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リアクション
第1章 「にゃあああああああああ!? こ、これは『じゃたファング』ー!?」
立川 るる(たちかわ・るる)は、いつものように、空を見上げていた。
「荒野は、森と違って、視界をさえぎるものがなくていいよねー」
ざんすかの存在と「お星様」の誕生に因果関係を見出したるるは、
シャンバラ大荒野に、天体観測所を作ろうとしているのであった。
パートナーの守護天使ラピス・ラズリ(らぴす・らずり)に、
にこにこしながらるるが言う。
「ラピスは、天体観測所の設営をお願いね。
るるはいつも通り、生まれたばかりの新星に、名前を付けていくよ。
なんかこないだは、見逃しちゃった星もあった気がするし、
今回は絶対そんなことがないように、しっかり空を見張っちゃうんだから!」
ラピスは翼をぱたぱたと動かして、首をかしげていた。
いつも、るるのテキトーすぎる行動を諫めつつ付き従うラピスは、
本人としては「おにいちゃん」のつもりなのである。
「え? 天体観測所? そんな立派なもの、一朝一夕で作れる訳が……あ!
もしかして、演劇の舞台装置的なもの?
それなら僕にも作れるかも。やってみる!」
紙と木枠を大量に集め、ラピスが絵筆を取る。
「えーと、天体観測所的な背景を描けばいいんだよね。
ここはやっぱり、大型の天体望遠鏡かな。描き描き。
……会心の出来かも」
絵の描かれた紙と木枠を固定して、天体観測所の書き割りが完成した。
「観測所できあがった?
……ねえ、この四角と丸の連なりは、なんとなく望遠鏡かなーって思うけど、
この周りの四角いかたまりの集合体はなんなの?」
「スーパーコンピューターだよ!」
ラピスが胸を張る。
「……うん、相変わらずの芸術的センスだよねっ」
ラピスの趣味は絵を描くことだが、本人はその腕前を自覚していない。
「ここ、るるちゃんの所属してる『天空観賞会』の本拠地にしてもらおうよ!」
「えーと、『天空観賞会』の本拠地はイルミンスールだから、大丈夫だよ。
それはともかく、こうやって、新星発見とか実績を作って認めてもらえば、
この荒野にもっと立派な天体観測所ができるかもしれないよね。
きっとこのKY空間なら、地祇ちゃん達も見逃してくれて、
ぶっ飛ばしに来たりしないだろうし、がんばらなきゃ!」
そんなほのぼのとした漫才が繰り広げられる横で、
モヒカンたちの大声が聞こえてきた。
「ゴルァ!! ちんたらやってたらまにあわねえぞォ!!」
モヒカンの頭目が鞭を振り回す。
パラ実生達が、るるの「天体観測所」の横で、ピラミッドを建設していたのだ。
「御人良雄様の大切なお方のため、ピラミッドを完成させるのだ!!」
怒声とともに、頭目が、また、鞭を振るう。
「……えーと、えーと。な、なにが起こってるのかな?」
「るるちゃん、いったいキマクで何をしてきたの!?」
るるとラピスは、パラ実生の謎の行動にビビって思わず抱き合う。
「わかんないよー! るるは、バレンタインに良雄くんに会いにいっただけだもん!
……なんだかよくわかんないけど、これは【ざんすか内乱】とは関係ない気がするよ!」
「え? なんでそんなことわかったの? っていうか、【ざんすか内乱】って何?」
「このシナリオのタイトルだよ!
他のシナリオの伏線が張られてる気がバリバリするけど、
るるは、もう、気にしないよ!
当初の予定通り、KY空間を維持して、「るる1号」から順に、
発見したお星様をナンバリングしていくことに集中するんだから!」
「うん、僕も、るるちゃんの言ってることいつもにましてわけわかんないけど、
怖いから気にしないことにするよ……」
かくして、るるとラピスは、モヒカンの人たちは無視して、天体観測に集中することにするのであった。
一方そのころ、ざんすかはじゃたを引きずって、シャンバラ大荒野を歩いていた。
レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)は、じゃたを助けるため、光学迷彩で姿を消していた。
(ざんすかって歳は取ってても見た目は子どもでしょ。
何かね、態度がでかいワガママな子どもって、誰かさんを思い出すんだよ)
レキは、近くに隠れているパートナーの魔女ミア・マハ(みあ・まは)に視線を送る。
(そのワガママに振り回されて苦労するのは、いつも側に居る損な役回りの人なんだよね。
元々、ざんすかとつぁんだの戦いにじゃたは関係ないんだから。
勝負はタイマン、プラス、学生の応援でいいと思うんだよ。
だからこの場から離れてのんびりしようよ)
(何やらレキの視線を感じるのぉ。
妾は戦いには興味はないが、面白い事は大好きじゃ)
ミアが、眼鏡を光らせて、機会を伺う。
そこに、ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)が現れた。
「いきなり全絶ちしちゃダメだよ。
徐々に減らさないと、依存症は治らないんだよ」
ネージュは、軍事レーション用に開発され、
民間ではチョコ細工のベースの塊の素材として流通している高濃度チョコのインゴットを手にしている。
「その携帯電話みたいなレンガみたいなのは何ざんすか!?」
「じゃたのために濃いチョコを用意したんだよ」
「がるるる、チョコレートじゃた……」
「待つざんす! 今のじゃたにチョコは……」
「えいっ」
ネージュは、じゃたに接近することで自分が攻撃を喰らうリスクを考え、
距離をとった状態で、チョコインゴットを投擲した。
なお、ネージュは手元が狂って、チョコが「凶器」になる可能性は考慮していなかった。
「ガファッ!?」
ざんすかの頭にチョコインゴットが直撃する。
「今じゃ! 邪魔立てするでない」
ミアが、アシッドミストを放ち、ざんすかの視界をさえぎる。
「じゃた、ボクと一緒に行こう!」
「がるるるるじゃた」
光学迷彩を使用していたレキが、長身を生かしてじゃたを抱きかかえ、逃走する。
「あれ? ざんすかではなく、じゃたにチョコをあげるつもりだったのに……」
ネージュがまったく予想していなかった事態に驚きつつも、
じゃたを連れたレキやミアと一緒に、逃走する。
かくして、じゃたをざんすかから引き離すことに成功し、じゃたの治療が始まった。
本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)が、
イルミンスールの制服ローブ無しの上に白衣をまとって、小屋の中でじゃたを診察し始める。
「さあ、口を開けてみてごらん」
医者の卵らしく、優しい口調で涼介が言い、じゃたの舌の様子を見る。
頭から順に触診していったところで、心音を聞くということになり、
聴診器をじゃたの胸に当てようとしたところ、涼介の腕をネージュが止める。
「お医者さんごっこ……ロリコンですか?」
実年齢の半分、一桁にしか見えない外見のネージュが、涼介を見上げる。
「違う! これだけは声を大にして言っておく!
私は少しシスコンの気はあるが断じてロリコンでもショタコンでもないぞ。
私はただの『おせっかい焼きな隣のお兄さん』なんだ。
それにこれはれっきとした治療行為だ。
その証拠としてカルテも書くし、必要に応じて薬も用意する……といっても、
チョコ依存症はチョコの甘さにハマって起こるものだと思っているから
用意する薬は俗に言う高濃度カカオのチョコレートだけどね。
あっ、でも、じゃたの味覚は少し私たちと違うところがあるからこれも喜んでしまいそうだな」
涼介は本気でじゃたを心配しており、治療行為も真剣そのものであったが、
わざわざ白衣まで着ているあたり、「お医者さんごっこ」に見えなくもない。
もちろん、格好もきちんと医者らしくするつもりの涼介は真剣そのものであったのだが。
その隙に、秋月 葵(あきづき・あおい)が、
パートナーの獣人イングリット・ローゼンベルグ(いんぐりっと・ろーぜんべるぐ)とともに、じゃたを木に縛り付ける。
「何するじゃたー……」
「時間かかるけど大人が禁煙する時の方法が使えそうだよね!
チョコ依存症を治すにはこれが一番だって本に書いてあったの!
ちゃんと理性的な状態でチョコレートと対峙できるようにしてあげるからね!」
葵が、カカオの量を減らしたチョコを大量に用意して、じゃたの目の前に置く。
荷物持ちのイングリットが、つまみ食いを始める。
「これだけあるんだもん。ちょとくらいイングリットが食べてもいいよね〜♪」
「チョコレートじゃた……!」
「まずはちょっとカカオを減らしたのからだよ」
葵が、少しずつじゃたにチョコを与えようとするが、
イングリットが、本格的にチョコを食べ始める。
「ちょっとずつだと物足りないもんね〜」
「じゃたーッ!!」
「ああっ、ダメだよー!」
葵の叫びむなしく、じゃたはロープを引きちぎり、イングリットとチョコの奪い合いを始める。
「にゃー、これはイングリットのチョコだよー」
お菓子大好きで、腹ペコキャラのイングリットも譲らない。
「がるるるる、チョコレートじゃた!!」
じゃたは、空中で回転すると、イングリットに飛びかかった。
葵も一緒に巻き込まれる。
「にゃあああああああああ!? こ、これは『じゃたファング』ー!?」
「きゃああああああああああ!? 地上がきれいに見えるよー!?」
イングリットと葵は、お星様になった。
「あっ! さっそく発見! 記念すべきるる1号とるる2号だよ!」
るるが、イングリットと葵に自分の名を付ける。
「本当だ。パートナー同士、打ち上げられてるね。
なんだか、るるちゃんと一緒にお星様になった時のことを思い出すなあ」
ラピスが、感慨深げに言う。
るるとラピスもまた、「お星様経験者」なのである。
「イングリット、1号だにゃー。でも、チョコがー」
「あたし2号! 光り輝いてみせるよ!」
イングリットは地上を名残惜しそうにしていたが、葵は光術を使って輝いてみせ、ノリノリであった。
「カカオ依存症なんて……あたしたちが治療してあげるわ」
ミレーヌ・ハーバート(みれーぬ・はーばーと)と
パートナーのヴァルキリーアルフレッド・テイラー(あるふれっど・ていらー)、
同じくパートナーの守護天使アーサー・カーディフ(あーさー・かーでぃふ)、
同じくパートナーの白熊の獣人マシュー・ハンプトン(ましゅー・はんぷとん)が、
じゃたを取り囲む。
「じゃあ、とりあえず簀巻きにして、チョコレートと理性的に対峙できるようにしてあげないとね。
じゃたを縛って楽しいとか思ってないよ?」
「じゃたー」
ミレーヌが、ヨダレをだらだら流すじゃたを縛って、目の前にチョコレートを置く。
「こうして、じゃたの目の前でチョコ食べてみせてあげるのも、
全部、じゃたのためなんだよ!!」
「なんか、小さい子をいじめているような気分になるけど……、治療ならしかたないよな!」
「治療とはいえ、やはり心が痛むな……。
だが、ここは心を鬼にして挑まないとな!」
ミレーヌとアルフレッドが、チョコフォンデュを食べ始める。
アーサーは、真面目な面持ちでフライパンを振るう。
「チョコよりもメイプルが美味しいに決まってるよ!
じゃた様は間違ってるよ!
僕がじゃた様にメイプルの良さをたっぷり教えてあげるからね!」
マシューが、笑顔でじゃたに語りかける。
「オマエら、何言ってるじゃた?」
「さあ、これをチョコと思って食べてみてくれ」
アーサーが、メイプルがたっぷりかかった焼きたてのホットケーキを差し出す。
「はぐはぐ、うまいじゃた」
「そうだろう? 世界で一番美味しいのはメイプルさ」
マシューが、丸い眼鏡を光らせて言う。
「メイプルは樹液だから依存症になっても困らないよね……? 多分」
「持ってくるの大変だったけど、じゃたのためなんだぞ!
じゃたは、ジャタ族のHEROだからな!」
ミレーヌは、アルフレッドと一緒に、樽に入ったメイプルを運んできた。
「さあ、僕はこのジャタカエデのメイプルをおもゆ代わりに飲んで育ったんだ!
じゃた様もきっと気に入ってくれるはずだよ!」
マシューが、いつにないテンションで言う。
のんびり屋のマシューであったが、メイプルに対しての思い入れはすさまじいのであった。
「ごくごく、うまいじゃた」
こうして、じゃたは、着々とメイプル依存になりつつあった。
そこに、眼鏡を外した志位 大地(しい・だいち)と、
パートナーの魔道書メーテルリンク著 『青い鳥』(めーてるりんくちょ・あおいとり)が、
全力でミレーヌたちを攻撃する。
「きゃー!?」
「何するんだぞ、ぐはっ」
「わーやめろ、バカ!」
「うわああ、まだまだメイプルのよさについて語ってないのに……」
マシューは、『青い鳥』の氷術によって、氷のオブジェにされる。
「白熊だから大丈夫でしょう。
まあ、どうでもいいですけれど」
『青い鳥』が、さらっと鬼畜な発言をする。
「あなたたちがそこに伏している原因は……たったひとつです
……ミレーヌさん、アルフレッドさん、アーサーさん。
たったひとつの単純(シンプル)な答え……『あなた方は俺を怒らせた』」
眼鏡を外してドSモードになっている大地が、冷酷に言い放つ。
「大地、何するじゃた。
ミレーヌたちはメイプルをくれるいい奴じゃた」
「ああ、じゃたさん、おいたわしい!
メイプル依存なんかになってしまって!
かわりに、俺が作ったこの薬用チョコをあげましょう!」
ハーブやら漢方やら、じゃたの依存症を解くのによさそうな物質を、
聖ワレンティヌスがバレンタインに騒ぎを起した際、
じゃた用に作ったチョコを再利用して作ったチョコであった。
前回のチョコは普通の人間が口にするだけで髪が真っ白になる代物であったが、
今回味見した大地のもう一人のパートナーは撃沈してしまったので、
『青い鳥』しか連れてこれなかったのである。
「おお、この間のチョコよりさらにうまいじゃた」
「じゃたさん、チョコ依存なんかに負けちゃだめです!」
大地は、やり方はともかく、本気でじゃたを心配しているのであった。
そこに、大地の友人の城定 英希(じょうじょう・えいき)と
パートナーのドラゴニュートジゼル・フォスター(じぜる・ふぉすたー)が現れる。
「その方法じゃいつまでたってもじゃたを治療することはできないと思うなー。
糖を大量に摂ると、インスリンが過剰分泌され低血糖へと転じる。
人間は低血糖時には止め処もなく糖分を欲しがり空腹感を感じる。
きっと多分依存症の正体はこれなんだ。科学的に考えて。
つまり果糖やら炭水化物やらしか食べない「草食系女子」である限り、依存症は治らない!」
「英希がやたらと自信たっぷりにこう主張するので、
冷蔵庫の中にあった痛んだ肉で作った弁当を持ってきたんだ」
英希が解説する横で、ジゼルが弁当の蓋を開ける。
「ウッ!?」
「く、くさいです!」
『青い鳥』が顔を背け、大地が抗議する。
腐敗した肉のにおいが漂った。
「がるるるるじゃたー!!」
じゃたがロープを引きちぎり、ジゼルの「腐敗肉弁当」に飛び掛る。
「はあっ!!」
食べ終わったじゃたが、さらに襲い掛かってきたので、ジゼルが峰打ちを食らわす。
地面に倒れたじゃたが、起き上がり、ジゼルに視線を送る。
「じゃたが仲間にしてほしそうにこちらをみているよ!」
「……意味がわからん」
「しまった、そのポジションは俺がほしかったのに……!」
英希とジゼルが漫才する横で、大地が悔しがるのであった。
そんな中、椎名 真(しいな・まこと)は、
クッキーや煎餅などのチョコの含まれていないお菓子を大量に用意して、
執事らしくお茶会を準備していた。
つぁんだの味方をするのはなんとなく嫌だと思っていた地祇たちが、
お菓子に釣られて大勢集まってくる。
真のパートナーのわんこ獣人彼方 蒼(かなた・そう)が、つぶらな瞳で周りを見回す。
(ちっこい子おおい……誰かとお友達になれるかな?)
そこでは、ちみっこ地祇たちのほっこり空間が形成されていた。
「こういうの、なんていうんだっけな……ああ、そうだ。保父さんだっけ」
真が、ほんわかした笑顔でつぶやく。
そんな中、じゃたが近寄ってきて、蒼の持っている箱に手を伸ばす。
「オマエ、それ、食べないのか、じゃた?」
「これ……は、だめぇええ! 自分が貰ったチョコなのー! たべちゃだめぇえ!!」
蒼は、バレンタインに大切な人にチョコレートをもらったが、
わんこなので食べることはできず、
宝物としていつも持ち歩いているのだった。
「がるるるる、もったいないじゃた」
「チョコが食べられる体質なだけでもいいじゃないかー!!」
もめ始める二人だったが、蒼を真が肩車してじゃたと引き離し、仲裁に入る。
「これは蒼が大切にしてるものなんだ、勘弁してあげてもらえないかな?」
「……わかったじゃた」
じゃたは、理性を振り絞って蒼のチョコを奪うのをあきらめたが、
滝のようにヨダレを流し始めた。
「じゃたさん、ヨダレが……他のお菓子がたくさんあるから、それを一緒に食べよう?」
「真にぃちゃん、自分もお菓子食べるよー」
真が、蒼といっしょに、じゃたもお茶会の輪に入れる。
「ほらほら、ホットケーキあげるよー」
「すごい、見事にチョコをつかったお菓子がないんだぞ!」
「こうやって別のものを与え続ければ治療になるかもしれないな」
「じゃた様、やっぱりメイプルはすばらしいんだよ!」
復活したミレーヌとアルフレッドとアーサーとマシューが、
ホットケーキをまたじゃたに与えたので、
じゃたが蒼のチョコを奪おうとすることはなかった。
「甘くてふわふわだよぉー」
蒼も、一緒にホットケーキを頬張った。
真が、ティータイムで喉の渇いてる者にお茶をあげる。
「あぁ……癒されるなぁ」
「そういえば、ボク、じゃたに昔の話が聞きたかったんだよね。
ざんすかの昔の姿についてとか。
ざんすかは罠にかけられたと言ったけど、それは本当の事なの?」
「そなたも昔は今と違う姿をしていたのか?」
レキとミアがじゃたに問いかける。
「……ワタシはずっとこの姿じゃた。この方がみんながごはんくれるじゃた。
ざんすかは森を広げるために、邪魔する地祇や人間を片っ端からぶっ飛ばしていたじゃた」
一瞬、メイプルによってトランス状態になったじゃたが、
昔の話を語る。
「つぁんだだけでなく、ざんすかもかなり悪かったようじゃな」
「そういえば、ざんすかさんは、ジャタの魔大樹を除草剤で枯らそうとしたこともありましたね……」
ミアの言葉に、大地が遠い目をする。
「あなたも一緒に枯らしにいったんじゃないの?」
「……なんでそんなこと知ってるんですか。
じゃたさんが元気になったから、あれは結果オーライなんです!」
『青い鳥』の言葉に、大地が拳を握る。
(ざんすかは乱暴者とか言われてるけど、正直、今回は売られた喧嘩を買っただけ。
俺は、ざんすかの過去には目を瞑り黙って味方するつもりだよ)
英希は、じゃたを治療して、ざんすかの味方になってほしいと考えていたのであった。
そこに、佐伯 梓(さえき・あずさ)と
パートナーの魔道書ディ・スク(でぃ・すく)が現れる。
その姿は仲のよい孫と祖父のようであった。
「じじいは、ここにおるぞぉーー!!
「悪のラリアットじじい」を、貰いうけてやるわ!!
思いっきりやってくれいー! ひょっひょっひょ」
ディ・スクが、仁王立ちして叫ぶ。
「爺ちゃん、近くにざんすかはいなさそうだよー」
梓が言い、じゃたの方を向く。
「はじめましてー、俺、梓だよー。
校長が仲悪いとその土地の精霊も仲悪いのかなー。
うん、ぶっちゃけど―でも、いーや。
俺は、戦争は嫌だけど、地祇の楽しいお祭りみたいだよねー。
みんなで遊ぶのなら大歓迎、楽しいのは、大好きだよ。
じゃたー、あっそぼーぜー!」
「遊びじゃた? ……オマエ、チョコ持ってるじゃた」
「チョコ? うん、俺、チョコ持ってるー」
「あ、待ってくれ。今のじゃたに無闇にチョコを与えないでくれ。治療の最中なんだ」
涼介が梓を静止する。
「え? チョコ断ち?
んー、じゃあこうはどうかなー?」
梓は、木の棒にくくりつけられたチョコを、じゃたの背中に結びつける。
「がるるる、チョコがあるじゃた!」
「こうすれば、食べられないけど、いつもチョコが見られるよね?
幸せだと思うんだー」
「じゃたーッ!!!!!」
「ぐわあああああああ!? 年寄りは大切にしろよぉー!?」
ディ・スクが、じゃたにぶっ飛ばされ、「ラリアットを受ける」とか言っていたことは忘れて悲鳴を上げる。
「るる3号だよ!」
「本当だ。お星様多いなあ……」
ディ・スクがお星様になったのを見て、るるとラピスが離れた場所で会話する。
「がるるるるるるるるるるるるるじゃた!!!!!」
梓はチョコを目の前にぶら下げて暴走するじゃたという超兵器を作り出してしまったのだった。
「あれー、行っちゃった。
じゃたー! また遊ぼうなー!
爺ちゃん、あれって、もしかして、お星様になりたかったのかなー?」
「なんてことするんだ、じゃたの攻撃力は私の見た限り、ざんすかをはるかにしのぐんだぞ!」
「じゃたさんがかわいそうじゃないですかっ!!」
「せっかく、落ち着いていたんですよ」
涼介、大地、『青い鳥』が、梓に迫る。
「え? みんな、なんで怖い顔、してるのー?
わー!?」
梓は悪気皆無であったが、怒られて逃げるのであった。
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