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【未来シナリオ】大切な今日

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【未来シナリオ】大切な今日
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ルビーの日

 何度目かの7月。
 空京のレストランに、魅力的な2人の女性が訪れた。
 崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)神楽崎 優子(かぐらざき・ゆうこ)
 2人は今月誕生日を迎えた。
 いつの頃からか、亜璃珠と優子は毎年都合をつけて2人で、誕生日のお祝いをしている。
 この日の事を亜璃珠は「ルビーの日」と呼んでいる。
 それは大体いつも、誕生石や好みの兼ね合いでルビーをあしらった物を贈っているから。

「お誕生日おめでとう、はい、どうぞ」
「おめでとう、私からはこれを」
 フランス料理のコースを楽しんだ後、2人はプレゼントを取り出して、交換をした。
 優子からの今年のプレゼントは、ミュージカルのチケット、2枚だった。
「これ、今話題の……S席じゃない、どうやってとったの?」
「ロイヤルガードで警備を手伝うことになったんだ。その伝で……もらい物じゃないぞ」
「それはわかってるけど、それじゃ優子さんとは行けないってことじゃない」
「毎日担当するわけじゃないから、予定が合えば一緒に行けるけど、亜璃珠は一緒に行く人他に沢山いるだろ……ん?」
 優子は亜璃珠からのプレゼンの箱を開けて、中を不思議そうに見る。
「アクセサリー入れ……いや」
 入っていたのは、指輪ケース。中には指輪も入っていた。
 ルビーの指輪。
 それが今年の亜璃珠から優子へのプレゼントだ。
「指輪か……」
「別に深い意味はない、と思っていいわよ。ほら、優子さんあまり指輪持ってないしね」
「うん、ありがとう。大切にするよ」
 優子はさっそく、右手の薬指に嵌めてサイズを確かめて、頷く。
(何も考えず薬指に嵌めちゃうところとか、ホント無頓着なのよね……)
 心の中でため息をついてから。
「実は、相談があって」
 亜璃珠は視線を落として言った。
「ん? どうした」
「ヴァイシャリーのある貴族から、縁談の話が来て、どうするか迷ってるの」
「…………」
 優子の視線を感じながら、亜璃珠は話していく。
「今までは『優子さんが結婚したら後を追う』とか、仕事に専念するだの何だのと言って、のらりくらりとそういう話をかわしてきたつもりだった。
 とはいえ、私の人物評を知った上で、という事は……それ相応に私の事を評価してくれているということだし、これから仕事をしていく上でも相手方の顔に泥を塗るような事をするのは辛い、の」
 ゆっくり顔を上げると、優子は真剣な目でこちらを見ていた。
 口は固く閉じたままで亜璃珠の次の言葉を待っていた。
「……ダメ元でひとつお願い。私の王子様になってくれないかしら」
 柄じゃないなと恥ずかしくなる。
 でも、これで最後かもしれない……。こんなお願いをするのは。
 それ以上の説明はせずに、言葉の解釈を優子に任せて、亜璃珠は優子の答えを待っていた。
(欲は……あるけど、優子さんなりの応え方があれば、私は十分。どんな答えでも、感謝の気持ちを伝えることが出来るはず)
「亜璃珠」
「……うん」
「何て言えばいいのか、わからない」
「…………」
 優子はそのまま考え込み。
 亜璃珠は飲みかけのコーヒーを見つめながら、答えを待っていた。
 いい加減、うそうそと誤魔化してしまおうかと思ったころ。優子が口を開いた。
「亜璃珠が」
「うん」
「私の姫になってくれるのなら、私はキミの王子になれる。
 アレナにいい人が出来て、ゼスタもシャンバラから離れようとしている。
 友も仲間も傍にいるけれど、今、何か足りないんだ。
 自分も、共に生きていく人が欲しいと思っている。
 キミと同じように……結婚を考えたいと思うようになった。
 仕事に励むためでもあるが、場合によっては逆に自分の仕事を縮小し、子供を育てながら、後進の育成に努めてもいいと思っている。相手が一家の大黒柱になり得る人物ならば」
 また少し考えて、優子は言う。
「キミは私の姫にはなれないんだろ? だから私はキミの王子にはなれない」
 優子は少し、寂しそうだった。
 アレナは体内の封印が解けてから、少し大人になった。
 以前ほど、優子優子とは言わなくなり、彼女の子供ではなく、妹のような存在になっていた。
「単なる焦りなのかもしれないな。周りか次々に結婚して変わっていくものだから」
 優子は軽く苦笑をして、冷えたコーヒーを飲んだ。

 外へ、出た。
 迎えの飛空艇の場所まで、優子は送ってくれるという。
 途中、通った公園の中で、暗闇の中――二人はどちらからともなく、見つめ合った。
「真剣に答えてくれて、ありがとう。これでもう十分。……あなたがいてくれて本当によかった」
 優子を見つめながら、亜璃珠は微笑した。
「これからも(末永く)よろしくお願いします」
 優子も穏やかな笑みを浮かべて、頷く。
「よろしく。どちらかが死ぬまで友でいよう」
 迎えの飛空艇まで後少しのところで、優子は立ち止まった。
「それじゃ、またな」
 そして背を向けてロイヤルガードの宿舎の方へと、歩きはじめた。
「……ごめんうそ」
 追いかけて、亜璃珠は優子の背に抱き着いた。
「私欲張りだからさあ、これからの関係のためにももう一つ何か思い出ちょうだい?」
「キミが欲しい思い出がどんなものだかは分からないけれど。
 最後に、言っておこう」
 月明かりの中、優子は亜璃珠に背を向けたまま、語った。
「私は、ずっとキミが欲しかった。
 当時のその感情は、キミが私に抱いてくれた感情とは別のもので、手を出したいという気持ちはなかった。
 ロイヤルガードを発足した時も、私は亜璃珠を誘いたかった。
 友でも参謀でも秘書でも、なんでもいい。支え合ってシャンバラと皆の平穏の為に、活動していけたら、幸せだっただろう。
 だけど、亜璃珠は型に縛られる生き方は合わない女性だと分かっていたから、自分の感情を抑えて、キミにしつこく迫ることはなかった」
「優子さん……」
「これを言うのは、最初で最後だ」
 振り向いて、優子は亜璃珠をまっすぐに見つめた。
「私の下にきて一緒に生きないか、亜璃珠。私を支えてくれないか?」
 “キミが、欲しいんだ”
 優子は真剣な想いを、その日初めて亜璃珠に伝えた。
「それって……プロポーズと考えていいの?」
「……ああ。ただ、互いに自分の道を歩んでいくのなら、しばらくはお別れだ」
 ふっと息をついて、優子は表情を和らげて寂しげな笑みを浮かべた。
「私も、縁談を受けることにする」
 それじゃ、またな、と。
 亜璃珠の頭に手を置いた後、今度こそ優子は、亜璃珠のもとから離れて行った。

 それからおよそ1年後、崩城亜璃珠は結婚をした。
 神楽崎優子も結婚をした。
 互いが選んだ相手は――。

担当マスターより

▼担当マスター

川岸満里亜

▼マスターコメント

 幸せな未来や、切ない未来。皆様の大切な一日を描かせていただき、ありがとうございました。
 川岸のNPCにつきましても、未来も皆様と一緒にいれたことがとてもうれしかったです。

 アレナについての話は、近未来の出来事となります。
 バランスの良いアクションをいただきました。
 皆のアレナの心への働きかけが同じだったら、偏った感情を持つ子になっていたかと思います。
 これから数年かけて彼女の心は成長するものと思います。
 星剣は優子がロイヤルガードの隊長を退くまで、所持しているような気がします。
 その後は、ティセラ(十二星華のリーダー、星剣を複数格納できる)に預けるという未来を予想しました。
 このシナリオの中で後日談まで描けず申し訳ありません。
 後日改めて、皆様ひとりひとりに優子と共にお礼に伺っているはずです。
 今回もこれまでも本当にありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします!

 それでは、最後のシナリオでも皆様にお会い出来ましたら嬉しいです。
 また蒼空のフロンティアファイナルに向けまして、ちょっとしたお知らせありますので、月末にマスターページを見ていただけましたら幸いです。