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【マスター合同シナリオ】百合園女学院合同学園祭!

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【マスター合同シナリオ】百合園女学院合同学園祭!
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リアクション


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 綺麗な服を纏った、小学生くらいの女の子が臨時保健室に入ってきた。
 保護者と思われる男性が一緒だ。
「あっ、レイちゃん!」
 その子を見るなり、手伝いに訪れていたヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)が駆け寄る。
「元気してたですか!」
「ヴァーナーおねぇちゃん! ボク、元気だよ」
 レイちゃんと呼ばれたその子――女装したレイル・ヴァイシャリーも、ヴァーナーの元に駆け寄って、2人はぎゅっとハグしあった。
「心配してたんですよ〜。元気なら良かったです」
「うん、元気は今出たんだよ、ヴァーナーおねぇちゃんと会ったから!」
「そうですか……それなら、あとでお祭りに遊びに行きましょうです〜。ずっと元気でいられるように」
 言って、ヴァーナーは『おまじない』とレイルのほっぺにチューをした。
「へへへっ、ありがと。お返し!」
「目立つことをしたらダメですよ」
 お返しのキスをする前に、レイルは付き添っていた護衛の男性に止められてしまう。
「えへへっ、それじゃ続きはベッドの中でね、おねぇちゃん」
 レイルがヴァーナーにウィンクをする。
 お休みのキスのことを言っているようだった。
「レイちゃん、百合園の寮に泊まっていければいいですねー。というか、百合園に入学できたらいいのに〜」
「うん、もうちょっと強くなって、自分のこと自分で護れるようになったら、学校に通うことも出来るんだと、思う……」
 と、言いながら、レイルはちらりとミケーレの方を見た。
 視線に気付いたミケーレは、レイルを見てくすりと軽く笑みを浮かべ、頷いた。
「ヴァーナー、次のお客様、いらしてますわ」
 茶菓子を持って、ヴァーナーのパートナーのセツカ・グラフトン(せつか・ぐらふとん)が現れる。
「はい、すみませんです! どうかしましたですか?」
 パタパタ、ヴァーナーが客の元に駆け寄った。
「どうかした? ボク達でよければ、話聞くよ!」
 レイルも一緒に、客――10歳くらいの百合園生に近づいて問いかける。
 ヴァーナーは、カウンセリング室で相談役を担当していた。
「こちらへどうぞ。お菓子やジュースを飲みながら、お話ししましょうね」
 セツカが応接セットの方へと、子供を招く。
「沢山おはなしして、おいしいものを食べると、元気になれるですよ」
「行こう行こう〜」
 ヴァーナーとレイルが悩みを抱えた少女の手を引いて、ソファーに座らせて。
 向かいではなく、左右に座って、一緒にお菓子を食べながら話を聞いていく。
 ニコニコ笑顔を浮かべながら、手を握って応援したり。
 一緒に楽しい時間を過ごして、自然に心を和らげていく。

 話を終えた後、ヴァーナーはレイルと一緒にテーブルの上を片付けていた。
「あ、呼雪おにいちゃんです!」
 ヴァーナーは、続いて訪れた人を知ると、急いで駆け寄った。
「いらっしゃいです〜」
 大好きな早川 呼雪(はやかわ・こゆき)を、ハグでお出迎え。
「アレナちゃんもいらしゃいです〜」
 一緒に訪れた、アレナ・ミセファヌス(あれな・みせふぁぬす)も、ハグで出迎えた。
「頑張っているみたいだな」
「こんにちは、ヴァーナーさん」
 呼雪はヴァーナーを撫でて。アレナは少し驚きながら、ヴァーナーの背をぽんぽんと叩いて、返事をした。
「ヴァーナー、皆で休憩の時にでも食べてくれ」
 ユニコルノ・ディセッテ(ゆにこるの・でぃせって)が選んだ焼き菓子を、呼雪はヴァーナーに差し出す。
「ありがとです。レイちゃんと皆でいただくです」
 ヴァーナーはとっても嬉しそうな笑顔で、お菓子を受け取った。
「あっちのソファーが柔らかくてお勧めだよ。お昼寝していってもいいよー!」
 レイルが先ほどまで使っていたソファーを指差す。
「ありがとう。使わせてもらう」
 呼雪はレイルに礼を言うと、アレナとパートナー達を伴って、ソファーの方へと向かった。
「荷物ここに置かせてもらうよ。呼雪、何か飲む? 顔色あまり良くないなぁ」
 心配そうに、ヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)が呼雪の顔を覗きこむ。
「人が多かったからな。けど、もう大丈夫だ」
 呼雪はヘルに微笑んでみせた。
「お前こそ疲れてるだろ。荷物、全て任せてしまったからな」
「いや、全然〜」
 ヘルは明るく言って、呼雪の隣に腰かけた。
「どうぞ。ゆっくりしていってください。カウンセリングやマッサージも行っていますわよ」
 セツカが、紅茶と茶菓子をテーブルに置く。
「ありがとう。……カウンセリングか」
 ティーカップを手に、呼雪はカウンセリングコーナーにいる、錦織百合子に目を留めた。
 彼女は、初代白百合団の団長だ。優子とアレナも信頼を寄せている相手である。
「……俺は特に必要ないけれど、アレナは体験してみると良いかも知れないな」
「えっ?」
 向かいに腰かけていたアレナが、呼雪に顔を向けた。
「悩みや不安に感じている事を聞いて貰ったら、気持ちが軽くなるかも知れないだろう?」
 呼雪は学園際をアレナと一緒に見て回り、色々と話をしていた。
 彼女が最近、ゼスタに誘われて温泉に行ったことなども。
 そしてまだ、アレナは悩みを抱えつつ、日々を送っていることも、呼雪は解っている。
「んー……」
 ヘルは次のカウンセリングの準備をしている百合子とミケーレに目を向けた。
(白百合団の初代団長と、ヴァイシャリー家の子息かー)
 ちらりと、呼雪の方を見ると、呼雪は大丈夫だというように、目で返してきた。
「ね、2人はどういう経緯で出会って、契約したの?」
 ヘルは軽い口調で、百合子とミケーレに声をかけた。
 百合子とミケーレは顔を合せた後。
 ミケーレが口を開く。
「親の紹介。彼女は申し分ないパートナーだよ」
「そっか、お似合いだよね。で、今は何をしてるの? 一緒に暮らしてるのかな〜」
「今は、シャンバラ宮殿で働かせていただいています。パラミタの学校の非常勤講師も務めていますわ。ミケーレさんと一緒に暮らしてはいません」
 今度は百合子がそう答えた。
「俺は地球にいることが多いからね」
 とだけ、ミケーレは言った。
「あの、カウンセリングとは、どのように行うものなのでしょうか」
 ユニコルノはソファーに座らずに、百合子に近づいて問いかけた。
「隣の部屋で、リラックスしてゆっくりお話しを伺います」
「様子を見学させていただくことは出来ますか……?」
「受けられる方がそれを望む場合に限ります」
 ユニコルノはアレナの方に目を向ける。
「アレナちゃん、悩みがあるのなら、教えてください〜っ」
 ヴァーナーがしゃがんで、アレナに問いかける。
「カウンセリング行きますか? それとも、ここでボクに話してくれますか?」
 ヴァーナーはアレナがいつも心から笑えていないような気がして。
 彼女のことをずっと気にかけていた。
「あの……大丈夫、です」
 アレナは戸惑いつつ、小さな声で答えた。
「不安、ですか? 私も傍にいますよ」
 ユニコルノもアレナに近づいて、手を握る。
「お話ししても、治らないので……いいんです」
 その言葉から、呼雪も、ヴァーナーも、ユニコルノも、アレナが光条兵器を取り出せなくなったことについて、やはり悩んでいるのだと、気づく。
「取り戻せるようにがんばりましょう? えっと、例えば……呼雪おにいちゃん達の神子の波動は封印を解く力があるみたいですし、試してみたらいいかもです! あと、剣の花嫁の事なら、ゲルバッキーおじちゃんに聞いてみるとか、色々がんばれますよ〜っ」
 ヴァーナーがそう言うと、アレナは僅かに微笑んだ。
「でも、優子さんは……気にしてないみたいで……」
 だけれどアレナの表情は、直ぐに再び沈んでいく。
 彼女の悩みは、剣が取り出せないことそのものというより、優子の役に立てないこと、優子のパートナーとしての役割を果たしきれないこと……そういったこと、つまり主に『神楽崎優子』なのだ。
「レイラン先輩を頼ってみたらどう?」
 そう声をかけてきたのは――百合子だった。
「優子ちゃんのパートナー同士だもの、あなたの願いをより良い形で叶えようとしてくれるんじゃないかな。……リスクもあるかもしれないけれど、そこはほら、お友達が一緒なら、大丈夫よ」
 百合子はそう微笑むと、資料を持って立ち上がった。
「次のカウンセリングに行ってくるわね。勿論私やティセラさんを頼ってくれてもいいのよ。いつでも、宮殿で声をかけてちょうだい」
「ん?」
 疑問そうな声を上げたのは、ヘルだった。
「レイラン先輩って、ゼスタのことだよね? 君と彼はどういう関係?」
「ゼスタさんは、大学の先輩です。学部は別でしたが、養護学のゼミでご一緒しましたので」
 微笑んで礼をすると、百合子はミケーレと一緒に隣室へと向かって行った。
「……そういえば、先日の温泉はいかがでしたか? 宿でゼスタさんとお会いになったのですよね」
 ユニコルノが、アレナに尋ねた。
「温泉……楽しかったです。ゼスタさん……いい人、みたいです。そうかも、しれないです。助けてくれるかもしれない、です。けれど……なんだか変な気持ちになるので……緊張、するので、1人で話は出来ないです」
「大丈夫です、付き添いが必要な時には、いつでも呼んでください」
 ユニコルノの言葉に、アレナはこくりと首を縦に振った。
「お茶のお代わり、ありますわよ。疲れのとれるハーブティをお持ちしますわ」
 セツカが空いたカップを片付けて、給湯室へ向かっていく。
「ボクは、オレンジジュースがいい!」
 そう言ったのは、レイルだった。
 いつの間にかちゃっかりソファーに腰かけて、茶菓子をぱくぱく食べている。
「レイちゃん、食事前ですよね? 食べ過ぎちゃだめですよー」
 ヴァーナーはそう言って、レイルとアレナの間に腰かけニコニコ笑みを浮かべる。
「楽しかった温泉の話、良かったらもう少し聞かせてもらえるか?」
 呼雪が優しくアレナに問いかける。
 アレナはこくりと頷いて、楽しかった音楽祭と、温泉のことを――そして、ゼスタとの会話も、皆に話したのだった。