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【2021修学旅行】ギリシャの英雄!?

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【2021修学旅行】ギリシャの英雄!?
【2021修学旅行】ギリシャの英雄!? 【2021修学旅行】ギリシャの英雄!?

リアクション

「……」
 横になって目を瞑っていたミノタウロスの前に出るセルシウス。
「ああ……ここは何処かしら? 可憐な私が迷い込んでしまったぞ!?」
「(なんでやねん!)」
 反射的に叫ぼうとする社の口を寺美が押さえる。
「……グルル」
 ミノタウロスが目をゆっくりと開ける。
「(よし、それでヤツの注意を引くんだ、セっさん!)」
 手に汗握る展開を一同が無言で見つめる。
「こ、困ったわ……これでは、可憐な私は永光あるエリュシオン帝国に帰れないじゃない……」
 ミノタウロスがゆっくりと身を起こしながら、息を吸い込み……。
「ブシューッ!」
「ヌゥオ!?」
 巨大な鼻から鼻息が突風にように吹き、セルシウスのスカートが上にあがる。
 白いスカートの中に、誰得なセルシウスの青いトランクスが見え……。
「……きゃ、きゃああ!」
 慌ててスカートを押さえるセルシウス。咄嗟に頭を下げたため、カツラがずれる。
 立ち上がったミノタウロスが怒りの咆哮をする。
「……うむ。女装は失敗したようだが、貴公ら、どうすればいい?」
「(バカモノ! こっち見たら!!)」
 ミカエルが心で叫ぶも、既に時遅かった。
 ミノタウロスの黄金の瞳が、出入り口にいた一行を捉える。
「ヴオオオォォォォォーーーッ!!」
「計画は一旦中止だ!! 各自、逃げろぉぉぉーー!」
 セルシウスが叫んで走りだそうとするが、そこにミノタウロスの巨大な手が振り下ろされる。
「セルシウスさん! 危ない!!」
 素早くセルシウスの前に出て庇う永谷をミノタウロスの巨大な手が弾き飛ばす。
「がぁ……!?」
 土の壁に勢い良く叩きつけられる永谷。
「永谷!! ぐわぁぁ!?」
 ミノタウロスの尻尾がミカエルも軽々と打ち上げる。
「ミカエル……」
 土の壁にめり込んだ永谷が体を起こそうとして、ある事に気付く。
「!?」
 土壁が白かったのは土壌に灰が含まれているからではなかった。そこには無数の白骨が埋まっていたのである。恐らく……ミノタウロスに挑んだ者達の……。


「おぅ! お前がミノタウロスかっ!」
 永谷という盾が居なくなったセルシウスのために、社がミノタウロスの前に進み出る。
「お前のような奴は、セっさん一人でも十分なんやが今日はちょっとお腹が痛いらしいんで俺らが相手したるわっ!」
 セルシウスを持ち上げてるのかこけにしているのか謎な発言をする社。
 スキル【警告】使用するが、畏怖の効果はミノタウロスにはかからない。
「はぅ〜☆ 社! ボクが援護するよぉ!」
 寺美が、社の攻撃が当るようにマシンガンで弾幕援護を行い、ミノタウロスに隙を作ろうとする。
「先手必勝! うなれっ!俺の拳っ!」
 寺美の援護に合わせて歴戦の立ち回りから等活地獄のラッシュをかけ、ミノタウロスを攻める社。
「社さん、手伝います!」
 タイラントソードを持ったクロセルが跳びかかる。
「肉の分際で、私と社さんに勝てるわけがない! 食物連鎖が何たるかを教えてあげましょう!」
 ミノタウロスの体を駆け上がり、細長いタイラントソードを素早く振るうクロセル。
 狙いは『首』である。
「たぁぁーーッ!」
「キミ、ちょっと待った!」
「え?」
 流体金属槍を持った朱鷺がクロセルの足を掴む。
「朱鷺の実験相手に何するつもり?」
「朱鷺さん!? 今、そんな事やってる場合じゃ……」
 ミノタウロスを従者にしたい朱鷺と牛鍋を目論むクロセルがミノタウロスの肩の上で言い争う。
「ああ、何て撮り甲斐がある映像かしら!」
 ビデオカメラを持ち、一同の戦いを見守る花琳の横で、ブラインドナイブスを仕掛ける朔と朔に庇われつつ果敢にミノタウロスに向かうみすみ。
「あたしだって! と、最近、苗床率が高いからね……無茶な事はしない……行くのよ、タネモミジャー!!」
 半溶けから復活したエリヌースがみすみの後を追う。タネモミジャーを前にして。
 みすみを庇いつつ、皆の援護の為にミノタウロスにしびれ粉撒いていた朔。
「みすみ! 離れないで!」
「大丈夫です! 朔さん! 私は……」
 グッとミノタウロスが仰け反り、口から炎を吐く。
「それくらい……!」
 朔が素早くかわす。
「きゃああ!?」
「しまった! みすみぃぃぃーーッ!!」
 朔が慌ててみすみに振り返る。
 そこには、エリヌースがみすみを炎から間一髪で助けていた。
「え、エリヌースさん……」
「って、みすみ! 何無茶してんのよ! 思わず、助けちゃったじゃない、ふん」
「エリヌースさん、ありがとうございます!」
 みすみが頭を下げると、エリヌースはみすみを指さす。
「勘違いしないで! みすみ! あんたを倒すのは、このあたしなんだからね!」
 朔が思わず胸を撫で下ろす。
「良かった……」
「クスクス……あたしが直してあげたのは無駄にならなかったようね」
 アテフェフが後方で微笑む。
「アテフェフ。私が壁に埋まってる永谷とミカエルを助けるから、治療を頼む!」
「ええ。いいわよ。でも……」
「でも?」
「朔にこれで貸しが二つね……クスクス。どういった事して貰おうかしら」
「……」
 朔はアテフェフの言葉を聞かなかった事にして、永谷達の救出に向かう。
「シーリングランス!!」
 リーブラがミノタウロスに攻撃する横を、セルシウスが走り抜けていく。
「セっさん! 待て! 何処へ行く気だ!!」
「一旦 退却をするぞ! このままでは全滅だ!」
 シリウスがセルシウスの腕を掴む。
「退却たって……この状況じゃアイツはきっとオレ達を追ってくるぜ?」
「そうだ! 迷宮内の狭い場所にでも連れ込み、そこで迎え撃つのだ!」
「シリウスさん、セルシウスさんの言う事も一理ありますわ」
 リーブラの言葉にシリウスは頷く。
「みんな、一時撤退だ! オレが殿をやる。早く逃げろ!!」
「なんやて!?」
 叫ぶ社が、一目散にダッシュするセルシウスの後ろ姿を見て、納得した。

× × ×


 ひと通り語ったセルシウスがハルの出したお茶をすする。彼の傍では、撮影スタッフ達から食事を恵んで貰った鳳明とヒラニィが欠食児童の如く、食事をしている。天樹だけは【物質化・非物質化】にて隠し持っていた食料でこっそり食べたりしていたので、ホワイトボードの横でウトウトと半眠り状態である。
「熱ッ!?」
「どうされましたか?」
「このお茶……熱すぎるぞ!」
 セルシウスがハルの用意したお茶に文句を言う。
 ハルは、「セルシウスさんへの対応なら任せて下さい! わたくしは貴賓への対応も心得ておりますからな!」と、ティータイムでセルシウスの機嫌を取ろうとしたが、若干空回り気味である。
 しかし、ハルはめげない。
「エリュシオンの方には、このお茶は熱かったのでございますね? 申し訳ございません。シャンバラでは熱いお茶を一気に飲むのが男の嗜みでございますから」
「む……そうであったか」
「嘘つけ……」
 未散がポツリと呟く。
「えーと……お話を聞く限り、こんな事してる場合じゃないと思うんですけど」
 衿栖が言うと、じっと黙って話を聞いていた統が椅子から立ち上がる。
「繋がった!」
「神楽さん?」
「ミノタウロスが来襲し、ツンデレーションがピンチになり、それを助けるヤンデレーション! そして友情パワーで一気にFinish!!」
 話を聞いていたレオンが統に握手を求める。
「統……いや統監督。その構想は完璧だ。これでスポンサーも喜ぶに違いない」
「いや、レオン。おまえの集めてくれた機材やスタッフが良かっただけだ」
「よせ……製作と監督は作品の完成までお互いを褒めない。鉄則だろう?」
 二人が朗らかに笑う中、ドドドドッという足音が聞こえてくる。
「オゥフ! 来たでゴザルよ!!」
「よし、撮影するぞ!! まず、ツンデレーションの大切なマスコットであるカイがミノタウロスにやられ、二人がどん底まで落ちるシーンからだ!」
「え!?」
 カイが今まで誰も見たことの無い驚愕の表情で、統を見る。