々触りまくってるけど、もし電気で動くものがあったら危な……」
「サンフラワーちゃーん、何か赤いボタンがあるよ」
「面白そう! ぽちっとな」
「聞きゃしないのね……」

 天井の隅のカメラが動き、指令室のドアが閉まり、壁から銃器が出る。

『ぬおおおおーっ!』

 閉じ込められた向日葵達は、四方から飛んでくる光線をかわしながら、

「むっ、敵か! ハーティオン! 聖剣・俺を使え!」
「応!」

 カリバーンが【光条兵器】をコアに持たせ、

『神剣両断! カリバーンストラッーーーーーシュ!!』

 と、彼らを狙う銃器の破壊を始めた。
 しかし、

「な、何でできているのだ! 壊れん!」

 ビルの外壁同様、人力では破壊が不可能なようだ。
 天井のカメラ越しに、地下でその映像を見ていたハデスと鈿女。

「……あの子たち、何遊んでんのかしら」
「フハハハハ! 流石我々オリュンポスとダークサイズの共同拠点にふさわしい施設だけはある。セキュリティは万全ではないか!」
 【先端テクノロジー】で配線を調べた結果、鈿女がこれで間違いなかろうと見つけた青いボタンを押し、セキュリティ装置を止めた。