天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

ファイナルイコンファイト!

リアクション公開中!

ファイナルイコンファイト!

リアクション


乱戦開始の合図


 炎を吹き上げ、煙を吐き出しながらゆっくりと戦艦・乙がゆっくりと着底する。
「ふむ……ある程度のダメージを与えると、完全に破壊しなくとも破壊扱いとなるか」
 ホレーショ・ネルソン(ほれーしょ・ねるそん)は獲得した十点を確認する。
「戦艦はしぶといから、救済処置みたいなものかな」
 HMS セント・アンドリューの二連機砲で近づこうとする通常機を牽制しながら、ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)も地上に着陸した戦艦乙をちらりとみる。
 正しい判断とダメージコントロールを行えば、戦艦はかなり長時間かつ大量の攻撃を受け止める事ができるだろう。
 HMS セント・アンドリューは戦艦と正面から撃ち合いを行える戦艦だが、この大会の中心はイコンであるため、戦艦相手は少々手に余ると判断されたのだろう。
「であれば、試してみようか。艦隊運動は予定通りに、ただし一斉射の前に一撃、頼めるかな」
「了解、どこを狙えばいいのかしら?」
 ホレーショは戦艦・甲の拡大画像を呼び出し、紅茶のカップを傾けてから、「恐らくここだろう」と呟く。
 速度を持ち味とした戦艦・甲が間合いを詰めながら砲撃を行う。何発かはHMS セント・アンドリューを掠めていく。
「よし、機関は暖めたままにしておけ」
「ここを狙えばいいのね? 了解、外さないわ」
 主砲の一つが目標を捕捉。手動で修正を行う。
「タイミングは任せよう」
「―――そこっ」
 一発、主砲から放たれた一撃は、寸分違わず目標を打ち抜いた。戦艦・甲の側面が大きく歪み、HMS セント・アンドリューに十点の得点が入った。
「あれ?」
 戦艦・甲は今だ健在である。しかし間もなく速度を落とし、ゆっくりと地上に着地していった。
「今のでいいの?」
「弾薬庫に直撃し誘爆により轟沈、と判定されたのだろうな。ふむ、もう少し早く気が付ければ、得点をもう少し加算できたが仕方あるまい……時間だ。こちらに向かって来る通常機を撃破しつつ、予定通り後退を開始する」



「正面、岩陰に二機。こちらに気付いています」
「ギリギリまで近づいて、ワープで裏回りする。敵機がこちらに銃口を向ける瞬間を狙う」
 シュバルツ・dreiは姿勢を低くしながら、岩にぶつかるんじゃないかというところまで接近する。
「今!」
 グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)が敵機の動きを確認し、ワープ、背後に回りこむと、岩に半分身を隠していた通常機の背中が正面に映し出される。
「全く、無茶な機動をするのですから」
 帝国製魔導銃とシールド一体型ライフルがそれぞれ別の敵に向けられ、同時に二体の通常機を破壊する。
「よし二点」
 ワープでは直進の勢いは消えない。エルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)は逆噴射のブレーキでの停止では間に合わないと判断し、片足を前に出し、正面の岩を蹴ってその場で宙返りした。
 ガシャン―――シュバルツ・dreiに五点が入ると同時に、機体はその場ですっころんだ。
「何か、踏んだのか?」
「そのようですね……と、敵の通常機が接近してます、急いで離脱しましょう」
「わかった」
 グラキエスは機体を起こすと、向かってくる通常機に牽制の射撃、これは回避される。

「解説の鈿女さん、今の破壊された強敵機は何でしょうか?」
「はい。先ほど破壊されたのは、こちらですね。ガネット潜水形態試作機、変形後の水中での水圧の影響を図る実験機です。水中での稼動を前提にしているため、当然陸上での活動は不可能です」
「陸に打ち上げられた魚みたいな強敵機ですね」
「打ち上げられても魚だったら跳ねて海に帰れるけど、これは文字通り手も足も出ないから、干からびた魚みたいなものじゃないかしら」
 実況と解説の二人も、二十分も過ぎて随分慣れてきたようだった。

「よし、とりあえず殲滅したましたね。大丈夫ですか?」
 すぐさま襲い掛かってきそうなエネミーが無い事を確認したエルデネストがグラキエスの様子を窺う。
「ああ、だいぶ手に馴染んできたな。だが、まだこいつのポテンシャルはまだまだあるのがわかる。もっと上手に扱ってやんないと、ドライにも開発整備をしてくれた皆にも悪いからな」
「そういう意味ではないんですが……」
 小さい呟きはグラキエスには届かない。ただ、見る限り調子は悪く無さそうで、エルデネストは嘆息すると、
「四時方向、敵集団が確認できます。参加者の姿はありませんので、全部頂いてしまいましょうか」
「了解」
 シュバルツ・dreiが方向転換し、加速する。
 目的地に移動中に、大音量の緊急アラームが鳴り響いた。二人は一瞬機体に問題が発生したかと思ったが、そうではないことはすぐさま続いた機械音声が告げた。
『緊急警報、緊急警報、試合会場に未識別が多数来襲。繰り返します―――』
「もうそんな時間か。しかし、随分と大げさな」
「誰もが乱入機については知ってると思うのですが」
 乱入機がある事事態は、パンフレットにも載ってるし、大々的に募集も行われた。
「少々演出が過剰ですね」
「だが、これはこれで気が引き締まるな」
 シュバルツ・dreiは立ち止まり、未識別機とやらが進入してきた方角に体を向けた。