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四季の彩り・FINAL~ここから始まる物語~

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四季の彩り・FINAL~ここから始まる物語~

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 第9章

「私、何かやろうか?」
「座ってろ。俺が用意する」
 2024年、12月24日。前日にお互いに誕生日を迎えた遠野 歌菜(とおの・かな)月崎 羽純(つきざき・はすみ)は、どこかに出掛けることなくこの日を自宅で過ごしていた。
 時刻は夜。椅子に座って振り返ってくる歌菜に、羽純は答える。歌菜は今、妊娠している。来年、双子の男の子と女の子が生まれてくる予定だ。
 身重の妻を色々と気遣うのは、夫として当然のこと。
 そう、羽純は思っていた。
(えへへ……)
 夕食がテーブルに並ぶのを待ちながら、歌菜は幸せな気持ちに包まれていた。『外出せずのんびりしよう』と言ったのは羽純の方で、彼のその気遣いが嬉しかった。料理も、羽純は積極的に手伝ってくれた。おかげで、豪華なディナーが出来たのだ。
 全ての皿が並び、向かいに座った彼がグラスにジュースを注いでいく。妊娠中のお酒は厳禁だ。普段はワインを選ぶ羽純も、同じジュースを選んだ。
(羽純くん、優しいなぁ……)
 さりげない優しさに、ジーンとくる。
「かんぱーい」
「乾杯」
 一口飲んだジュースの味が、何だか今日は特別に感じた。
 次に、ディナーを食べてみる。
「うん、美味しい! 赤ちゃん達のため、栄養はたっぷり取らないとね♪」
「歌菜の食べっぷりを見てると、元気な子が生まれてくると思えるな」
「そうだよっ、だから、羽純くん楽しみにしててねっ」

 今日はホワイトクリスマス。
 夕食を楽しんだ後、2人は窓の外の雪を眺めながらお茶を飲んだ。ビタミンたっぷりのハイビスカスティーに蜂蜜を入れて適度な甘さにしたものが、まったりとリラックスした気持ちにさせてくれる。
「来年の今頃は、お腹に居る子供達も一緒にこの景色を見てるんだよね、きっと。絶対、幸せだよね。今だって幸せだけど。……羽純くんはどう?」
「来年の今頃、か……」
 羽純はふ、と優しく笑い、彼女のお腹にそっと触れた。
「……そうだな。俺も歌菜と同じ気持ちだ」
「……そっか、同じかぁ……」
 歌菜は嬉しそうに、幸せそうな笑顔を浮かべた。羽純は、来年増えた家族とこのソファに座る時を想像する。女の子はきっと、歌菜に良く似ているだろう。彼女の幼い頃の写真は、義父アリョーシャと義母の晃に見せてもらったことがある。とても可愛らしい、明るい笑顔の子供だった。
 お茶のカップを両手で持ち、雪降らす空を見ながら、歌菜は話す。
「えっとね、来年の今頃を具体的に想像するのは難しいけど、その先は色々想像してるの」
「その先?」
「うん。男の子でも女の子でも、羽純くんに似てて、小さい頃の羽純くんはこんな感じだった筈! って私は思うの」
「はは、違うかもしれないぞ」
「絶対、おんなじ感じなんだよ! 2人にお母さんって言われたら、それだけでもう幸せで! でね、色々お洋服着て貰いたいなって。美味しいものを沢山食べさせてあげたいし、色々な場所を見せてあげたい」
 そして、いっぱい話をしたい。
「私と羽純くんが、どんな風に出会って、どんな風に出会って、どんな風にこのパラミタで生きてきたか……」
 愛すべき友人達との出会いと別れ、戦いも。
「沢山の事、伝えたいの。……羽純くんも、一緒に伝えてくれる?」
「……勿論、一緒に話そう。教えたい事は沢山ある。一緒に伝えよう」
「うん、一緒に……」
 歌菜の頭が、そっと羽純の肩に触れる。彼女の髪を撫でながら今の話を思い返し、そうか……と、羽純は目が覚めた気分になった。
 話をして、教えて、伝えていく。
 家族とは、こうやって、想いを記憶で繋いでいけるものなのだ。
(また……歌菜に気付かされたな)
 ――これから先、歌菜と子供達に、俺はどれだけ幸せを貰える事だろう。
(……幸福だな)
 祝いの夜。
 羽純はそれを、しみじみと感じた。