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ホワイトバレンタイン

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 狭山 珠樹(さやま・たまき)新田 実(にった・みのる)黄泉 功平(よみ・こうへい)リンネ・アシュリング(りんね・あしゅりんぐ)ビュリ・ピュリティア(びゅり・ぴゅりてぃあ)は同じテーブルでチョコ作りをすることになった。
 珠樹に誘われたとき、ビュリはちょっと首を傾げた。
 あっけらかんとしたビュリは、個別に珠樹のことを覚えてはおらず、そういえばそんな人もいたかなあと言う感じで、やっと思い出した様子だったのだ。
 リンネと功平はもっと見知らぬ仲だった。
 学校も違うのでほぼ初対面と言っていい。
 ビュリもリンネも、それでいきなり2人でお出かけだったら考えたかもしれないが、チョコ作りということで、それではみんながチョコ作りしてる会場でなら……ということになり、ここに来たのだ。
 珠樹がビュリにチョコレートケーキの作り方を教えると聞き、実に気合が入った。
「負けてらんねぇぜ、おいタマ! ミーにも作り方を教えてくれよな!」
「もちろん大歓迎ですわ」
 珠樹は頷き、功平たちの方を見た。
「もし、ご希望でしたら、お教えしますよ」
「それじゃ、アシュリングに頼む」
「あれ、リンネちゃんが作るの?」
「俺は後片付けとか洗い物とか。それから道具や材料の準備をするよ」
 功平は温度計などを渡しながら、リンネに言葉をかけた。
「火傷には気をつけてな。チョコを溶かすときとか、割りと危ないから」

 そんなこんなでチョコが出来上がり、それぞれ、食べることになった。
「繊細な作業は苦手なのに、よく出来てますわ」
 珠樹に褒められ、実が笑顔を見せる。
「では、頂くとするかの」
「……」
 実は珠樹に向けるのとは対照的な視線を、ビュリに向けた。。
 珠樹がビュリに契約を申し込んだ後、しばらくの間、珠樹とすれ違いがあった。
 それも2人の絆が確認できて、解消されたが……実はビュリをライバルと思っていた。
 しかし、パートナー契約に関しては、ビュリは変わらぬ態度だった。
「アーデルハイトの預かりになっているため、彼女の許可がなければできないので自由にはならないのじゃ」
 それは珠樹も納得しているので、不満はなかった。
 珠樹はビュリを異性であるとは思っているけれど、そこにあるのは恋愛感情ではなく、実に対しての想いに近かった。
 恋愛感情ではないがとても大切に想っているというのが一番的確な表現だ。
 正直、パートナーでなくても友達としてやっていけるとは思うが、一度申し出たのに撤回する程、軽いものではないと考えているため、珠樹はいつか契約をしたいと思っていた。
(でも、契約に固執することが、良いことなのかな……? そうじゃないほうがいい気もするけど……)
 他人事ながら、そばで話を聞いていたリンネはそう思っていた。
「アシュリング?」
 横を見ているリンネに功平が声をかけると、リンネが振り向いた。
「あ、ごめん。何だっけ?」
「アシュリングの髪はそんなに長くはないけど、時々気になったりしないか? って言ったんだ」
 功平はそう言って来る途中のお店で買ったシンプルなヘアピンを差し出した。
「どんなのがいいか分からなかったんだが、シンプルなのが一番かなと思って」
 左手に持った深緑のピンを、功平が差し出す。
「あ、ありがとう」
 リンネはそれを受け取り、お礼を言った。
「今度、こういうお菓子とかを作るって時につけさせてもらうね」
「うん、今日はお疲れ様。うまいな。これ」
「お疲れ様だよー。リンネちゃんも結構楽しかった」
 リンネが楽しかったと思ってくれて良かったと思いつつ、功平は微笑を向けた。
「今日はありがとう。また2人で何かしたり、どこかに出かけような」
「そうだね。イルミンスールと蒼空学園はライバルだけど。でも、結構、交流があるから、また遊べるといいね」
 チョコを食べ終えると、解散となった。
 珠樹はビュリに一輪の薔薇を送り、ビュリはそれを受け取って、リンネと一緒に帰っていった。