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終点、さばいぶ

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終点、さばいぶ

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chapter.14 四駅目 


 場面は戻り、電車内では。
 四駅目を出発したところで、残った12名それぞれのポイント残高が公表されていた。
「現在トップは茅野瀬衿栖で1400ポイント、ついで神代明日香、600ポイント。樹月刀真、500ポイント。ロドペンサ島洞窟の精まりー、400ポイント。ウーマ・ンボー、300ポイント。ベアトリーチェ・アイブリンガー、久世沙幸、日下部社200ポイント。黒崎天音、100ポイント。最下位は、高天原咲耶とクド・ストレイフで丁度0ポイント。なお終点までは、残り六駅」
 なお一応鉄道会社側でポイントはきちんと確認済みだが、もしかしたら鉄道会社のミスで本来とは違うポイントになっている者もいるかもしれない。
 そのあたりの運の要素も含め、楽しんでいただければ幸いとの会社側からのコメントも同時に流れていた。
 これらのアナウンスが乗客たちの心持ちにどう作用したかは分からない。が、最終決戦はもうすぐそこだった。
【残り 12名】

「公表されちゃった以上、たぶん真っ先に私が狙われるはず……それなら」
 トップを走る衿栖は、そう呟いて覚悟を決めた。
 残り6駅ほどで自分が1400ものポイントを持っていることを考えると、一番おいしい餌は自分なのだと彼女は理解していた。
 ならば、受けに回らずむしろ攻めよう。そう判断した。
「さあ皆、驚くといいわ!」
 言って、彼女が取り出したのは真っ赤に染まったカップ麺だった。衿栖はそれをなんと、豪快に、一気にかきこんだ。
「……っ!!!」
 途端に、喉に激痛が走る。しかしこれで良い。これで、当初の目的が達成されるのだ。
 衿栖は大きく口を開いた。
 そこからぼおっ、と炎が生まれる。それを間近で見た他の参加者は、「あいつ炎吐くのか!」と驚いた。
 驚いたけれど、それだけだった。
 火術やその他炎系のスキルがこれだけある昨今、炎を吐いただけで怯む者はここにいなかった。しかし構わない。彼女の目的はそもそもびびらせることではないのだ。
 そう、あくまでただ単純に「炎を吐く」というそれだけなのだから。
「か、からっ……でももう一回!」
 ぼお、と今度はさらに大きな炎。と、それを運悪く食らってしまったのは、マンボウのウーマだった。
「……っ!」
 マンボウは、こんがりいい具合に焼けた。
「……これしきで、やられるそれがしではない」
 一度は崩れ落ちそうになったウーマだったが、アキュートから受け継いだプロレス魂で浮き上がると、とっておきの技を放った。
「フオォォォッ!」
 雄叫びと同時に、ウーマは光った。それはもう、ものすごく光った。ちなみに光ったからといって、別に何かダメージとかそういうのは一切ない。
 ただウーマは、びっくりするくらい光った。
「からーい! からーーーい!!」
「フオォォォッ! フオォォォッ!」
 ひらすら炎を吐く衿栖と、ひたすら光るウーマ。周囲の者たちはそれを見て思った。
 こいつら、放っておけば勝手に自滅するんじゃ? と。
 そしてその予想は、割と図星だった。完全に自己満足の世界に入ったふたりの、炎と光の共演は早々に終了した。
 喉と鱗が疲れきってしまった衿栖とウーマは、がくりと床に倒れた。
 となれば、そこにある合計1700ものポイントは当然奪い合いとなる。なんならこれを手にした者が勝者になるくらいの数字だ。
 衿栖とウーマが気を失い、脱落となった瞬間、全員が一斉にイクカをもぎとろうと駆け寄った。
 衿栖、ウーマ脱落。
【残り 10名】

「兄貴ィ! 分カッタヨ!! 兄貴ノ覚悟ガ今言葉ジャナク心デ分カッタッ!!」
 奪い合いの輪に真っ先に加わったのは、意外にもまりーだった。あのママっ子まりーが、いつも怯えていたまりーが、我先にと釣り竿でイクカを強奪しようとしている。
 きっと、脱落間際の総司の意志に感化されたに違いない。
 まりーの釣り竿が、イクカをひっかけた。
「今ダッ!!」
 他の者が素手で掴みに行こうとした中、ひとり釣り竿を使ったというそのリーチの差が生きた。まりーは、他の誰よりも早く二枚のイクカを手元に引き寄せた。
「ヤッタ! 取ッタドッ!!」
 興奮のあまりちょっと変な語尾になりつつ、まりーが言う。しかし、まりーはまだ詰めが甘かった。
 バスケットボールでは、リバウンドを取った直後が一番スティールされやすいという。この戦いも、同じである。
「油断しちゃダメよ」
「エッ!? アッ!!」
 ふっとまりーの背後に忍び寄った影。それは、女スリ天音だった。芸術的な手癖の悪さで、天音はあっさりまりーが引き寄せたイクカをスった。
「カ、返スノデスッ!!」
 まりーと天音が取っ組み合いを始める……かに思われたが、そこに思わぬ横槍が入った。
 ギイ、と車輪の擦れる音。
 ――まさか。
 嫌な予感を覚えつつ、その場にいた誰もがその方向を振り返った。
「お前は!」
 誰かが声を上げた。そこにいたのは、燃え盛る車両の中置き去りにされたはずの端義だった。
「ぼ、ぼくは女の人をまだ見尽くしてないんだな。たとえこの体が灰になっても、女の人を見るんだな」
 ところどころ焼け焦げながら、端義は車椅子を前に進める。一同は、心から気持ち悪いと思った。
「そ、そこのおねえさん、もっと見たいんだな」
 言って、端義は一触即発状態だったまりーと天音に接近する。釣り竿を構えるまりーだったが、そんな竿では端義の熱い思いは止められない。
「さ、竿が邪魔なんだな!」
 端義がものすごい速度で車椅子を走らせると、まりーが端義に向けた釣り竿はバシンと弾かれ、まりーの手元を離れた。その隙に、端義はよりそそられた天音へと接近する。
 端義の手が、天音の腰に触れた。
「ほ、細いんだな。ぼくはもっと肉付きの良い子が好みなんだな」
 触っておいて失礼なことを抜かす端義。しかも女スリのキャラのせいで忘れてるかもしれないが、天音は立派な男性である。
 つまり今端義は、とんでもないことをしでかしているのだ。
「い、嫌……やめてください」
 今すぐ正体を明かしても良かったが、一旦上げてから落とそうと、天音は嫌がる素振りをしてみせた。するとたちまち端義は興奮した。
「そ、その仕草がたまらないんだな! もっと嫌がってほしいんだな!!」
 調子に乗った端義が、腰からお尻に腕をスライドさせた時だった。
 がし、と手首をなにかに拘束された。それは、天音がクジで当てたパンストだった。
 もう一度説明するが、これは決して気持ち悪い意味で家にあったのではなく、至極真っ当な理由の上にあるものだから別に犯罪とかそういうんじゃないのだ。
「い、いたいんだな……」
「チカンは、犯罪なんだよね」
 散々窃盗罪を犯しておきながら、平然と天音が言う。そこから端義は、女性の敵ということで残っていた女性陣にボコボコにされた。
 が、ただひとり。彼に手を出さなかった女性がいた。
 それは、ベアトリーチェだ。彼女は以前、まだ端義が正気だった頃、「魅力的な女性になるには」というようなアドバイスを彼から受けた過去があった。
 セクハラもするし犯罪者ではあるけれど、それでも自分が変わるきっかけをくれた彼に、手を加えることは出来なかった。
「……端義さん、大丈夫ですか!!」
 窓から投げ捨てられる端義を見た時、ベアトリーチェの中で何か悲しい気持ちが芽生えた。元々優しい性格ということもあって、こんな風になってしまった端義でも、見捨てることは出来なかったのだろう。
 気がつけばベアトリーチェは、端義の後を追い、自らも窓から飛び降りていた。
「今介抱しますから!」
 そんな声を、車内に置き去りにして。
 ベアトリーチェ、脱落。ついでに端義も脱落。
【残り 9名】

「ソウイエバ、サッキ盗マレタイクカガ、ソノママデシタ」
「あら、何のこと?」
 端義の乱入で一時うやむやになりかけたものの、依然イクカ争奪戦は続いていた。だが、唯一の武器を手放してしまったまりーの命は、もはや風前の灯だった。
「こういう時は、ふたりまとめてやっつけてしまえばいいんですよ〜」
 そんなまりー、そして天音のところに、明日香が召喚獣を従えて近づいてくる。あの、恐怖のチンピラ召喚獣たちだ。
「ア、兄貴ィ……コレハヤバイデスネ」
 まりーは、明らかにガラが悪いこの召喚獣たちを見て、死期を悟った。武器なしでこれは、耐えられないと。
 さっきまでの勇ましい気持ちはどこへやら、まりーは一目散に逃げ出した。
 残された天音、そして明日香。この両名の争いになるかと思いきや、なんとそこに社が割って入った。
「まあまあ、こんなにかわいいお嬢さんがせっかく集まっとるんや、そんな殺気立つのはナシやナシ!」
 笑顔で和平を説く社だったが、その本心はどっちの子でもいいから一発いきたいという下心アリアリなものだった。
 得てして、男性のこういった心情は見抜かれる。社は、あっという間に包囲された。現状を理解していないのは、社本人だけである。
「お、なんやふたりとも、分かってくれたみたいやな! そんなじっと見つめなくても、言いたいことは分かってるで!」
 見つめているのではない。睨んでいるのだ。
 が、社は浮かれ気分で、すっかりお決まりになった口説き文句を披露した。
「さあ、俺の胸に飛び込んできてええで! みんな、俺が温めたごふっ!?」
  召喚獣のボディブローが、社のいいとこに入った。思わず膝から落ちる社。しかし彼は、このままでは終われない。せめて、ちゃんと言い切らないと。
 その意味不明な決意が、彼のモチベーションをマックスまで上げた。
 上から、左右から、後ろから。次々と召喚獣たちの攻撃を食らう社だったが、何度倒れても彼は起き上がった。今の彼は、精神力だけで立っている。
「こ、怖いです〜……」
 その異様な気迫に、明日香は気圧され、後ずさった。そして社は、召喚獣のリンチをかいくぐり、明日香の元まで辿り着いた。
 目を腫らし鼻血を垂らしながらそれでも彼は、アバンチュールを味わってみたい、ただそれだけのために口説き文句を言い続ける。
「そんなに温もりを遠ざけようとせんでもええんやで。俺が温めたるから」
 渾身の気持ち悪さが炸裂した。これには明日香も血の気が引き、「これ以上この空間にいれないです」とリタイアを選んだのだった。同時に、社は気絶した。
 まりー、明日香、社、脱落。
【残り 6名】

 一方で、沙幸と咲耶は、パンツ一丁のクドとカメラを携えた刀真に追われていた。沙幸は全身白濁液塗れ、咲耶は生卵で大事な部分を隠しているだけの過激なファッションとくればこのふたりの餌食となるいのは当然だろう。
「やっと出会えた破廉恥モデル! これを撮らずして、他に撮る物はありません!」
 刀真は、執拗にふたりを追い回し、ちょいちょいベストアングルを探ろうとしていた。月夜が脱落間際に言った言葉など、もう完全に頭からは抜けていた。
 今の刀真の頭にあるもの、それは「いかにクオリティの高い動画を撮るか」ということだけだった。
「しかしこのままではらちがあきませんね……こうなったら仕方ない」
 刀真は、隠し持っていたブレードフォンを取り出すと、沙幸の衣服に狙いを定めた。
「上着か、それともベルトか……下着の紐でもいいでしょう。さあ、どこでも斬る準備はできています!」
「できています、じゃないよもうっ!!」
 あまりに自由な刀真の振る舞いに、さすがに沙幸も頭にきたらしい。
「いたいけな少女を襲うなんて、いい度胸なんだもん。私だって、やる時はやるんだよ!」
 言って沙幸は、こっそり発動させていた忍法呪い影を刀真の背後に移動させた。黒い影が、刀真を羽交い絞めにする。
「ぐっ……これはっ……!?」
「ふふーん、これは罰だもん!」
 形勢逆転、とばかりの笑みを浮かべると、沙幸は刀真の急所に鈍い一撃を見舞った。薄れ行く意識の中、刀真の脳裏に今さらになって浮かぶのは、月夜の言葉だった。
「ちゃんと真面目に……撮影すれば……よかった……」
 そして刀真は、失神した。
「よーし、この調子でもうひとりも倒しちゃうんだもん!」
 刀真を撃退したことが自信に繋がったのか、沙幸は続いてクドを追い払おうとした。そのクドは、生卵衣装の咲耶に、何やら語りかけていた。
「お兄さんたち、なんだか似ていませんか? この肌の見せ具合とか。いやあ、お兄さんも今度生卵パンツ試してみたいですよ!」
「た、助けてくださいっ……! この人、変なんです!!」
「そうです、私が変なお兄さんですよ」
「アレは……なんだか末期なにおいがするよっ」
 これはいち早く止めないとまずいと、沙幸がふたりの間に割って入った。
「こ、これはまた刺激的な格好で……!」
 白濁液沙幸を見て、興奮を抑えきれないクド。となれば当然股間だって相応の状態になっているはず。
 沙幸は刀真を仕留めた時と同じように、呪い影でクドを退治しようとした。彼の背後に、沙幸の影が襲いかかる。
「こ、これはなんですか!?」
 動きを封じられたクドはジタバタするが、もう遅い。沙幸は、全力で彼の股間を強打した。が、しかし。
 ご存知彼のパンツは、デュアルパンツなのだ。これしきの殴打ではびくともしない。それがデュアルだ。
「ふふふ、お兄さんのパンツを甘く見ましたね?」
「うう……それなら、こうだもん!」
 打撃が効かないならば、奥の手だ。沙幸は、クジで当てたサラダ油をクドにぶっかけた。
「っ!」
「どう? ツルツルして思うように動けないでしょう? これ以上変なことしようとしたら、火遁の術で燃やしちゃうからね!」
 びしっと言い放つ沙幸だったが、よくよくクドを見ると、ちょっと生理的にかなり厳しい感じになっていた。
 パンツ一丁で、全身オイリーなぬめぬめ状態。バラエティとかでたまに見るあの感じに近い。それでいて、彼の中身である。
「これは……デュアルパンツに油分が加えられ、よりバリアとしての機能が強化されましたね! ありがとう! ありがとうございます!!」
「うっ、ちょっ、こないでっ」
「ありがとうございます! ありがとうございますっ!!」
 この格好で丁寧にお礼をしながら迫ってくる男性を相手に、若干17歳の少女が戦えるだろうか。答えは、ノーである。
 ちなみに咲耶も、「あの人と似てるって、なんだかとてもショックです……」とおおいにへこみ、戦う希望を失った。
 刀真、沙幸、咲耶、無念の脱落。
【残り 3名】

 次々と戦闘不能、ギブアップが増えていき、あっという間に車内にはふたりしかいなくなった。
「あれ……ふたり?」
 と、ここでそのうちのひとり、天音が疑問を抱く。
「さっきから流れているアナウンスだとあと三人のはずだけれど……」
 何かがおかしい、と思考を働かせる天音だったが、相対するもうひとり、クドは細かいことは気にしていないようだった。
「まあ、そんなことはどうでもいいじゃないですか! 目の前にこんな綺麗なお姉さんがいて、お兄さんはパンツをはいている! これって、素晴らしいことじゃないですか!」
「……ちょっと何言っているか分からないけれど、危険な子ね」
 車内に残されたすべてのイクカを賭け、ふたりの最後の戦いが始まった。
 と言っても、クドが一方的に「叩いてください」「罵ってください」と言っているだけで、天音はどう対応すべきか決めあぐねていた。
「お願いです! そろそろそういうのがほしくなってきたんですよお兄さん!」
「いや、知らないけど……」
 まあでもそこまでお望みなら仕方ない、と天音はクドの裸体をパンストで叩いた。
「ああっ! それです!! そう!!!」
「……」
 何度か叩いているうち、天音自身、これは何か違うな、と感じ始めていた。そこで天音は、そろそろ女装も飽きてきたので、正体を明かすことにした。
「というか、お姉さんじゃないんだけどね」
「……えっ?」
 突然正体を暴露し、次々と女装グッズを取り払っていく女スリ天音。その言葉に、クドは最初耳を疑った。そしてその下半身にぶら下がったイクカが、ずず、とずり下がっていく。
 これは、戦意喪失による勝利かな。
 天音がそう思った時だった。クドは、ぶつぶつと言葉を呟きだした。
「いやでも考えるんです、紛れもなく、あの綺麗なお姉さんはいたんです……!」
 一種の自己催眠だろうか。やがて彼は、何かを決心したように、キッと顔を上げた。下の方も、ちゃんと上を向いていた。
「お兄さん、そういうのもたぶん大丈夫です! 一生懸命頑張ります!!」
 なんということだろうか。まさかクドは、そっちも開拓してしまうのだろうか。
「いや、頑張らなくていいと思うけど」
 天音はもうこれ以上は付き合いきれないと、股間のイクカを神速で掠めとって決着をつけようとする。が、触れた布の感触が、妙に分厚い。
「……?」
 真性クドの股間は、これまでとは明らかに違っていた。
 そう、いつの間にかクドは、パンツをさらに重ねばきしていたのだ!
 実は彼は、リクトと対戦した時、イクカやDVDの他に、ちゃっかり下着も戦利品として手に入れていたのだ。さらに先程刀真が敗れ去った時も、共に戦った仲間の形見、と彼のパンツを拝借していた。
 つまり今のクドは、パンツ四枚ばき。
「ふふ……クアッドパンツとでも名付けましょうか。もうこうなっては、誰もお兄さんを止められません」
 具体的にパンツを四枚はくことの何が無敵なのか、それは分からない。きっと普通にぶら下がってるイクカも取れるし、なんなら逆に動きづらい可能性だってある。
 しかし、クアッドパンツである。クアッド。なんと心強い響きだろうか。
 クアッドの響きだけで、強くなれる気がしたのだ。
 その強さは、天音に「スリはやめよう」と思わせるには充分だった。
「さあ、もう争いは止めましょう。一緒に行きましょう! 終点へ。そして、そこからまた始まるのです!」
「……」
 クドのノリに割と早い段階でついていけなくなっていた天音だったが、彼は車内に残っているイクカを集めている段階で、あることに気づいていた。
 今現在五駅目に向かっている途中で、先程のアナウンスによると全部で十駅。ということは、単純計算であとひとりあたり1800ポイントがあれば、終点まで乗れる計算になる。
 そして車内にあったイクカのトータルは、3900ポイント。ここからベアトリーチェがイクカを持ったまま飛び出したため、差し引きで3700ポイント。
 偶然にも、争わずともふたり分のポイントがあったのだ。
「まぁ、これでいいかな」
 天音は息をひとつ吐いて、ヒールで痛んだ足を撫でるのだった。