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【2024VDWD】甘い幸福

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31.二人で飲み明かす夜

九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)は、
婚約者の長曽禰 広明(ながそね・ひろあき)の家にやってきた。
今日はお泊りのつもりである。

ローズが、チョコレートビールを、広明にプレゼントする。
「チョコレートビールとはいっても、
チョコレート風味というだけなんですよ。
でも、濃厚なビターチョコの味わいでお酒好きな方におすすめの一品です」
「ありがとう、オレの好みを考えてくれたんだな!」
広明は感激してローズを抱きしめる。


「なんだか、ローズはどんどんオレの好みの女になっていくな……。
最初は娘みたいだったのに」
「いやだなあ、広明さん。そんなこと……」
「ああ、もちろん、もうそんなことは思ってねえよ」
その言葉を示すかのように、広明はローズに口づける。

その後、二人は、ゆったりとお酒を飲みはじめた。
ローズが用意したおつまみもたくさんある。

「今日は、パーっと飲んで食べましょう!」
好みのお酒や、おつまみの話をしつつ、ローズは派手にカクテルをあおっていく。

「やはり味で言うならカクテルですかね〜飲み安いというか。
まあそのぶん酔いやすいんですが、食べながら飲むと最高です。
だけど、皆で飲むとしたらビールですね、缶ビール。
ショットガンって飲み方が好きなんですよ。
でもまだ焼酎や日本酒まだ辛くて飲めないですね」
「おいおい、いくら飲みやすくても、カクテルは度が強いんだからな。
それに、ショットガンなんて……」
「大丈夫ですよ、食べながらですし!」

ローズの顔は赤くなっている。
そのことに本人は気づいているのかどうか。

やがて、ローズは、古い歌謡曲を歌い始めた。

「って、ほんとはいくつだ、おまえ?」
「えへへ、お父さんが小さいころ、お風呂で歌ってたのを覚えてたんです」
「……そうか、って、そんな場合じゃない。
お、おい、大丈夫か? だいぶ酔ってるんじゃ……」
「ははは、たしかにいい気持ちになってきましたけど……。
まだまだ大丈夫ですよー」
ローズは、広明にもたれかかって、猫のように頬ずりした。

「まったく。なんだか、以前とあべこべになっちまったな」
「え、どうしたんですか?」
「なんでもねえよ。ほら、ウーロン茶も飲んどけ」
広明は、ローズにお茶を渡す。

「それにな。
いくら婚約者とはいえ、一応、順番ってものがあるだろ?
……オレはローズのこと大切にしたいし。
でも、そんな様子見てたらそのうち理性が……」
「え、なんですって、広明さん?」
ローズは紅くほてった顔で広明を見つめる。

「……天然にもほどがあるだろ!」
広明は、ローズを抱きしめる。

「広明さん……」

「いいから、もう……」

「あいしてます……」

ローズは広明の腕の中で安心して眠っていた。

「……まったく」

広明は微苦笑を浮かべてため息をつき、
ローズをお姫様抱っこしてベッドまで運んだ。



翌朝。

夢見ごこちで昨晩のことをなんとなく覚えていたローズは、
広明の部屋で二日酔いで目覚め、
恥ずかしさと照れくささで悶えたという。

そんなローズに、広明はコーヒーを淹れて、優しく介抱してくれたのだった。

「無理して大人ぶろうとしなくていいんだぞ?
オレは、そのままのローズが好きなんだからな」
「……はい」
ローズは、真っ赤になりながら、目をつぶってブラックコーヒーを口に含んだ。
苦くて、そしてどこか優しい味が、広がった。