天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

のぞき部あついぶー!

リアクション公開中!

のぞき部あついぶー!
のぞき部あついぶー! のぞき部あついぶー!

リアクション


第10章 星


「ガオー!」
 声が異常に高い、今年の干支であるトラが参道の入口に立っていた。
 ピンクのリボンを付けたトラのゆる族だ。
 トラは、消火も片付けも終わって再び参拝客が増えてきた参道を颯爽と走り抜けていった。内股で。
「ガオガオー!」
 トラはそのまま箒とチリトリと大きな鞄を持って、偽テントに入っていく。
「すみませーん。テント内清掃させていただきます〜。担当のリリィ・エルモア(りりぃ・えるもあ)です〜!」
 そんな名前の女子なら蒼空学園にいたような気がするが、それにしては声が高すぎるような気がする。
 それに、リリィはゆる族ではなく剣の花嫁だったはずだが……さて?
「あ、お願いします。どうぞー」
 1人でお茶を飲んで休憩していたのは、あつい部のミレーヌだ。
「ここでお茶してたら、お仕事の邪魔ですかー?」
「そうですねー。……あ。そうだ。まだこのテント、お使いになりますか〜?」
「はい。あとでみんなここに集合することになったんで……」
「へええ!」
 と思わずあげた声は何故か妙に低かった。
「あれ? おかしいなー」
 小さい頃から発声練習を積んできて歌が得意なミレーヌは、声の違いに気がついた。
 タイガー・リリィは、背を向けてこそこそ何かすると、また振り向いて元の高い声で喋り始める。
「とにかく清掃しますので、早く出て行ってもらえますか〜」
「あ、はーい。すみませーん」
 ミレーヌはじろじろ見ながらテントの外に出た。
「さて部活だ。あつくならなきゃね」
 大きく深呼吸して……目つきが変わった。
「ファイファーッ! あれ? アサ兄、なにやってんのーーーっ!!!」
 守護天使のアーサーは、庭園でまったりしていた。
「ん? アル? ほんとにアルなのか?」
「アサ兄! こんなとこに座ってちゃ、あつくないよ! ぜんっぜん! あつくないよっ!!!」
「あ、ああ。どうしたんだ? なんかまた雰囲気ちがうな……」
「男なら、黙ってこれを飲むんだーーっ!」
 ミレーヌはアーサーを無理矢理あつくするために酒を呑ませた。
 アーサーはいつもは落ち着いているのだが、酒が入るとある意味あつくなるのだ。酒癖が悪いとも言うが……。
 ぐびぐびぐび……。
「酒、もっとないのか?」
「うっ……足りなかったか!」
 2人は酒を求めて、境内の屋台に向かった。
 さて、タイガー・リリィは鞄から大量のトリモチを出すと、あたり一面に敷き詰めていった。
「ガオガオのガオっと。……これで、あとからやってきたあつい部はみんなここでネバネバ……“あつい部ホイホイ”だぜぇ」
 タイガー・リリィは明らかに男の声で独り言しながら、作業していた。
 ミレーヌとアーサーは、焼きそばの屋台でビールを買った。
 ここは、エルのパートナー、ギルガメシュがやっている店で、すぐ隣にベンチがあって本物のリリィが焼きそばを食べていた。
「こんにちは! 焼きそば美味しいですか!!!」
 部活中のミレーヌは物怖じせず、誰にでも話しかけた。
「え? う、うん……美味しいよ?」
 リリィは気になることでもあるのか、ボソボソッと答えた。
 これにはあついミレーヌが納得できない。
「お名前……なんて言うんですか! 思いっ切り大きな声で言ってみて!! さあ! きっと気持ちいいから!」
「リリィ・エルモアだけど、大きな声出さなくてもいい?」
「リ、リリィ・エルモア??? もう清掃終わったの? トラの着ぐるみは? ていうか、声が違う……」
 ピキィーン!
 閃いたのはリリィの方だ。
 そもそも、パートナーのにゃん丸が何か悪さしてそうな気がする……という女の「超感覚」でこの神社に来ていたのだが、今、点と点が繋がった。
 昨夜にゃん丸は寝ないで何かやっていたようだが、朝起きたら黄色と黒の糸が転がっていた。金持ちの知り合いの家では、虎の敷物がなくなったと騒いでいた。
「間違いない……トラの着ぐるみ、どこにいたのお!?」
 ミレーヌの肩をぐわんぐわんして、あつく問い質す。
「あつくなったね! 本殿裏のテントだよっ。ここから見て、奥の方だよっ!!!」
「ありがとう!!!」
 リリィは焼きそばを一口で平らげて走っていった。
「それでいい。それでいいんだよーっ! ……あついって、やっぱり気持ちいいねっ!」
 ミレーヌが何度も頷いていた。
 リリィは猛スピードで偽テントに辿り着くと、仕事を終えて表で立ちしょんしてるトラを見つけた。
「げげっ!」
「ちょっと、そこのあんた」
 慌てたトラは、ヘリウムガスの缶を転がしてしまった。
「女性が立ちションしてるところにきて……な、なんでござるかな? にんにん!」
「何がにんにんよ。声変えたって口調変えたってバレてんのよ。にゃん丸でしょ!」
「……なんの……ことかな……俺は……白虎の……ホワイト・タイガー……」
「にゃん丸だろっ! 白くないし!」
「俺か? 本当は俺、ナンパバカの周ってんだ。よろしくな。そこのお姉さん、俺と愛し合わないかいっ?!」
「にゃん丸っ!!! こっち向きなさいよっ!!」
 トラの着ぐるみは体の前にチャックがついていて、前は立ちしょんのために首から股間まで全開だ。既にバレてるが、顔を見られたらヤバい! と思ってるにゃん丸は必死に抵抗する。
「わあああ。しょんべんひっかかるよー」
「うるさい! この変態バカっ!!」
 ドカッ!
 にゃん丸の尻を蹴っ飛ばした。
「おっ。あっ。ちょ。と、と、と、と……」
 中途半端に着ぐるみを脱いだ状態だったのが運の尽き。
 バランスを崩して……テントの中に突っ込んで転んだ。
「あ、ああああ!」
 にゃん丸は、トリモチの上で正座していた。
 中から断末魔の叫びが聞こえたが、リリィは事態を見ることなく去っていった。
「転んだくらいで大きな声出して……ったく!」
 にゃん丸には、トリモチまみれになったツラい過去がある。
 今回はそのトラウマをのぞきのために乗り越えての作業だったが、自分がはまってしまうという最悪の事態に、精神は崩壊寸前。脳みそにはトコロテンの芽が出ている。
 それが他人からもはっきりと見て取れるのは、股間である。ちんちんをしまい忘れているのだ!
 そして、ここから悲劇の連鎖がはじまっていく。
「うああああああああああ!!!!!」
 にゃん丸は我を忘れて叫び声をあげると同時にゴールを決めたサッカー選手のように思い切り体をそらして……両手を後方のトリモチにくっつけてしまった。
 つまり、ちんちんをぶらんぶらんさせたまま、まるでそれをアピールするかのような格好だ。
 そのとき……
 ザッザッザッ。
 表に足音が近づいてきて……止まった。
「リリィか? ……来るな。来ちゃだめだ。……でも、ごめん。助けてくれよぉ……いや、来ちゃダメだ……」
 入ってきたのはリリィではなかった。
 浅葱 翡翠(あさぎ・ひすい)だ。
「翡翠君……?」
「にゃん丸様……おやおや。これはこれは」
 翡翠はにゃん丸の姿を見て、にやりと笑った。
 にゃん丸はホッとした。翡翠と友達というわけではなかったが、のぞき部の仲間と親しくしているのを知っていたからだ。のぞきには興味がないみたいだけど、邪魔をすることはないだろう。それに、性格的にもあつい部に入るとは思えなかった。
「いやあ、翡翠君が来てくれて助かったぁーーー。悪いけど、ちょっと助けてくれる? あつい部とかいう悪の軍団に虐められてさぁー」
「悪の軍団というのは、やっぱりあれですかね。犯罪行為なんかをするんですかねー」
「犯罪行為?」
「そう。たとえば……女性の身体をのぞく、とかですね」
「ちょちょちょちょっと待ってくれよぉ。翡翠君はうちの部長とか薫君と友達だよねぇ?」
「ええ、わかりますかね? ……大切な友達がのぞきなどという蛮行に手を染めている、そんな悲しい気持ち。わかりますか?」
「ひ……すい……くん?」
 翡翠は、ポケットからペンチを取りだした。
「のぞき部の皆様は、意志が強い。やめろと言っても、決してやめないんですよね。のぞきソウルとやらをお持ちのようで……」
「そ、そのペンチは……?」
「私もつらいんです。でも、心を鬼にして、やるしかないんです。のぞきソウルを折れないのなら、別のモノを折るしかありません!」
「ま、まってくれええええ!!!」
 翡翠は、両手両足が固定されて動けないにゃん丸のちんちんを……ペンチで挟んだ!
「にゃん丸様。……覚悟はよろしいですか?」
「まって、まって、まってまってまってまって……うおおおお。しかし、やるっきゃねえ、もうあれをやるっきゃねえ!」
 にゃん丸は目をつむると……手当たり次第に知り合いのかわいい女の子のえっちな姿を妄想した。
 その妄想力は凄まじく、リアルに声が聞こえてくるようだ。
(あんっ。……あっ……あん。……だめっ……もう……それ以上は……だめなんだからねっ。……美海ねーさま!)
 目をつむって沈黙したにゃん丸を見て、翡翠は感心した。
「お見事です。覚悟を決めたのですね。では……参ります!」
 ペンチを思いっ切り……ねじった。
 が!
「まっ! まさか……この一瞬の隙に!!」
「うおおおおおおおおおお!(妄想中)」
「か、堅い! 折れないっ!!!!!!」
 しかし、こうなったらもう翡翠も意地だ。全体重をかけて折りにかかる。
「折ると言ったら、折りますっ!!!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!(絶賛妄想中)」
 そのとき――
「ああっ!」
 翡翠の手が汗で滑り、ペンチが床に落ちてしまった。ペンチはトリモチについて、使えなくなってしまった。
「しまった……」
 翡翠のペンチを握っていた手は、筋肉がバカになっていた。
「ぐううう……。のぞき部の力が、これほどとは……私がまだ甘かったようです」
 敗北を認め、悔しさのあまりにゃん丸を救いもせずに去っていった。
「ふしゅううううううううう〜〜〜〜〜(妄想解除中)〜〜〜〜〜〜〜(解除成功)」
 そして、勝者の余裕か、トラの着ぐるみを脱げばいいという単純な脱出方法に気がついた。
 この姿勢のまま、両手を着ぐるみから引き抜くのは大変な重労働だが、なんとかできないことはなかった。
 が、その反動で前に突っ伏して、今度は土下座してるような格好でトリモチに固定された。
「あああ! やっちまったあ!!!」
 そして、にゃん丸の脳みそはトコロテンになった。
「んぱーんぱー」

 その頃。境内では――
 焼きそば屋でアーサーの酒癖にスイッチが入って、あつい部活動が始まっていた。
 何故か蝶ネクタイ付きの付け襟、手首にカフス、腰のみの黒エプロンという出で立ちで大声であつく笑っている。
「あはあはは。あははのはーっ!!! うぷ」
「うぷ?」
 アーサーは、目の前の大きな黄色のポリバケツの前にたつ。
 その中にゲロゲロゲーするつもりだ!
「待ったあっ!! こ、これだけはダメ〜!」
 ギルガメシュは、慌ててもうひとつの青いポリバケツを持ってきて、差し出した。
「こっちなら幾らでも!」
「なんだそれ? どういうことなんだよッ! ええ? ゲロゲーロが引っ込んじゃったよ〜。何が入ってんだよ、こっちの黄色のポリバケツはよぉ〜」
「何も入ってません……」
「嘘つけ〜!」
 パカッ!
 フタをあけてしまった……が、
「くっさあ〜。生ゴミが入ってるだけかよ〜。なんなんだよ〜。ひゃあ〜。くっさ〜」
 鼻をつまんで、うずくまっていた。
 アーサーのあつい部への入部は、時期尚早かもしれない。
「ああ、アサ兄……! 情けないよーッ!!」
 ミレーヌはポリバケツのフタをしめ、あつい部が集まっている本殿前に向かった。
 自分が敵の攻撃の芽を摘み取るチャンスを逃しているとは、露ほども思わなかった……。

 あつい部は、本殿前に集まっていた。
「のぞき部はまだいるはずだ。必ず、ここにやってくる。仲間を助けにくるはずだ……」
「んぱー。んぱー」
 黒こげののぞき部員たちは、シルヴィオに縛られてまさに縄文式土器になっていた。
 あつい部員の佐伯梓は、望遠鏡でのぞき部の残党を捜していた。
 参道の向こうまでよく見えたが、いかんせん誰がのぞき部員かわかってなかった。
 梓は面白そうだから焼却炉に行っただけで、まだ「あつい」ってことがなんなのか、よくわかってなかった。
 望遠鏡には、参道の入口付近が写っている。そこには、大地がカメラを構えて立っていた。
 これは大変なヒントだ。
 大地が撮っている対象を見ればいいのだ。
「お! これだ!!」
「なにっ! 来たかっ!!」
 あつい部の連中がもうひと“あつい”できると色めき立った。
「俺が行ってくるぜ!!!!」
 梓は走り出し、慌ててパートナーのカデシュも追いかけた。
「ま、待ってください!!」
 あつい部は、とりあえずこの2人に任せることにして、望遠鏡で様子を見た。
 なるほど……何やら秘密の特訓でも積んてきたのか、傷だらけの“のぞきスター”ことトライブ・ロックスターが立っていた。
 のぞきスターは綾刀を肩に担いで立っている。
 その隣には、パートナーの千石朱鷺もいる。
 大地はこの2人を撮影していた。
「これが最後の大勝負になりますね……!」
 さすがは大地。
 やはり、大和プロデューサーが人手不足でカメラを持っているのとはワケが違った。
 カメラマンの勘と経験が、勝負所をしっかり見極めていた。
 仲間を助けるために堂々と参道を歩いていくのぞきスターの勇姿を、逃さずフィルムに収めるつもりだ。
 一方、梓とカデシュも反対側からあつく走っている。
 大地はもちろん、あつい部が来ていることを把握していて、タイミングを見計らって両者を同じフレームに入れるつもりだ。
「まだ……まだ…………よし! 今だっ!」
 両者が対峙する。
 その瞬間!
 カメラが捉えたものは――
 トライブを素通りして、すぐそばのおしるこ屋台に入る梓とそれを止めようとするカデシュの醜い争いだった!
「おしるこくださーい!!!」
 梓は、大の甘党だった。
 カデシュは、それを止めた。
「待った! 甘いものは1日1回と決めたはずですッ!!!
「だから、1回を5回にしてくれと頼んでいるんだッ!!」
「ダメです!!! それに、帰ったら今日が賞味期限のシュークリームがあるでしょうがっ!!!」
「じゃ、じゃあ……おしるこをあきらめ…………てたまるかあああああああああああ!!!! おじさん、おしるこ大盛りでッ!!!!」
 無駄にあついっ!
 これはもう撮る価値なしと判断した大地は、トライブを追いかけた。
 背後では、火術と爆炎波が無駄にあつく飛び交っていたが、振り向きもしなかった。
 そして、トライブは本殿前にやってきた。
 対するは、あつい部部長のケンリュウガー。
 至近距離で睨み合っている。
「のぞき部よ……最後にひとつ言っておく。堂々とここまでやってきた貴様の勇敢な態度、それは認めよう。だが、のぞきなどという卑劣な行為は許されることではない」
「ああ、確かに卑劣かもしれねえな。だが……悪いな。ここにはいい女が多すぎる」
 トライブは一歩も引かない。
 蒼々たるあつい部メンバーを相手に大立ち回りを演じるつもりだ。
 ケンリュウガーは、こういうまっすぐな男が嫌いではない。まっすぐにはまっすぐ、受けて立つのが男だと思っている。だが、本殿前でこれ以上の乱闘騒ぎは正義のヒーローとしては許容できなかった。
 そこで、ある部員に呼びかけた。
「科学者として、何かいい手はないか? 麻酔銃的なもので、静かに済ませてしまいたいのだが……」
 トライブは、綾刀をぶんぶん振り回して自分の相手が決まるのを待っている。
「どんな手で来たって同じことだぜー!」
 部員からの返答はなく、ケンリュウガーがもう一度呼びかける。
「よくテレビで見るクロロフィルとか、ああいうのはないか。なあ、どうなんだ? ……さ、さちっ!!」
 振り向いて、愕然とした。
 愛のマッド・サイエンティスト島村幸は、パートナーのガートナと抱き合ってあつーくキスしていた。
 あつい部を「おあつい部」と勘違いしていたのだ!
 いや、よく見ると、幸の衣装が妙にセクシーだ。へそチラ&白ニーソにガーターとの絶対領域を寒さにも24歳という年齢にも負けず出している。
 そう、これは大人の色気でのぞき部を惑わそうという作戦なのだ。
 そして、トライブはまんまと引っかかっていた。
「おお! あんた、いい女連れてるじゃねえかよ。ひゅ〜」
 しゃがんで絶対領域をじろじろと見始めた。
 これには、マイペースの朱鷺も苛立ちを隠せず、トライブをどついて教えてやった。
「トライブ。これがどういうことかわかってるのですか? あつい部でしたっけ? この人たち、トライブのことをこう思ってるんですよ。……戦うまでもない相手だ、と」
 トライブは目が覚めた。
「俺の名はトライブ・ロックスター。舐めてもらっちゃ困るぜ……。やいやいやい! いつまで抱き合ってんだッ!」
 ケンリュウガーは溜め息をひとつ。
「幸。やはり、無駄だったようだな」
 すると、幸とガートナはキスして抱き合ったままクルクル回ってケンリュウガーの前にやってきて、あつい部の部員募集ビラを示した。
「活動内容」に真っ赤なアンダーラインが引いてある。
『熱く、何かするッ! 何をするかはどうでもいい。ただ、アツく何かするッ!!!』
 無駄だろうがなんだろうが、あつくなる――それこそが、(むだに)あつい部。
 無駄にキスし続けるこの2人こそ、おしるこ1つで無駄にあつくなってる梓とカデシュこそ、正しい部活動なのかもしれない。
 幸とガートナは、それを態度で示していたのだ。
「忘れてたぜ……」
「とにかくあつくなってこそ、あつい部!!」
「本殿前だから静かになんて、そんなの間違いでしたわ……」
 あつい部のみんなは、あついソウルを掴んだ。
 そして、正義にあついケンリュウガーをのぞいた全部員が、無駄にあつくバラバラの行動を取り始めた。
「ファイファーーーーッ!!!」
 パシャパシャ!
「光が愛撫してますわー!」
「カメラはどこやーっ! 毛穴があっつくファイファーやで!!!」
「微笑みの熱き女豹! ルカルカ!! 犬よりあついよっ!」
 女豹が狛犬にあっつく喧嘩を売っている!
「親分、トマトがめっちゃ好っきゃねん!!!」
 親分が凄い勢いでトマトを食べている!
 そして、本殿に祀られている神に向かって叫ぶ少女がいる。
「あたしの名前は……ミレーヌ・ハーバートよーーーーーッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」
 思い思いのあつさの表現の中で、朱鷺は淡々とのぞき部員の縄を解いた。
「あ、ありがんぱー」
「朱鷺さん……トライぱー。さんきゅぱー」
「かたじけなぱーでござぱー」
 そして、この混乱の中、トライブの前にはあつい部最後の武闘派と言われる緋桜遙遠が立っていた。
「あなたの邪心……この破邪の鉄槌でつぶさせていただきましょう」
 ぶおおん! と大きな風音を立てて、巨大な鉄槌を構える。
 トライブは綾刀を構えて、立ち向かう。
「なーにが鉄槌だ! なめんじゃねええええええええええええええ!!!!」
「ファイファーーーーーッ!!!!!」
 勝負は一瞬だった。
 綾刀を間一髪かわした遙遠が、そのままトライブの背後を取り、その尻に思いっ切り打ち込んだ。
 鉄槌に光術を乗せて、振り抜いた。
「のぞき部! 星になれええええええええええええええええ!!!!!」
「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!」
 まさに、のぞきスター!
 トライブは流れ星となって、空高く飛んでいった。
 それを見ていたのぞき部部長の総司は閃いた。
「んぱっ。あの方角……!」
 総司は男子部員にこそこそと何か言うと……部員は次々と遙遠に向かって走り出した。
「鉄槌なんか怖くねえぞーーーっ!!!」
 ドッカアアアン!!!
 ぴゅーーーーーーーーーーー。
「鉄槌がなんだーーーーっ!!!」
 ドッカアアアアン!!!
 ぴゅーーーーーーーーーーーー。
 遙遠の前には、鉄槌を待つ行列ができていた。
「ててて鉄槌なんて、屁のカッパでござるーーーっ!!!」
 ドッカアアアアアン!!!
 ぴゅーーーーーーーーーーーーー。
 行列の出来る鉄槌屋は、最後ののぞき部員を流れ星にして……力尽きた。
 肩はパンパンで、しばらく上がらないだろう。
 そして、流れ星となった鹿次郎は冷静に時計を見て、星仲間たちに報告した。
「ちょうど、巫女さんの仕事が終わった時刻でござる……」
 そして、総司がニヤリ。
「さあ、のぞきの時間だぜ……!」