リアクション
第3ターン 『さあ、トップは依然ローゼンクライネだ。本当に凄い。いっこうにスピードが衰えません。ぶっちぎりです。それに続くのはミニキメラです。ローゼンクライネに負けないスピードで追い上げていきます』 「よしっ、やっぱり、ミニキメラの底力は相当の物だ」 罠を無視して突っ走るミニキメラに、これならいけると、ローグ・キャストが拳に力を込めました。二つの罠など無視して進んで行きます。 「なあんでえ? 美味しいのに……」 ゴーレムならともかく、食事をするはずのミニキメラに無視されて、イコナ・ユア・クックブックが呆然とします。 「スルーされたの!?」 なんとか拾ってきたヴァルベリト・オブシディアンをコース上に転がしたダイア・セレスタイトが唸りました。 まあ、ヴァルベリト・オブシディアンが無視されたのは当然かもしれません。むしろ、ミニキメラに食べられなかったのが幸いです。でも、ダイア・セレスタイトとしては、ヴァルベリト・オブシディアンは役立たずです。 『3位は、フォルテシモです。応援が聞いたのか、ペースを取り戻したようです。一気にイコナ・ユア・クックブックさんに近づきます』 「フォルテシモさん、パイ食べないかなあ」 「姫月は、何を期待してるんだ?」 仁科姫月のつぶやきを聞いて、思わず成田樹彦がツッコミました。 「だって、ゴーレムが、もきゅもきゅとパンプキンパイを食べたら、可愛いよね?」 「いや、食べないと思うぞ」 先行するローゼンクライネがパイを無視したのを思い出して、成田樹彦が言いました。 「逃しはしませんわ」 まだまだトップは狙えると、エリシア・ボックがドヤ顔で言いました。 『4位には、一気にクトゥグァ・イタクァが追い上げてきました。凄い頑張りです』 「クトゥグァとイタクァ、凄い」 「やれば出来るではないか。やはり、三味線にはなりたくはないようじゃな」 驚き感心する秋月葵の横でフォン・ユンツト著『無銘祭祀書』が満足そうにしきりにうなずきました。 『小ババ様、順位は落としましたが、堅実に走り続けます。最下位は、相変わらずはんぺんです』 「お、遅い……」 さすがに、応援していた南天葛の顔もちょっと引きつります。まさか、このままドベなのでしょうか。 第4ターン 『おや、トップに異変があったようです。ローゼンクライネ、突然立ち止まった。どうした。ガス欠か? それとも、今頃になってコハク・ソーロッドさんを悩殺したことに気づいたのか!? その間に、ミニキメラが一気に追いつく。さあ、これで、レースの行方が分からなくなって参りました。 さあ、3位はフォルテシモがキープ』 「よしよし」 安定してきた走りに、エリシア・ボックが満足気にうなずきます。けれども、油断大敵です。 『だが、しかし、クトゥグァ・イタクァと小ババ様が追いついてきた。これは凄い。両者ならんでフォルテシモに迫ります』 「なんですと……」 エリシア・ボックが、斜に小ババ様たちを帽子の下から睨みつけました。ちょっと怖いです。 「ああ、また美味しいパイを無視して……。どうしてなのですわ」 またも、罠を無視されて、イコナ・ユア・クックブックが地団駄を踏みました。ちゃんと、コースの脇には、ストックもたくさん積みあげてあるというのに……。 「クトゥグァとイタクァは賢いわねえ」 「あたりまえじゃ。飼い主が賢いからのう。似たのじゃ」 感心する秋月葵に、フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』が自慢しました。 当然のように、デッドヒートを繰り広げる小ババ様とクトゥグァ・イタクァは、ヴァルベリト・オブシディアンを無視して行きました。哀れです。 『ラストは、依然はんぺんです。これはもう、マイペースだ。独自の世界に入っています』 |
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