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お月見の祭り

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お月見の祭り
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 天苗 結奈(あまなえ・ゆいな)は、イングリット・ネルソン(いんぐりっと・ねるそん)と竹林を散歩していた。
「いんぐりっとちゃん、お月様がすっごく綺麗だねー」
「そうですわね。このニルヴァーナの月は、どこか不思議な美しさを持っているように感じますわ」
 イングリットは、手をつないで嬉しそうに笑う結奈に微笑みを向ける。
「いんぐりっとちゃんとお散歩するの、楽しいなー」
 結奈は空を見上げて、頭上高くで風に揺れる竹と、柔らかな光を放つ月を見ていた。
「そういえばねー、最近新しくできたファンシーショップが、凄く可愛いんだよ! 広くて、可愛いものがたくさんあって、迷っちゃうんだー」
「是非、今度一緒に行ってみたいですわ」
「ほんとに!? またいんぐりっとちゃんと一緒にお出かけできるねー!」
「そうですわね」
 心底嬉しそうに無邪気な笑みを浮かべて、結奈はイングリットの手をぎゅっと握った。
「そうだ、いんぐりっとちゃんと、もうひとつ一緒に行きたいお店があるんだよー」
「どんなお店ですの?」
「ケーキ屋さんなんだけど、そこのケーキがどれも美味しいんだー」
 結奈はケーキを食べた時のことを思い出したのか、えへへ、と笑みを深めた。
「そのケーキ屋も一緒に行きたいですわね」
「うん! いっぱいケーキ食べようねー!」
 結奈とイングリットは、そんなようなたわいもない話をしながら、お月見を楽しんだ。
 そんな中で、結奈がイングリットを見つめて、不思議そうな表情をした。
「どうしたのかしら?」
「ううん、えっとね……」
 結奈は、上手く表現する言葉を探そうとしているのか、少し悩んだように首を傾げた。
「いんぐりっとちゃんと二人でいると嬉しいけど、パートナーの子達といる時の嬉しさとはちょっと違う気がするの」
 この気持ち、何なのかなぁ。結奈の呟きに、イングリットはふふ、と嬉しそうな笑みを浮かべた。
「わたくしのこと、特別な好き、だと思ってくださっているのかしら?」
「特別な好き……?」
 結奈の表情が、ぱあっと晴れた。
「いんぐりっとちゃん、大好き! 普通の好きじゃなくて、特別な大好きだよ!」
 まだ結奈は、自分自身の中にあるその気持ちをはっきりとは捉えられていないかもしれない。
 それでも、イングリットの名付けてくれた「特別な好き」という感情を、結奈は少しだけ意識し始めたのだった。