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2023年ジューンブライド

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 杜守 柚(ともり・ゆず)は、高円寺 海(こうえんじ・かい)を模擬結婚式に誘った。柚は去年、海を誘って模擬結婚式を行った。もう一度、模擬結婚式を行いたいと考えたのだ。
 海はすぐに誘いを了承し、二人は教会での模擬結婚式を行うこととなった。

 白のウェディングドレスを着た柚の隣に、タキシード姿の海がいる。並んでバージンロードを歩く柚は緊張したように少し固くなっている。
「やっぱり二度では慣れないですね。緊張しちゃいます」
「結婚式なんて、そんなに何度もするものじゃないから、きっといつでも緊張するだろ」
 そんな海の言葉を聞いて、柚は少しだけ緊張が和らいで行ったような気がした。
 柚と海は誓いの言葉を交わし、指輪の交換を済ませた。そうして、元来たように二人並んで、柚たちは教会を後にした。

「大切な思い出になりました。有り難うございました」
 模擬結婚式を終えると、柚は笑顔を海に向けて頭を下げた。
「こちらこそ。楽しかった」
 海の表情に偽りはなさそうで、柚はほっと安心したように小さな吐息を漏らした。
 二人は一緒に並んで帰りながら、今日の模擬結婚式について思い返す。
「……海くんは結婚にどんなイメージを持っていますか?」
 そう、柚は訊ねた。ずっと、海に訊いてみたかったのだ。
「結婚のイメージ?」
 表情はいつも通りで変わらないものの、海は少し悩んでいるようだった。あまり、今までに考えたことがなかったのだろう、しばらくの間海は黙り込んでいたが、
「--家族を大切にしたい、とかそういうことでいいのか?」
 と、口を開いた。
「家族になった人を自分の手で守りたい、という気持ちは結構強いかな。結婚のイメージ、というのとは少し違うかもしれないけど」
 海の答えを聞いて、柚はうんうん、と同意するように頷いた。
「柚は、こんな結婚がしたい、というイメージはあるのか?」
「そうですね、理想の結婚式……今日のように教会で真っ白なウェディングドレスを着てヴァージンロードを歩きたいです」
「すごく良いんじゃないか?」
 そう言う海は、今日の模擬結婚式を楽しんでくれたようで、柚も嬉しくなった。柚は、歩き出す。いつか本物の結婚式で海くんの隣にいれるようになれればいいな、と思いながら--。