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レターズ・オブ・バレンタイン

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レターズ・オブ・バレンタイン
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45)

リネン・エルフト(りねん・えるふと)は、
フリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)にお手紙を出し、
「フリューネの家に遊びに行っていい?」と思い切って聞いてみた。
結果として、今、リネンは、
フリューネの家である、ルミナスヴァルキリーに招かれている。

「『レターズ・オブ・バレンタイン』で普段できないことを……っていうけど、
よくよく考えたら、私たちの日常ってどこかに出かけて飛び回ってばっかりだなって」
「たしかに、そうね。
こうして、ゆっくりとお茶する時間もないものね」
リネンに、フリューネは笑顔でうなずいた。

「今日は、わがまま聞いてくれてどうもありがとう」
「どういたしまして。
たまには、こういうのもいいわね」
一匹狼の空賊であるフリューネは、いつも一人で行動している。
リネンには、同じ義賊の空賊団の仲間がいるけれど。

「フリューネは、さびしくなったりは、しないの?」
「どうして?」
リネンの問いに、フリューネが澄んだ瞳で答える。
「……そうね。空は、ずっと、つながっているんだものね」
リネンはうなずいた。

「もう3年だけど……まだ3年なのよね……思い出すと恥ずかしいくらい」
「そうね。変わらないこともあるけれど、いろいろなことも変わったわ」
「世界は滅亡の危機とかいうけど……今年も、来年も……
ずっと先もこうして一緒にいたいな……」
リネンは、決意の表情で、フリューネを見つめた。
「約束、してもいい? 来年もきっとこの日、二人で会おうって……」
そして、消えそうな声で付け加える。
「フリューネの一番傍にいるって」
そして、リネンは、再度、顔を上げる。
「私が負けそうな時はフリューネがいてくれたし、
フリューネが負けそうな時は私が傍にいるわ」
「いつもありがとう。
あなたのことは、背中を預けられる、大切な仲間だと思ってるわ」
フリューネは、リネンに、優しく微笑みを返した。

かちり。
時計の針が動く音がする。
そろそろ、帰る時刻だ。

リネンは、勇気を振り絞り、そっと告げた。
「……キス、してもいい?」
フリューネは、そっと、リネンの唇に、自分の人差し指を押し当てた。
「そうね、もう少し、とっておきなさい」
優しい、姉のような笑みで。
「女の子の大切なものは簡単に差し出しちゃダメよ」
しばし、リネンは、フリューネを見つめていたが。
「……わかったわ」
そううなずき、フリューネに肩を預けた。