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シャンバラ一武闘大会

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シャンバラ一武闘大会
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リアクション

 

第七試合

 
 
『さあ、第七試合、先に武舞台に登場したのはエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)選手です』
「さて、どこまで勝ち上がれるか……。一戦一戦を大切にしようか」
 ゆっくりと、武舞台中央へとエヴァルト・マルトリッツが進み出ていく。
『どこの流派でしょうか、道着姿で、素足です。もちろん、武器は持っておりません。研ぎ澄まされた肉体、それこそがモンクの武器だと言わんばかりです。シンボルは、平たい石を紐で胸のあたりにくくりつけています。よく見ると罅が入っていて、今にも崩れそうです。これも、自信の表れでしょうか。さて、対するはセイル・ウィルテンバーグ(せいる・うぃるてんばーぐ)選手です。こちらは、エロちっちゃい機晶姫さんですが、自分よりも大きな機晶斬竜刀・神薙――えーっと、どう見てもとげとげの棍棒です――を持っています。シンボルは、頭につけた角の先端にくっつけた風船です』
「よろしくお願いします。やるからには全力ですよ」
 ニッコリと微笑みながら、セイル・ウィルテンバーグが挨拶した。
「了解した。俺のモットーは、女性に基本優しく、かつ失礼のないように、だ。ゆえに、全力で行く。戦士である以上、手加減は失礼だからな」
「結構です」
 エヴァルト・マルトリッツの言葉に、セイル・ウィルテンバーグがうなずいた。
『さあ、いよいよ試合開始です!』
「さあ、地獄のショーの始まりだぁ! 全力で、殺り合おうぜぇ! クククッ、アハハハハッ!!」
 試合前とは豹変したセイル・ウィルテンバーグが、神薙で薙ぎ払いをしかけていった。
 とっさに反応したエヴァルト・マルトリッツがジャンプしてそれを避ける。
「双鎚!」
 そのまま空中で回転して、踵落としでセイル・ウィルテンバーグの風船を狙った。
 間一髪、加速ブースターでセイル・ウィルテンバーグが攻撃を躱すが、着地したエヴァルト・マルトリッツが即座に後ろ蹴りでセイル・ウィルテンバーグを突いた。
「嵐!」
 そのまま回し蹴りを浴びせて、完全にセイル・ウィルテンバーグの体勢を崩す。
「止めだ、落巌!」
 転んだセイル・ウィルテンバーグめがけて、一気に間合いを詰めたエヴァルト・マルトリッツが掌底を叩き込もうとした。
「殺られるかよ!」
 セイル・ウィルテンバーグが、倒れたままの体勢で足を蹴りあげた。それを避けるために、エヴァルト・マルトリッツが一瞬止まる。そこへ、セイル・ウィルテンバーグが神薙の柄頭を突き出してエヴァルト・マルトリッツの胸を突いた。
 パリンと胸の石が割れ、突き飛ばされたエヴァルト・マルトリッツが少しよろけて後退った。
「ぐっ……。参った……。修行のやり直しだな、これは。またいつか、やろうか」
「おう、いつでも殺ってやるぜ」
 負けを認めるエヴァルト・マルトリッツに、少し違うニュアンスでセイル・ウィルテンバーグが答えた。
『第七試合、勝者セイル・ウィルテンバーグ選手です!』
 
 
第八試合

 
 
『第八試合は、ゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)選手の不戦勝となっております』
 
 
第九試合

 
 
『さあ、第九試合です』
 シャレード・ムーンが言ったとたん、爆音と共にスモークが噴きあがった。その中から、身体に何やらぬとっとした緑色の物をまとわりつかせた佐々木 八雲(ささき・やくも)が現れる。左目には大帝の目をつけ、腰に下げた金の卵をシンボルとしていた。
『佐々木八雲選手、ちょっと雰囲気が危険です。強化のしすぎでしょうか。さて、対するはビュリ・ピュリティア(びゅり・ぴゅりてぃあ)選手です』
「わーい、楽しむのだあ」
 ピョンピョンとスキップして武舞台に現れながら、ビュリ・ピュリティアが言った。
「危なくなったらさっさと逃げろ。僕は今、弟が知らない強化人間だ」
「うん、分かったのだ。全力でいくのだ」
 大帝の目でギロリと睨みつけながら言う佐々木八雲に、ビュリ・ピュリティアがのほほんと答える。
『さあ、試合開始です!』
「うおおおおお!!」
 雄叫びをあげると、佐々木八雲が一気に突っ込んでいく。
「熱いの熱いの……特大で行くのだあ!!」
 約束通り、極大のファイアストームをビュリ・ピュリティアが放った。
 すでに避けることなど考えられなくなっていた佐々木八雲が、真っ正面からそれに突っ込み、ちゅどーんと吹っ飛ばされた。リジェネレーションでなんとか凌ぐものの、熱で腰の卵があっけなく爆発する。
 ドサリと、佐々木八雲が武舞台の外に落ちて倒れた。
「ああ、やっとお前たちのところに……疲れたよ。文字通り真っ白だ……」
 大空を右目で見あげながら、佐々木八雲がつぶやいた。
『ええっと、真っ白と言うよりは真っ黒に焦げていますが……。勝者、ビュリ・ピュリティア選手です』
 
 
第十試合

 
 
『第十試合、ミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)選手、柳玄 氷藍(りゅうげん・ひょうらん)選手の登場です』
 名前を呼ばれたミスティ・シューティスが、シンボルとした赤いトーガを麗茶牧場のピヨ形のブローチで留めて現れた。
 反対側からは、青い袴の巫女服を着た柳玄氷藍が現れた。頭に生やした猫耳の間に、紙風船を載っけている。
さあ、ショーを始めましょう。このひとときを楽しみましょうね」
面倒だな、とっとと退場してもらうぞ。俺のほしいのは、最強の称号だ!」
「さあ、ゴングが鳴ります。試合開始です」
「うふっ。猫耳、可愛いでしょ」
 いきなり科を作った柳玄氷藍が、敵が自分に見とれた一瞬を突いて攻撃しようと密かに身構えた。
「そんな物。ピヨちゃんの方が可愛いわ。燃え尽きてくださいね
 まったく動じず、ミスティ・シューティスがファイアストームを柳玄氷藍にむかって放った。
「あっぶね。この可愛さが分かんねえなんて、どーゆー目してんだ」
 難とか攻撃を躱した柳玄氷藍が、呪符を取り出して稲妻を放つ。同時にミスティ・シューティスも天のいかづちを放った。絡み合うようにして二つの術が相互干渉して、二人の間に目映く落雷する。
 その隙を突いた柳玄氷藍が、一気に接近して則天去私をしかけた。ミスティ・シューティスのプティフルスティックの反撃を神楽舞で避けつつ、拳を叩き込む。
「うっ」
 軽く吹っ飛ばされて、ミスティ・シューティスが膝を突いた。
『おおっと、ミスティ・シューティス選手、なんとか耐えました。しかし、これはピンチか』
貫け、必殺! サイドワインダー」
 止めとばかりに柳玄氷藍が鬼払いの弓を引き絞った。
まだまだこれからよ。今よ!」
 ミスティ・シューティスが何やら指示を出す。だが次の瞬間、トーガが矢に貫かれて身体から引き剥がされていった。
「やったぜ」
 柳玄氷藍が勝ち誇る。
『第十試合、相討ちです!』
 そこへ、シャレード・ムーンの声が響き渡った。
「どうしてだよ」
 柳玄氷藍があわてて頭の風船を確認するが、いつの間にかなくなっている。
「いい戦いでしたわ」
 柳玄氷藍の紙風船を銜えて戻ってきたスカイフィッシュを前にして、ミスティ・シューティスが言った。
 
 
第十一試合

 
 
『第十一試合、瀬山 裕輝(せやま・ひろき)選手の登場です』
「え〜、どうも、最近『妬み隊』とかを勝手に結成させてもらいました〜やから、うん」
『ええと、宣伝はほどほどにお願いいたします。対するは、リン・ダージ(りん・だーじ)選手です』
「一撃でやっつけちゃうもんねー」
『やる気満々です。ちなみに、瀬山裕輝選手は頭に、リン・ダージ選手はお尻に紙風船をつけています。さあ、試合開始です』
「華麗なあたしの銃さばきを見よー」
 リン・ダージが太腿のホルスターから拳銃を抜き放った。
「しもた、遠距離は苦手やった」
 あわてて、瀬山裕輝がそれを避ける。ふわふわ気分で中空まで駆けあがると、そこからキックを浴びせかけた。
「きゃっ」
 あわてて後ろに下がって避けようとしたリン・ダージが、足を縺れさせて尻餅をつく。
 パン!
 リン・ダージの小さなお尻に潰されて、風船が破裂した。
「ああ、そんなあ!」
「いや、自分が弱かったんとちゃうで? ──自分がとるに足りん、背景すなわちモブやっただけやからな。別に気にせんでええで!」
 唖然とするリン・ダージに、追い打ちをかけるように瀬山裕輝が言い放った。
「えっと、本気で殺してい……あれー!」
 試合抜きで銃をぶっぱなそうとしたリン・ダージが奈落に落とされていく。
『勝者、瀬山裕輝選手です』