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【5周年記念】スペシャル番組『パラミタ大陸』

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【5周年記念】スペシャル番組『パラミタ大陸』
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リアクション

 特設スタジオは和やか、幸せなムードに浸っていた。
 一部では「爆発……爆発……!」等物騒な単語も聞こえるが、これも一種の祝いなので問題ない。
「さて、ここまで契約者さんたちの色々な一日を見てきましたが、
 いかがだったでしょうか。コメンテーターの山葉 加夜(やまは・かや)さん?」
「そうですねえ。お仕事に打ち込む方、家族や恋人を大事にされる方……どれも素敵でした。それに」
「カメラ越しの彼らは皆いい表情をしていた。これに勝るものなんてないだろうな」
 加夜の隣に座っていた山葉 涼司(やまは・りょうじ)がそう答える。
 加夜は無言で頷いている。どうやら同じコメントを言うつもりだったようだ。
「その通りですね! いやー本当この撮影の時色々と苦労したりもあったんですけど、結果的には……」
 と熱弁しようとする司会者をよそに、加夜は思いに耽っていた。
「本当に、楽しそうですね。私たちもこういう頃がありましたね」
「ああ。今でこそ、あまりないが……」
「あら、私は今でも気分は新婚そのもの、ですよ? ふふっ」
「そうだな。まったくその通りだ」
 夫婦の会話が始まってしまった。
 最早幸せオーラから逃れる術などない。
「あのーお二人さん? こっちの世界にかえってきてくださーい?」
「あの時の涼司くんは――」
「そういう加夜こそ――」

「皆、幸せそうでよかった」
 酒杜 陽一(さかもり・よういち)がぽつりと呟いた。
 彼の近くにはジークリンデ・ウェルザング(じーくりんで・うぇるざんぐ)セレスティアーナ・アジュア(せれすてぃあーな・あじゅあ)高根沢 理子(たかねざわ・りこ)の姿もあった。
 どことなく変装をしているようにも見えるし、そもそも普段の彼女たちにも見える。
「いやージークリンデって本当、どこかしらにいるのね」
「うむ。働くことはいいことだ。これからも精進するであろう」
 理子とセレスティアーナの言葉を聞いたジークリンデは眉根一つ動かさずに答えを返す。
「これでも校長のバイトを始めてから、他のバイトは少なくなったわ」
「そもそも校長が他のバイトってっところからおかしくない?」
 ジークリンデの言葉に理子が笑いながら言葉を投げかける。
 それを見ていたセレスティアーナも「で、あるな、ふふふっ」と笑いを零した。
 そんな三人の姿を、陽一は穏やかに見守る。
(たまには気楽に他人の生活を見てみるのもいいか、と連れてきてみたけれど、正解だった)
 目を閉じて、心の中でそう思う陽一。同時に、この生活が崩れてしまわぬようにとも考えていた。
(こんな風にして、パラミタ大陸には多くの営みが溢れている……滅びてしまわぬよう、これからも頑張る理子さんを支えていかないとな)
 考え終えて目を開ける。と、その眼前には理子の顔があった。
「わっ!?」
「何か小難しいこと考えていたでしょう? そういう顔、この場には相応しくないわよ。
 だから、ここに入る間はもっと楽しみましょう。一緒にね」
 理子の言葉を聞いた陽一はしばらく呆然とするが、すぐに笑顔になって小さく「はい」と答えた。
「ふむ。どこもかしこも熱々だな」
「悪くはないけれどね」
 セレスティアーナとジークリンデの言葉に、二人は少しだけ気恥ずかしさを感じつつも、番組の観賞に戻った。

「ええーそれでは引き続き、契約者さんの一日を見ていきましょう」
「楽しみです。しっかり見ないとですね」
「おお、加夜さん! もう夫婦タイムから帰ってこないかと私心配でした!
 では改めて、どうぞー!」


「おっ、また始まった」
「そうですね……、普通に…面白いですよね」
 とある宿で『パラミタ大陸』を見ていたエミン・イェシルメン(えみん・いぇしるめん)金襴 かりん(きらん・かりん)
 二人はこの番組を大いに楽しんでいた。
 だが、緊張もしていた。どの一日も見逃すまいと、常に目を光らせていた。
 と、その時二人が身を乗り出して、テレビを食い入るように見る。
「この人、やっぱりすっごい似てる!」
「……でも、違う……この人は、違うよ……」
 かりんはゆっくりを視線を床へと落とした。
 それを見てエミンは何もいえない。
 テレビから流れる音だけが、宿に響いていた。
 数分後、エミンがゆっくりと言葉を発した。
「……今回は違ったけど、まだチャンスはあるよ。
 だからこの番組の続き見ようよ。結構面白いしさ」
 エミンの言葉を聞いたかりんが、少しだけ顔を上げた。
「そう、だね……面白いのは、わかる。そう、しよう……」
 何かを引きずっているようだが、その顔に薄っすらとした優しい微笑が戻った。
 それを見たエミンもほっとする。
「それじゃ続きを……どうしたの? 目、すっごい大きく見開いて」
「ああ、ああ。こんな。ところに!」
 みつくん人形を抱きしめるかりんの驚きようを見て、エミンが慌ててテレビへ振り返る。
 そして、かりんと同じように驚き、大慌てでメモを取った。
 とあるクリニック、打擲医術を使用するクリニックの所在を。