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バレンタイン…雪が解け美しき花びら開く…

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リアクション


第32章 Es gibt es in der N’’ahe von Ihnen durch jede Art von Zeit

「先にお昼を食べようか?」
 椎堂 紗月(しどう・さつき)は恋人をデートに誘い、クリームイエローの建物の前へやってくる。
「カフェの中で少し温まりたいね」
 寒そうに鬼崎 朔(きざき・さく)が手の平を息で温める。
「それじゃあ2階だな」
 2人は木造の階段を上り窓際に座る。
「ずいぶんと贅沢な作りね」
「ん、なんか元々この町に住んでいた貴族が使ってみたいだけどさ。使わなくなったから、町の人が引き取ってカフェに改装したんだって」
「そうなの?」
「こんなにいいところを手放すなんて、俺にはさっぱりわかんねーけど。とりあえず、何か注文しようぜ」
「あ、うん・・・そうね。子牛肉のローストがついたサーモンのマリネにしようかな」
「んじゃ俺は鶏肉のエシャロット・マルサラ・ソース仕立てにするかな」
 注文した20分後、出来立ての料理が丸いテーブルの上に運ばれてきた。
 朔はマリネと香草をナイフとフォークで包んで食べる。
「美味しい・・・、それにバジルの香りが凄くいいね」
「んー、美味い。美味いなぁー」
 ちまちまと食べている彼女と違い、紗月の方は男の子らしくもりもりと食べる。
「ふぅ〜。ごちそうさん」
 満ち足りた腹を満足そうにさする。
「えっと確かアインドゥフト・デス・ゾンネンリヒトだっけ。その花屋にでも行ってみるか?」
「どんな花があるのかな」
 お昼を食べ終えた2人は花屋に行ってみることにした。
 広場の北側へ行きホーフパサージュの通りに、壁に動物の絵が描かれた小さな花屋を見つけた。
 ディスプレイにはクロッカスやフリージア、プリムラ・マラコイデスなどが飾られている。
「どれもいい香り、それに色も鮮やかだね」
 ブラウニッシュゴールドやブライトバイオレットカラーの花を眺める。
「レンゲとマーガレットをちょうだい。ありがとう・・・っ」
 キレイに包んでもらった花束を抱え、花びらに顔を近づけるとほのかに蜜の香りが漂う。
「紗月も決まったかな?」
「んー・・・ごめん、もうちょっと選ばせてくれ。(どれ贈ったらいいかわかんねーな)」
 彼の方はあまり花に詳しくなく、どれをあげたら喜んでくれるか迷ってしまう。
「あの〜、ちょっといいか」
 彼女に合う花がないか聞いてみようと若い女の店員に声をかける。
「はい、何でしょうか?」
「えっと、店の外で花を見ている俺の彼女に合う花を探してくれないか?」
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
 店員は店内にある花をチョイスして花束を作る。
 花びらの端にいくにつれてホワイトになっていくバイオレットのグラデーションがかったプリムラ・マラコイデスをメインに、ホワイトのストックを数本と、グレイッシュグリーンのオレアリアで周りを囲った花束だ。
「メインの花が気どらない愛、ポイントに加えたストックは愛の絆、周りの花が清純という意味です」
「おぉ〜、いいじゃないかそれ!」
「可愛らしいお嬢さんですね」
「いやぁ〜、あはは。そうだろ?」
「Es gibt es in der N’’ahe von Ihnen durch jede Art von Zeit. どんな時でも、貴女の傍にいますという意味の言葉です」
「うん。・・・言ってみるよ」
 花束を受け取り彼女の元へ戻る。
「なぁ、紗月。夜になる前に、河の橋に行こうぜ」
「紗月が行くなら行ってみたいね」
 まだ交換していない花束を抱えたままグリュック橋の上に行く。
「ここなら結構、町並みが見えるな」
 手摺を掴み紗月が周りを見回す。
「あっちは宮殿があるところか?」
 ぽつぽつと点き始めた灯りでターコイズカラーの屋根や窓が静かに輝きを放つ。
「向こうは大聖堂がある方ね」
 朔も端の上から見てみると、灯りの色を受けて落ち着いたオリーブイエローの色合いに見える。
「なぁ花束、交換しようぜ。俺から朔に・・・」
「そうだね。私から紗月に・・・。渡した花、どんな意味か分かるかな?」
 互いに交換し合い、朔が花の意味を彼が知っているか聞く。
「んー、俺はそういうのわかんねーな。教えてくれよ?」
「えぇー、じゃあ家で調べてみて?」
「なんだよー、今教えてくれたっていいじゃんか!」
「うーん、恥ずかしいな。えっとね。あなたがいれば私の苦しみは和らぐ・・・と、・・・真実の愛だよ。私が教えたんだから、紗月も教えてよ」
「だって朔は分かってるんじゃないのか?」
「紗月の口から聞きたいんだよ。恥ずかしいの我慢して教えたんだからね?ね、早くっ♪」
「花が気どらない愛・・・、愛の絆・・・、清純・・・だな。あぁあもう、恥ずかしいじゃないか、誰かに聞かれたらどうするんだ!」
「(私をイメージしたのかな?でも、気どらない愛って・・・まるで紗月みたい)」
 嬉しそうに花びらにちょんと触れる。
「ねぇ、紗月」
「んー、どうしたんだ?」
「私と本当に一緒になりたい?・・・私は・・・復讐者だよ?真っ当な道を歩むことは・・・多分・・・許されない。修羅の道を歩むことになる。それに・・・私はもうエリシュオン側の人間。・・・もしかしたら、紗月の大事な友達を私が傷つけるかもしれない。・・・それでも、私と一緒になる“覚悟”はあるの・・・?」
「朔・・・どうしてそんな話を・・・」
「(一度、承諾したことを今更こんな風に言うなんて・・・ずるいよね。でも、これを聞いておかないと・・・私は“覚悟”出来ない。“例え何があろうと、この人と添い遂げる覚悟”を)」
 答えをもらったのにまた同じようなことを聞き、ちゃんと覚悟しておきたいからともう1度返事をもらいたい。
 黙ったままの彼を心が痛む泣きそうな瞳で見つめる。
「―・・・それを見過ごすなんて、俺には出来ないと思うんだ」
「やっぱり、そうだよね」
「でも、俺がそれを止めて朔を守る・・・。恋人も友達も両方選ぶとか、そんな選択肢もありなんじゃないか?どっちか選ばされる状況になるやつとかはたくさんいるっぽいけどな。だからって片方を選んで、後で後悔するよりも、今両方選んで後悔しない生き方の方がいいな」
「(後悔しない生き方・・・。そうだね、今・・・紗月と離れたりしたら、私・・・とても後悔しちゃいそう。それでもいいなんて選んだら、毎日毎日・・・悲しくて涙が枯れ果てても泣いてしまいそう・・・)」
「どんな生き方をしても、朔と一緒にいたいのは変わらないぜ?俺にとってたった1人の存在だからな」
「うん・・・ありがとう。「あなた」♪」
 ぽすっと紗月に抱きつき、ぎゅっと抱き締める。
「ふふ・・・お待ちかねの本命チョコだよ♪」
「1つ食べてみてもいいか?」
「え、ここで?じゃあ、1つだけならいいよ」
「お、やったーっ。はむ・・・、うめぇーっ!」
 彼女からもらった本命チョコを美味しそうに食べる。
「朔が俺の為にくれたチョコの味のキス」
「―・・・・・・・・・っ」
 不意にキスされた朔が顔を真っ赤に染める。
「朔、さっき言った言葉、変わらないからな?Es gibt es in der N’’ahe von Ihnen durch jede Art von Zeit」
「うん、私も・・・。(エス イスト シュヴール イン リューゲ ニヒト)」
 どんな時でも朔の傍にいるという言葉をもらい、クリスマスに婚約した彼に誓いの言葉を心の中で伝える。
 2人の愛を祝福するかのように、夕暮れを告げる大聖堂の鐘の音が鳴り響いた。

担当マスターより

▼担当マスター

按条境一

▼マスターコメント

リアクション内の時刻ですと、こんにちは、こんばんはの方もいらっしゃるでしょうね。
明らかにオーバーしてしまった分はプレゼントです。
希望描写が多いシーンは、的をしぼってもかなり薄くなったり、文字数がかなりオーバーしまう箇所などがなくなってしまうこともありますので、ことがありますのでお気をつけください。

一部の方に称号をお送りさせていただきました。
それではまた次回、別のシナリオでお会いできる日を楽しみにお待ちしております。

2011.02.16:リアクションの一部を修正いたしました。