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歴代グランドアイドル決定戦

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歴代グランドアイドル決定戦
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リアクション


三幕

 ステージに立つ人間はもちろん目立つが、それは裏で支えている人がいればこその話である。
 源 鉄心(みなもと・てっしん)鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)は裏でこっそり隠れながらステージに目をやる。
「愛ちゃんたち、大丈夫かな……」
「まあ、もし何かあったらテレパシーでフォローするさ」
 心配そうな声を漏らす貴仁に鉄心は声をかける。
 貴仁の視線の先には鬼龍 愛(きりゅう・あい)がいた。
 愛は小さい身体で大きなステージをてててと歩いては観客に手を振って笑顔を振りまいている。その可愛らしい姿に一部の観客が大声の歓声を上げた。
 そんな様子に泪が笑顔を見せながら愛に向かってマイクを向ける。
「いやー愛ちゃん大人気だねー。どう? 緊張してる?」
「ううん! 全然してないよ! アイちゃん、がんばるー」
 愛がVサインを作るとまた会場が沸いた。ちゃんと受け答えができたことで貴仁は安堵のため息をついた。
 泪は続いて、後ろにいたイコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)にもマイクを向ける。
 その瞬間、イコナはビクッと震えて手に持っていたフルートを握りしめた。
「楽器を持ってるってことは音楽担当なんですか?」
「わわたくしはフルーツ担当ですの!」
 イコナは声を裏返しながら答える。元々臆病な性格もあって、完全に目の前の人たちに呑まれていた。
(落ち着けイコナ。果物を担当してどうする。……ティー。そろそろ始めてくれ)
 鉄心はティー・ティー(てぃー・てぃー)にフォローを要請する。
「それじゃあ、そろそろ始めましょうか」
 ティーが言うと、泪はステージ袖に引っ込んだ。
(スープも、準備しろって)
 テレパシーでスープ・ストーン(すーぷ・すとーん)に声をかけると、スープはハッと目が覚めたように、のそのそと準備を始めた。
「それじゃあ、いきますよ」
 ティーが全員に声をかけると、ケルティックハープに触れて優しい音色を紡ぎ出す。
 それに合わせて、イコナのフルートとスープのヴァイオリンが続く。
 心地いい音色に乗るように愛が歌を歌い始める。
 森の音楽会の始まりだ。

さぁ、みんな一緒に歌おうよ
うさぎさんも、ねこさんも、いぬさんも楽しくね
この歌を歌ってる時ぐらいは嫌なこと、悲しいことを忘れちゃおう
さぁ、みんな一緒に踊ろうよ
ペガサスさんも、グリフォンさんもドラゴンさんも笑ってね?
この歌で踊ってる時くらいは怒りたいこと、泣きたいことも忘れてさ

生きるためには必要なこといっぱいあるけど、それってホントに必要なことなの?
他の子達と絶対に仲良くはできないのかな?
生きるためには愛することをしなくちゃいけないんだよ
みんなのことをね、自分だけ愛してもダメなんだからね
そう、愛は地球を救う
そう、愛は世界を幸せに出来るんだ

 いつしかステージにはティーが出したミニうさティーとミニいこにゃ、世界樹の苗木ちゃんたちが愛の周りで踊っていた。
 ステージの中央でタンバリンを持ちながら愛は神楽舞で完璧に踊ってみせる。
 歌が終わると静かになっていた観客たちが一斉に拍手を送る。
 キチンと歌いきれたのを見て、貴仁は心底安堵したようにため息をつく。
「うう……緊張した……」
「お疲れ様。でも、まだ最後の仕上げが残ってるよ」
 裏方で見守っていた貴仁に労いの言葉を入れながら、鉄心はスタッフの何人かに合図を送ると――ステージの頭上に大きな花火が上がった。
 鉄心が根回しで用意して、ティーたちにも内緒でこっそり用意していたのだ。
「イコナがちょっと前から花火花火言ってましたしね。夏の思い出の一つとして」
 照れ隠しなのか独り言のように口にしながら空に上がる大輪の花は次々と咲く。
「ありがとうございましたうさ〜♪」
「楽しかったですわ。いつかまた……ですの!」
「ぷりん……」
 ステージから思い思いの言葉を口にしながら手を振る頭上で、花火はしばらく上がり続け、ティーもイコナもスープも愛も、皆満足そうな笑顔を浮かべていた。

「魔法少女アイドル マジカル☆カナです! 今日は皆に、笑顔の魔法をお届けします♪」
 ステージに立った遠野 歌菜(とおの・かな)は開口一番にそう叫んだ。
「それじゃあ、さっそく聞いてください!」
 歌菜が言うと曲が流れ出し、それに合わせて歌菜はアルティメットフォームを発動させる。
 空からリボンと花、羽根が降り注ぎ、魔法少女に変身すると観客が一気に沸き、それに続くようにマジカルステージ♪ を発動させる。
 曲はキュートでポップなラブソング。
 歌菜は跳ねるように全身でリズムを取りながら、笑顔で踊り続ける。

歌を歌ってあげるよ
君にとびきりの笑顔の魔法 かけてあげる

 ウインクと一緒に光精の指輪でライトアップを演出し、ポーズを付けて曲が終わる瞬間――ステージを煙が包み込んだ。
 スモークキットによる煙は歌菜の姿さえも消してしまい、観客が一瞬どよめく。
 それを打ち消したのは月崎 羽純(つきざき・はすみ)がかき鳴らす鮮烈なギターの音色だった。
 スモークが晴れると、ステージには羽純だけがいて、ギターソロ観客を魅了した。
 ソロ部分が終わる瞬間、虹色の翼を使って歌菜が再びステージへと現れた。
 歌菜は歌を歌い、羽純は競うようにギターを演奏する。

この歌 届けるまで 歌い続ける
愛は死なない

激しく熱く歌い上げた後、転調。
羽純のギターと歌、歌菜の歌がハーモニーに寄り添って、喜びを幸せを歌いあげる。

軌跡と奇跡 胸に
貴方と出会えた喜びを歌う
咲き誇れ 笑顔の魔法

 そして、歌が終わると観客から割れんばかりの拍手と歓声が飛んできた。
 二人は互いの手を取り、このステージに立てた喜びを分かち合うようにハイタッチをした。