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世界を滅ぼす方法(第3回/全6回)

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世界を滅ぼす方法(第3回/全6回)

リアクション

 
 
「それじゃ、ワタシが戻るまで飛空艇をしっかり護っておいてよね。
 留守番よろしく!」
 ダンボールロボット・あーる華野 筐子(あーるはなの・こばこ)は、パートナーのアイリス・ウォーカー(あいりす・うぉーかー)に、しっかりと念を押した。
「華野こそ、待っていますから、早めに戻ってくださいね」
 飛空艇を乗り捨てるのは勿体無い。
 何か手に入れる方法はないか、と、筐子は一計を案じたのだ。
 そして、砂賊という輩に協力させて、飛空艇の確保と移動、そして燃料を補充するまでの保管と隠蔽を画策したのである。
「ま〜かして! 手下100人引き連れて戻るから!
 飛空艇はワタシ達、『魔境戦隊ガーディアン』のものよ!」
 うきうきと歌でも歌いそうな勢いで、筐子は砂漠を突き進んで行った。


「懐かしいわね。砂漠に来るの、すごい久しぶり。
 キューと会った時以来じゃない?」
 ゆっくりと砂漠を見渡したリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が、パートナーのキュー・ディスティン(きゅー・でぃすてぃん)に話しかけた。
 2人の出会いは、砂漠に程近い荒野だ。
 キューはリカインに会うまで、そんな寂しい場所に住んでいた。
「まあ、そうだな。
 あれからそれほど経っていないはずだが、随分と久しい気がする」
 それはきっと、リカインと契約してから、目まぐるしく日々が過ぎていくせいだろう。
 全く、この少女は自分を飽きさせないというか、昨日を回顧する暇も与えないというか。
「それより、どういうつもりなんだ?
 懐かしさに浸る為に砂漠へ来たわけじゃないんだろう。
 噂の砂賊が目的とも思えないし……何を考えている?」
「ふっふっふー。まあね、ちょっと考えてることがありまして」
 意味深に笑うリカインに、キューはそれ以上問うのをやめた。
 どうせ、どんな理由にしても、自分は最後まで自分の意志で、彼女に付き合うのだ。

 リカインの足が、歩き出そうとして、ふと、止まる。
「…………、キュー、私、パラミタが好きよ」
「? そうか」
 こんな荒涼とした風景ばかりが広がる世界でも、それでも、好きだと素直に言える。
「……『ヒ』君や、『カゼ』君は、好きじゃないのかしらね」
 聖地を魔境に変えたのには、どういう感情が絡んでいるのだろう。
 彼等は魔境という場所を、好きなのか、嫌いなのか。

 ああ、そうか、とキューは思った。
 リカインは今、全てを見届けるか、それとも阻止すべきかという、選択の岐路に立っているのだ。
「さて、急ぐわよ!」
「立ち止まっていたのはリカだろう……」
 言いながらも、キューはリカインの後に続いた。



「砂漠には、ミャオル族という、猫型生物の住む村があるんだが……砂賊というのはまさか、ミャオル族のことではないだろうな」
 彼等であれば、顔が利くので、協力を仰ぐこともできるのだが、と、イレブンは考えていた。
「ああこら、パントル、何でも拾って落書きしない」
 突然蹲ってゴソゴソとし始めたパートナーの頭を叩いて再び進む。
 ああ、しょっ中前線に突撃しようとするカッティ・スタードロップ(かってぃ・すたーどろっぷ)の首根っこを掴まえて連れ戻し、こうしてパントルの頭を叩いて連れ戻し、俺の属性は保育士か、と自嘲する。
 そんなことを思ったとカッティに知れたら激怒されるだろうので勿論言わないが。
「ココ、平らな石が沢山あって、オモシロイ」
 パントルは、落書きのしやすい石があちこちに転がっているのを見て、嬉々としている。
「というか、これは多分、遺跡なんだろうな……殆ど砂に埋もれているが」
 パントルが喜んでいるのは、壁の一部か、柱のカケラか。
 風化して寂しい気配が漂っている。


「雰囲気的には、いかにも賊の類が現れそうな感じがひしひしとしますが」
 気楽に歌いながら歩いていく荒巻 さけ(あらまき・さけ)の歌声をBGMに、朱 黎明(しゅ・れいめい)が周囲を見渡す。
「現れるでしょうか?」
 パートナーのネア・メヴァクト(ねあ・めう゛ぁくと)は、言いかけてはっと口を閉じた。
 ズドドドド、と、何か地響きのようなものが聞こえてきて、黎明はにやりと笑う。
「来たようです」

「砂賊か!」
 ぎらりと瞳を滾らせた松平 岩造(まつだいら・がんぞう)が、武器に手をかける。
「何か近づいて来ますわ。……あれは……?」
 ――それは、巨大な毛玉。というのが第一印象だった。
 高さ2メートルほど。数は、数え切れない。
「可愛い、と言ったらダメですか?」
 ネアが控え目に言って、黎明は呆れる。
 男の自分には解らないが、確かに可愛いのかもしれない。
 あれがそのまま、1/50とかになれば。
「いや、大き過ぎでしょう……」
「で、ですよね」
「あれは……スナネズミ?」
 日野 晶(ひの・あきら)が眉を寄せて呟いた。
「何ですの、それは?」
 パートナーのさけが訊ねる。
「砂漠に、そんな巨大ネズミがいるという話は聞いたことがありますが……砂漠について詳しいわけではないので。ましてや」
 あれが乗騎用の獣だなどと、誰が思うだろう。

「止まれ! お前達!!」

 彼等の正面に立った、灰色と茶色の中間色の毛並みをしたネズミの背には、若い女性が乗っていた。
 ネズミは夥しい数が何時の間にか彼等を取り囲んでいたが、上に人を乗せているのは、この女性の他、2人ほどである。
 正面の美女は、厳しい視線で、さけ達を睨みつけていた。
 岩造が、正面の女に叫んだ。
「貴様が砂賊か!? 私は、女とて容赦せんぞ!」
「はあ? 何言ってんのよ!
 あたしはこの辺を縄張りにしてるトレジャーハンター。リシアよ!」
「トレジャーハンター?」
 つまり、宝探しを生業にしている者のことだ。
「何!? じゃあ今回もハズレ!? 戦闘はなしってわけ!?」
 カッティの言葉は、半ば悲鳴だ。
 一方で岩造も、
「何だ、人違いか……」
と武器を収めようとしたが、でも! とリシアは叫んだ。

「ここのところ、トレジャーハンターも景気が悪くてね!
 先だつものがなけりゃ発掘作業もできない有様よ!
 というわけで、私の縄張りに入ってくる連中には活動費をカンパして貰ってるというわけよ!
 アンタ達、有金と身ぐるみ全部置いていって貰いましょうか!」
「強盗じゃん!」
 カッティが呆れて叫ぶ。
 ぴくり、とリシアの眉が跳ね上がった。
「言ってくれるじゃないの。
 アンタ達、地球人でしょうが。自分を棚にあげてよくも言えたわね!
 スナネズミ達! こいつらを潰してやんなさい!」
 リシアの叫びと共に、巨大ネズミ達が突撃してくる。
 逃げ遅れたパントルが、むぎゅ、と下敷きになった。
「パントル! よっくも!」
 カッティが怒りを表す。

「……困りましたね。
 戦いに来たんじゃないんですが」
 とりあえず銃を抜きつつも、黎明は溜め息を吐く。
 しかし交渉は「砂賊」に対してするつもりでいたのだから、彼女がそうでないというのなら、関係はないのか。
「が、岩造さま、どうしたらよいのでしょう?」
 ホーリーメイスを手にしつつ、スナネズミのプレス攻撃から逃げながら、フェイト・シュタール(ふぇいと・しゅたーる)が岩造に判断を求める。
 ゆるスターをこよなく愛するフェイトにとって、例えサイズが守備範囲より遥かに巨大でも、攻撃するのは躊躇する。それは岩造も同様だ。
「もらったあああ!」
 そこへ、いつの間にかスナネズミを降りていたリシアが、岩造の下手から大剣を振り抜く。

 ビキ! と、岩造が石になった。

「石化!?」
 ファルコン・ナイト(ふぁるこん・ないと)が目を見開く。
「安心なさい、時限式よ! あたしは人殺しはしないわ!」
 高らかに笑うリシアに、やれやれ、と思う。
 銃声が響いた。
「スナネズミ45号!?」
 鮮血を散らしながら、ばたりと倒れるスナネズミに、リシアの顔色が変わる。
 倒れたスナネズミに走り寄り、撃った黎明を睨みつけた。
「アンタ……こんな可愛い生き物をよくも!」
「けしかけておいて何を言うんですか。茶番はこの辺で」
 黎明は肩を竦める。
「……あの、話し合いをしませんか」
 ネアが申し出たが、リシアは睨み返しただけだった。
「じゃあ、強硬手段しかないわけね!」
 言うなり、筐子が攻め込んだが、リシアはそれを素早く躱す。
「避けた!?」
 驚いた筐子の影、死角から、さけがリシアよりも早く懐に飛び込み、リシアの諸肌の胴を薙ぎ払った。
「くうっ!」
 数メートル先にあった壊れかけの壁まで吹き飛ばされ、叩き付けられて、リシアの意識が遠のく。
「他愛無いですわ!」
 さけはしかし、驚いてリシアを見た。
 確かに斬ったはずなのに、リシアの胴に傷がない。
 打撲はあるようで、苦痛に顔を歪めているが。
 歩み寄ったさけは、リシアの喉元に剣を突きつける。
「わたくし達から盗るものなんて、何もありませんわよ。
 それでも奪いたいなら、相応の覚悟をしていただきませんと。
 ここに刺しても、傷はつかないのでしょうか? 試してみてもよろしいでしょうか」
「……好きにすれば? 地球人になんか、絶対下手に出るもんか!」

「――ま、待って、待ってください! 姐さんを勘弁してやってください!」
 スナネズミから転がり降りるようにして、男が2人、さけの前に飛び込んだ。
「姐さんは、ちょっと金の亡者なだけで、普段はただうるさいだけの無害なトレジャーハンターなんですうう」
「ちょ、ちょっと、しがみつかないでいただけません?」
 慌てるさけから、晶がべりっと男をひきはがす。
「情けないこと言ってんじゃないわよ、ファイヤーウッド! サンダーエッグ! 相手は地球人よ!」
「……随分、地球人がお嫌いのようで。理由を聞いてもいいか?」
 ミャオル族じゃなかったんだな……としみじみ呟いて、何を今更、とカッティに突っ込まれていたイレブンが、気を取り直して訊ねれば、リシアは忌々しい表情を浮かべた。
「アンタ達地球人はあたしらの敵よ!
 我が物顔でシャンバラを侵略して、遺跡という遺跡を荒らし回って根こそぎ持ってかれて、アンタらが通り過ぎた後は髪の毛一本残らないって、トレジャーハンター仲間から恐れられてるわ!」
「……それ、すごい誤解ですわ」
 さけが溜め息をつく。
「やれやれ、とんだ無駄足だ」
 黎明は肩を竦めたが、思い直したようにじっとリシアを見遣った。
「な、何よ」
「いえ……素肌にビキニ鎧なんて、どこかのゲーム衣装みたいのは、前世紀の遺物かと思ってたんですが、結構中々いいものですね、とか思っている自分に失笑、みたいな」
 ぱかん、とリシアの口が開く。
「それは姐さん自慢の、防御力+50鎧ですから!」
 何故か得意げに、取り巻きの男がバラした。
「マジックアイテム? じゃあひょっとしてさっきの……」
 さけの剣撃に負傷しなかったのは、一見無防備にしか見えないビキニ鎧のお陰だったのだ。
「他にもですね、素早さ+15リング、石化+攻撃力+50ブレード、魔法防御+……」
「いい加減にしなさいッッ!!」
 リシアの怒鳴り声に、ひいっと黙る。
「……成程、コテコテのマジックコーティングだったわけですか」
 石化から戻った岩造が、乾いた笑いを漏らす。
 おかしいとは思った。
 地球人が嫌いなら、パートナーはいないはず。
 契約者でないリシアが、筐子やさけと同等に渡り合えるほどの力を持っているわけがなかった。
「コーティングしてても瞬殺でございましたけれど」
 ぽつ、とさけが呟いた。
「それはこの付近の遺跡で発掘したものでございますか?」
「ノーコメントよ」
 ぷい、とリシアは顔を逸らし、取り付く島が無いですね、と晶は肩を竦めた。
「……何だかもう、どっと疲れたわ」
と筐子が溜め息を吐く。晶が苦笑した。
「何だかとても寄り道をしてしまった気分ですわね。
 イルミンスールの聖地の方は大丈夫でしょうか?」
「イルミンスールの聖地?」
 ぽつ、とリシアが呟いて、集まった視線に、しまった、という顔をした。
「何だ? 君は、何か知っているのか」
 ファルコンが詰め寄る。
「べ……別に! イルミンスールの聖地っつったら、ブルーレースのことでしょ、名前知ってるだけよ、行ったこと無いし!」
 岩造やさけ達は顔を見合わせる。
「……ちなみに、えーとこれはついでとして訊くけど、他意はないんだけど、他の聖地の場所なんて知ってたり?」
「…………………………全部の聖地を知ってたりするわけないでしょ?
 あと知ってるのは……ヒラニプラのクリソプレイスと、キマクのモーリオンくらいで」
「キマク!?」
 その場にいた全員の声がハモった。

 諦めて、リシアが説明したところによると、キマク西部の荒野地帯に、ストーンサークルがあるという。
「元々、キマクの聖地はオアシスだったのよ。
 でも、町とか造って人の手が入りまくって”力場”の気が乱れちゃって、代わりに当時の大魔道師が人工の力場を作り直して、以来そこを護ってる、って、そういう伝説!」
「キマク……」
「一刻も早く皆に知らせないとなるまい」
「しかしキマクだったら、ザンスカールに行くよりも、真っ直ぐ向かってしまった方が早い。
 キマクに行ってから連絡……では、遅いか」
 大きなあくびをかくカッティを軽く小突きながら、イレブンが考え込む。
 ここからでは携帯電話の電波も届かない。一刻も早く伝えたいが、いつのタイミングで、仲間達に情報を伝えられるだろう。
「キマクに行くには、街道まで出た方が早いです。
 街道まで出れば、電波も届くはずですわ」
 ファルコンやフェイトの発言が続き、意見を出し合うのを、リシアは不審そうに睨みつけた。
「……アンタ達、一体何をやらかしてんの?」
「それは、話すと長くなるんだが」
 イレブンが肩を竦める。
「聖地を暗黒属性にひっくり返そうとしてる輩がいるんですよ」
「一言じゃないの!」
 黎明の説明に、リシアは呆れて、それから少し考えて、腰に下げていた剣を彼等に向けて放り投げた。
「『ソードオブバジリスク』」
「え?」
「石化の効果は一瞬から永遠まで調節可能。
 有り難く使いなさいよ! すごいレア度高い剣なんだからね!」
 リシアはぷいとそっぽを向く。
「……これはこれで感謝するとして……君、まだ何か隠していませんか?」
 耳元で囁かれて、ぎく! と反応した。
「何かさっきから、密かにそわそわしてましたよね。例えば、すぐにザンスカールに連絡できるようなマジックアイテム、とか?」
 にやりと笑う黎明に、リシアは地団太を踏んだ。
「ああもう!」
 そして心底悔しそうに、
「スナネズミ45号が生きてたことに免じて、1回だけ協力してやるわよ!」



「あーあ、何よ、それじゃ、手下100人はナシってことぉ!?
 とんだガセネタつかまされたもんだわ!」
 憤る筐子の携帯電話が鳴った。
 アンテナも電波もものともしない、パートナーのアイリスからである。
 ピ、と通話ボタンを押した筐子の精神に、追い討ちをかける報せが届いた。

「飛空艇を奪われたあ!!!???」

 一体どういうことよ!? と、叫ぶ筐子に、受話器の向こうでアイリスも説明に困っている。



「うふふ。キャプテンハーレック、とか。
 きゃー、どうしよう、困っちゃいます」
 飛空艇の操縦室。
 シートに腰を下ろして、ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)は悦に入っていた。
 燃料がなくて飛べないけれど、皆が飛空艇を降りた今、この飛空艇は私のもの。
 手放すことなどできるわけもなくて、飛空艇に残ったガートルードは、嬉しくて笑顔が止まらない。
 幸せそうにニヤニヤしたり妄想したり照れたりと忙しいガートルードを、パートナーのシルヴェスター・ウィッカー(しるう゛ぇすたー・うぃっかー)は微笑ましく眺めている。
「子供みたい」
 ふっと笑ってシルヴェスターは、キャッキャと1人はしゃいでいるガートルードを操縦室に残して、そっと出て行く。

 艇内を歩いていて、シルヴェスターは、話し声を聞き付けた。
「わしら以外にも残っとるのがいたんか?」
 眉を寄せ、話し声に向かって足を早めた。


 カール・グスタフ(かーる・ぐすたふ)は、砂漠に墜落した飛空艇を見付けて驚いた。
「これは、一体?」
「おっきいお船でしゅね。グスタフパパよりおっきいでしゅ」
 カールの肩車で、カールと同じ角度で飛空艇を見上げ、ミニー メイ(みにー・めい)が瞳を輝かせる。
「何故、こんなところに飛空艇が……?」
「これは、私達が見付けてここまで乗ってきたのです」
 アイリス・ウォーカーが現れて、聖地クリソプレイスの地下都市で飛空艇を発見した経緯を説明する。
「この飛空艇は、聖地クリソプレイスを制圧した、『魔境戦隊ガーディアン』の戦利品であることを宣言いたしますわ!」
 成程、とカールは頷いた。
「状況は、理解したのであります。
 シャンバラ教導団の名において、聖地クリソプレイスを制圧し、先駆けて飛空艇に留まっていた『魔境戦隊ガーディアン』の所有宣言を、権利として非公式に承認します」

「冗談じゃありませんわ!」
 カールの宣言に、憤りの声が割って入った。
 シルヴェスターの連絡を受けて慌ててここへ来た、ガートルードだ。
「この飛空艇は、私が最初に見付けたのです。
 教導団の名を盾に、勝手なことを言わないでください!」
「まあまあ、ちぃと落ち着きんさい」
 噛みつかん勢いのガートルードの肩を、後ろからぽんぽんと叩く。
「だって……! 教導団と言えば何でもまかり通るなんて」
「違う違う。その兄サンの言うんは要するに、『先に見付けたモン勝ち』ちうことじゃろ。
 親分がいること知らんかったけえ、何たら戦隊のもんだって言うとったけど、もう知ったんじゃけ、先に見付けた親分がここにいるゆうんは、親分のものじゃって、教導団が正式に認めたゆうんじゃと」
 からからと笑ってそう言ったシルヴェスターに、はたっとガートルードは目を見開く。
「え、ええっ?」
 ぱあっと顔を輝かせるガートルードとは逆に、アリシアとカールは慌てたが、笑顔で
「そうじゃろ?」
と言われて、答えに詰まる。

「……それを言ったら、そもそも元々は、シャンバラ人のものなのではないかのう」
 ぽつりと、聞き慣れない声が加わって、一同ははたっと視線を向けた。
 そこには、小柄な老人が、背後に1人の女性と、2人の教導団軍服を身に着けた若者を従えて立っている。
「飛空艇だ、すげえ」と、2人の教導団生徒はきょろきょろと見渡していたが、女性は無表情、老人は苦笑していた。
「シャンバラ人の住んでいた町を”制圧”とは、穏やかでないのう。
 でもまあ、考古学の歴史は即ち、略奪の歴史じゃよ」
 肩を竦めてそんなことを言って、老人は物珍しそうな表情を浮かべて、すたすたと飛空艇の中に入って行く。
「別に、そういう意味では……」
 言いかけるアリシアの言葉にも興味を向けず、
「ちょっ……、待って下さい。
 これは私の飛空艇です。勝手に入らないで貰えますか」
と、ガートルードが追い出そうとしたが、伸ばした腕は、がしっと女性に掴まれた。
「つっ」
 痛みに顔をしかめる。
「どうしてこんなところで墜落しているんだ?」
「操縦ができなかったのと……あとは燃料切れらしいんですが」
 教導団生徒に訊ねられ、とりあえずアリシアは答える。
「燃料切れって……飛空艇の燃料って機晶石だろ? どうして」
「ほう、ほう」
 あちこちを眺めながら、老人はうんうんと頷き、振り向いて
「サルファ」
 と、女性を呼んだ。
 呼ばれた女性は返事もせず、くるりとガートルード達を見たと思うと、有無を言わさない力で、全員を飛空艇の外に放り投げたのだ。
「何をするんです!?」
と、叫ぶガートルード達の前で、飛空艇が宙に浮き、全員が驚いた。
「どうして……!」
 アリシアが呆然と叫ぶ。
「私の飛空艇!」
 悲鳴を上げたガートルードが追いかけようとするが、流石に飛空艇の方が早い。
 飛空艇は、まるで赤ん坊のよちよち歩きのような覚束無いよろよろ飛行で、ほぼ南の方角へ飛んで行ってしまったのだった。