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目からビーム出そうぜ! ビームだよビーム!

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目からビーム出そうぜ! ビームだよビーム!
目からビーム出そうぜ! ビームだよビーム! 目からビーム出そうぜ! ビームだよビーム!

リアクション

                              ☆


「ヒャッハーッ!! こいつはすごいぜ!!」
 ブレイズ・ブラスはビームを撃ちながらツァンダの街を駆け抜けていた。もちろん、目的はクラゲ退治だ。
 建物の屋根から屋根に飛び移り、空中のクラゲを次々に撃破していく。
「きゃっ!!」
 しかし、ビームを受けたクラゲが落下することまでは考えていなかったのだろう、クラゲの残骸が落ちた先にいた、一人の女性が声を上げた。
 水神 樹(みなかみ・いつき)東雲 珂月(しののめ・かづき)だ。
「――すまねぇ、大丈夫か?」
 ブレイズは屋根から下りて二人に話しかける。樹は驚きはしたものの怪我はなく、少し落ち着いた様子で答えた。
「は、はい……でも、突然停電になって……びっくりしました」
「ああ、そうなんだ……あの『パラミタ電気クラゲ』のせいで電気が使えねぇ……あんたも見たとこコントラクターか……丁度いい、できる範囲でいいから手伝ってくれ。これでビームを撃つんだ」
 そのブレイズの言葉に、珂月が反応した。
「え、それがあればボクもビーム撃てるの!?」
 無邪気な反応に、ブレイズは気を良くして説明する。
「ああ、この『情熱クリスタル』を持って気合を入れればいいのさ!」
 そう言ってそのあたりに生えていたクリスタルを一本折って珂月と樹に渡す。二人は、それを受け取ってしげしげと眺めた。
「――なるほど、事情は分かりました。微力ながら、協力しましょう」
 樹は力強くクリスタルを握り締め、空を見上げた。
「えーと、こうですか!? え、目からビームッ!!」
 すると、樹の両目から白い光線が発射され、クラゲに命中する。

「あ、ボクもボクも!! 目からビィィィムッ!!!」
 珂月が叫ぶと、目ではなくツインテール髪を止めているハエトリソウから意外と激しいビームが発射された!!

「おおっ!? すげぇっ!!」
 ブレイズは驚いた。そのビームは激しい稲妻のように何条もの光を含んでおり、一発で何匹ものクラゲを巻き込んで撃退する。
 その場を二人に任せて、ブレイズは次なる協力者を求めてまた屋根伝いに跳ねて行った。
 ブレイズを見送った二人は、街を停電から救うべく奮闘するのだった。

「よし、ブレイズさんに負けないように周りに気をつけてクラゲさんを追っ払いましょう!!」
 凛々しく気合を入れる樹に、珂月もビームを撃って応えるのだった。
「うん、ボクも頑張るよ! 早くやっつけておうちに帰ろう!! ハエトリソウビィィィム!!!」


                    ☆


 その頃、停電騒ぎの中でひときわ大きな『情熱クリスタル』へと向かっている二人がいた。
 カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)だ。
「まったく……だから早めに宿を確保せねばならんと忠告したのに……おかげで騒動に巻き込まれてしまったではないか」
 と、文句を言うジュレールをカレンはなだめる。
「まぁまぁいいじゃない、おかげで面白そうな事件で出会えたんだし!! きっとあの一番大きなクリスタルのところに行けば、何か分かるよ!!」
 もともと好奇心旺盛なカレン。停電したからと言ってじっと待っていることなどできるはずもない。仮に宿を取っていたところで確かに結果は同じであろうな、とジュレールはそっとため息をついた。

「あ、カレンでスノー!! 久しぶりでスノー!!」

 一番大きなクリスタルは高さ10mほどの大きな樹のようで、その根元にいたのが冬の精霊ウィンター・ウィンターと春の精霊スプリング・スプリングだった。
 このクリスタルを作ったのが二人の精霊で、ウィンターが溶けにくい氷をクリスタル状につくり、そこにスプリングが光輝の力を込めたものだったのだ。

 カレンは以前、ツァンダに冬将軍が攻めて来た時にウィンターと知り合っている。
 大まかな事情を聞いたカレンは、興味深そうにクリスタルを観察しながら、言った。
「ねぇウィンター、何してるの? このクリスタル何? どうして停電なの? あとあのクラゲ何?」
 一気に詰め寄るカレンの顔にウィンターはクリスタルを一本押し付けて押し返した。
「ええい、一気に聞かれても答えられないでスノー! 停電はあのクラゲのせいでスノー! 普通の攻撃は効きにくいからこのクリスタルで目からビーム出して追っ払うでスノー!!」
 ウィンターのものすごく圧縮した説明でとりあえずカレンも理解はしたらしい。
「なるほど……このクリスタルで……」
 クリスタルを手にとってみるカレンと対照的に、ジュレールは呟いた。
「ふん、そんなバカげたものに頼らずとも、我はこれがあれば十分だ」
 ガチャ、と機晶姫用レールガンを構え、比較的近くに接近していた電気クラゲに向かって発砲する。
 しかし。
「あ……確かに命中したのに?」
 電磁加速された強力な弾丸は確かにそのクラゲにヒットしていた。しかし、その軟体のボディで弾丸を包み込むように威力を吸収し、たいしたダメージは与えられないようだった。
「もうジュレったら。人の話は聞かないとダメだよ。あのクラゲにはビーム以外の攻撃は効きにくいってさっき言ってたじゃない」
 まさかカレンに人の話を聞けと諭されるとは思わなかったジュレールは、いささかのショックをもってクリスタルのかけらを見つめた。
 その様子を意にも介さずに、カレンはクリスタルを握って気合を込める。


「いくよっ!! 目からリップルビィィィム!!!


「おお!! すごいでスノー! カレンにはビームの才能があるでスノー!!」
 カレンの目から発射されたビームはリング状のビームで、距離が開けば開くほど大きくなり、どれかのクラゲに当たると消えた。
 ビームが当たったクラゲは、一発で致命傷とはいかないようだが、十分なダメージは与えられたようで、ふらふらと落下していく。
 威力は通常のビームと変わらないようだが、広範囲に広がるため、でたらめに撃ってもまず当たるし、うまく狙えば複数のクラゲを巻き込むことも可能であった。

「よし……これなら何とかなりそうだねっ! どんどん行こう!!」
 やがてビームを撃たねば有効打は与えられないと悟ったジュレールと共に、次々とクラゲを打ち落としていくカレンだった。


 そこに、ウィンターの親友であるノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)がやって来た。
「あ、ウィンターちゃん、こんばんは!!」
「おお、ノーン。こんばんはでスノー!! お主もビーム撃つといいでスノー!!」
 いきなりそう言われても中々理解できるものではない、とりあえずノーンはウィンターから説明を聞いた。

「……なるほど……とりあえずビームなのね。じゃあおにーちゃんにも教えておくね」
 と、携帯電話を取り出すノーンにウィンターは尋ねた。
「あれ、帰ってきてるでスノー?」
 その言葉にノーンは嬉しそうに微笑み、答えた。
「うん、おねーちゃんと一緒にね! でも、いきなり停電になっちゃったから、さっき電話で呼ばれたんだけど……わたしはここでウィンターちゃんたちと一緒にビーム撃つよ!!」
 と、その辺からクリスタルをひとつ手にとって、ノーンは叫んだ。


「えーいっ! 指先からビーム!!」


 そのクリスタルは小さな雪の結晶のような形をしていた。それが光ったかと思うとノーンの指先から強力な冷凍光線が発射された!
「いっけーーー!!!」
 ノーンが指を横に滑らせていくと、斜線上にいたクラゲが次々と凍りつき、その自由を奪われ、砕かれていく。
「お、いいね。いただきっ!!」
 そこにカレンがリップルビームを放ち、動きの鈍ったクラゲの残りを一掃していった。


 ところで、その頃のおにーちゃん――影野 陽太(かげの・ようた)は。

「だあああぁぁぁっ!! どうしてゆっくりできると思った矢先に停電なんですかっ!!」
 と、誰にともなく文句を言いながら自室を飛び出したところである。
 先日色々あってようやく帰ってきた恋人と、今度こそゆっくり誰気兼ねなく心ゆくまでイチャイチャできると思った矢先の大停電。陽太の心中は察して余りあるものがある。
「――とはいえ、ノーンの話だとただの停電じゃないみたいだし……待ってて下さい環菜、すぐに片付けて戻りますから……!!」
 陽太は入れ違いに呼び出したパートナー、エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)を反対に停電で真っ暗な自室に入れた。
「いいですか、クラゲを追い払えば停電は回復すると思いますが……念のため、君はここで環菜の世話をお願いします」
 エリシアは魔術の書籍を読み漁っているところでいきなり停電し、さらにメールで呼びつけられたため少々不機嫌だったが、自らの友人でもある環菜の警護となれば、引き受けないわけにもいかない。
「分かりましたわ。こちらはお任せくださいな。まあ、クラゲも家の中まで襲ってくることもないでしょうし」
 恋人をエリシアに任せ、陽太はテクノコンピューターを取り出しながら街を急いだ。
 街中の状況を調べつつ防衛計画を駆使して、効率のよい防衛プランをネット上にアップして可能な限りの知り合いに活用を呼びかけた。
 それにより、比較的リアルタイムな街の状況を多くのコントラクターが入手することができ、クラゲが密集していて危険な地域や、コントラクターがいない空白地域などを知ることができるようになった。
 また、興味を持って調べた人間ならば誰でも使えるようにしたことで、多くの人間が情報を共有できることになったのである。
「よし……このまま街を調べつつ、ノーンのところに合流しましょう……」
 と、一刻も早く恋人のところへ戻るために、奮闘する陽太であった。


                    ☆


「ふむ、悪くない」
 カメリアから事情を聞き、クリスタルを受け取ったのは毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)だ。
 ちなみに、悪くないのはクリスタルでもビームでもなく、手にしたビデオカメラに移ったカメリアの姿である。
 本人には見せないが、ソートグラフィーの効果によってカメリアの映像は裸ワイシャツ状態で映し出されている。


 いわゆるはだワイ。


 しかも、ご丁寧に恥じらいの表情まで浮かべた状態に加工されたカメリアの映像はなかなかに愛らしく、大佐のエロス心を刺激するのだった。
「よし――分かった。ビームを撃とうじゃないか」
 カメリアから受け取ったクリスタルはちょうど眼鏡のような形をしていた。自分の眼鏡の上からかぶせるようにクリスタルを装着すると、違和感なくフィットする。
「ふむ……目からビィィィム!!!」
 すると、眼鏡のレンズから赤い光が撃ち出され、空中のクラゲにヒットした。

「おお、意外とやるではないか」
 カメリアは素直な賞賛を口にした。やる気のないように見受けられた大佐が高威力のビームを発射できたことが意外だったのだろう。


 まさか、そのやる気の元が自分の裸ワイシャツ映像だとは夢にも思うまい。


 ところで、その大佐だが、眼鏡からビームは出たものの、さらに高出力のビームを打ちっぱなしの状態にしている。
「……おい、気合が入っているのは結構じゃが、休み休みいかんと気力がもたんぞ?」
 しかし、大佐のビームは止まらない。心配するカメリアに、大佐は呟いた。
「……これは……どうやったら止まる?」

「え?」

 どうやら大佐のビームは一度撃ったら止まらないビームだったらしい。
 しかも、うっかり眼鏡にかぶせてしまったのでビームが出ている内はまぶしくて何も見えないおまけつきだった。
「いやぁ……これは誤算」
 と、見えないながらも視線を横に逸らすとビームの軌道も一緒に横に動き、そのビームは何体かのクラゲと共に一人の男にヒットした。
 クラゲ退治にいそしんでいたブレイズ・ブラスである。

「おわあああぁっ!!?」
 まさか地上からビームで撃たれるとは思ってなかったブレイズは、そのまま大佐とカメリアの目の前にぼとりと落ちてきた。
「だ、大丈夫かブレイズ!?」
 カメリアの呼びかけに大佐も思わず駆け寄る。
「おお、誰かに当たってしまったのか? それは悪いことをした!!」

 ビームは出しっぱなしで!!

「あだだだだだ!!」
 至近距離からの眼鏡ビームを受けてのたうちまわるブレイズ。
 だが大佐とて悪気があってしているわけではない。どうにかして治療しようと傷の具合を確認しようとした。

 ところでビームは撃ちっぱなしだ!!

「熱い熱い熱い熱い!!」
 そのままビームを逃れるように道の端に転がるブレイズだが、大佐はついついその声を視線で追ってしまう。

 もちろんビームは放出し放題である!!

「ぎゃあああぁぁぁっ!!」
「いい加減にせんかーっ!!」
 見かねたカメリアが大佐の後頭部をひっぱたくと、その勢いで眼鏡クリスタルが外れ、ビームの放出が止まった。

 それと同時に、大佐が持っていたビデオカメラが地面に転げ落ちる。
「ふぅ……ようやく止まったか……ほれビデオカメラ……? って何じゃこの映像はーっ!?」
 そこには、先ほどの裸ワイシャツで恥じらいの表情を浮かべるカメリアの映像があった。

「やべ」
 大佐はカメリアの手から一瞬でビデオカメラを奪い取り、そのままバーストダッシュで逃げ出した。
「あ、こら待たんかーーーっっっ!!!」
 逃げた大佐を追うカメリア。
 その後には、散々ビームで撃たれて黒コゲになったブレイズが、道の端っこで転がっていた。