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秋のライブフェスタ2022

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秋のライブフェスタ2022

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 そして三組目。
 聞いて驚け、見て和め! われら、泣く子もぐもぐけもみみコンビ! ていてい! いこにゃ! 『月見うどん!!』
 左右に交差するようにジャンプしながら二人で口上を述べ、そして最後はピシッとポーズを決める。うさみみとねこみみコンビの月見うどん。第二回戦の中では唯一の長身であるティーと並ぶとイコナはとても小さく見える。さらにティーがうさみみをつけているせいで、より身長差があるように思えた。

「それじゃあ聞いてください! 『うさとねこから〜遥かなる涅槃より〜』!」

 音楽に合わせて二人は耳やしっぽをぴょこぴょこと揺らしながら歌い出す。


 ――にゃ〜にゃ〜 にゃにゃにゃにゃにゃ〜にゃ〜
 にゃ〜にゃ〜 にゃにゃにゃにゃにゃ〜


 ――う〜さ〜 うさうさう〜さ〜 うささ うさうささ〜


 交互に出てくる歌詞は、『にゃ〜』と『うさ〜』のみで構成されていて、かつメロディもとても覚えやすい。またティーはハープを演奏しつつ、イコナは間奏部分でフルートを吹く。緊張しているのだろう、しっぽが時々不自然に揺れる。そんな二人に癒されて気付けば客席からは『にゃ〜』、『うさ〜』とあちこちから声が上がり始めた。
 客席の鉄心も近くで上がる鳴き声にふと視線を向けた。
 そこにはよく知った顔の連中が固まって座っていた。
 またお前らかと鉄心は溜息をつきたくなった。
 月見うどんのファンらしいのだが、そもそもアサシンの連中がこうも公共の場に平気で顔を出して遊びに来るものなのかと。
 しかし、本気で応援している彼らを見ていて、鉄心は気がついた。
 殺伐とした裏の世界を生き抜いてきた人たちが、彼女たちのパフォーマンスで和みまくって見る影もなくゆるゆるになっている。常に張りつめていた糸がだらしなく垂れ下がり絡まりそうになっている。
 でもそんなことがあったっていいじゃないか。
 生き物だもの、と言葉を飲み込んで、鉄心はティーとイコナに頑張りなさいとテレパシーを送るのだった。

「今回もあっという間でしたね」
「とっても可愛らしい三組のステージでした。それではそろそろ投票タイムに移りたいと思います」

 今回の投票は一組ずつ。応援したい、アリだと思ったら赤のボタンを押す。

「まずは可愛らしいにんじん衣装でステージを駆け回ってくれた、ラブ・リトルさんです。それでは皆様、どうぞ!」

 スクリーンが切り替わり、グラフがぐんぐん伸びていく。仰々しい効果音とともに大きく数値が画面に表示された。

「でました! 暫定二位です!」
「続いてはカッコイイダンスで我々を魅了してくれた、ミーナ・リンドバーグさん!」

 名前を呼ばれてドキドキしながら一歩前に出てくる。卜部とウズミにマイクを向けられたが、何を質問されたのかよく覚えていないほどに、パフォーマンスが終わってからのステージというものは緊張した。

「かっこよかったですね〜。まるで男の子のダンスみたいに力強くキレのいい動きでした!」
「お、男の娘?!」

 ニコニコとした卜部の言葉に、緊張しきったミーナの頭は『男の娘』という単語しか聞こえなかった。

「み、ミーナぺったんこだけど男の娘じゃないよっ? ぺったんこだけど、れっきとした女の子であって、男の娘とかじゃ……」

 そこまで言って、自分でないと何度も連呼していたことに軽くショックを受けて黙る。

「ぺったんこでも可愛いですし、きっとそういうのが好きな方に需要もあることでしょう!」
「ぺったんこいうな!」

 斜めからばっさり切ることで有名なウズミキャスター。ようやくここに来て調子が出てきたようだ。
 それにそんなミーナを見て、先ほどよりも客席からミーナに向ける声が増える。


 ――俺は大丈夫だぞー!
 ――ミーナちゃああああん!!
 ――ステータスだぞぉぉぉぉぉ!!



「うぅ……確かに、ないけど……違うもん……」

 様々な声援(?)が飛ぶ中で、ミーナの投票が始まった。

「結果は……83点! ラブ・リトルさんを抜きました! ミーナ・リンドバーグさんが暫定二位! ここで残念ながらラブさんは三位へ自動降格となります」

 今にも泣き出しそうに潤んでいたミーナの目は、今はキラキラと驚きで輝いている。

「さあ、ここで最後の組、月見うどんの投票へと移りましょう! 暫定一位のラブゲイザーfeat.千尋の点数は88点。これを越えられるのでしょうか、皆様の判定は……?!」

 越えろ……!
 鉄心はボタンを持つ手にぎゅっと力を込める。

 ピピピと電子の音とともに数値が上昇していく。

「月見うどんの点数は85点! ラブさん、ミーナさんを抜いて暫定二位です!」

 ほっと胸を撫で下ろし、手を振りながら退場する三組を見つめる鉄心。
 最初は近くの席のアサシン集団を見てうんざりしていたが、本気で月見うどんを応援している彼らを見て、一緒に混ざって応援した。
 やはりアイドル――いや、癒しは必要だ。対立していたり、いがみ合っていたり。そういうものも一つになって何かを応援したりすることが出来る。音楽に国境はないというように、アイドルという偶像崇拝にも国境はないのかもしれない。

「可愛らしい三組のパフォーマンスでしたね〜」
「はい。とってもつるぺ……小さくて可愛らしい子を見れて私も嬉しい限りです」

 段々とぶっちゃけトークを繰り広げ出すウズミを卜部は上手く引っ張っているようだ。
 時折司会同士の面白い話を挟みながら次の出演者の準備をするので、次のアイドルが出てくるまで退屈する時間もない。バラエティに富んだ会話の後はしっかりとしたパフォーマンスが楽しめる。

「続いてのバトルは、皆様お待ちかね! コスプレ対決!」