天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

【ざんすか内乱】ざんすかの森、つぁんだの町【第1話/全3話】

リアクション公開中!

【ざんすか内乱】ざんすかの森、つぁんだの町【第1話/全3話】
【ざんすか内乱】ざんすかの森、つぁんだの町【第1話/全3話】 【ざんすか内乱】ざんすかの森、つぁんだの町【第1話/全3話】 【ざんすか内乱】ざんすかの森、つぁんだの町【第1話/全3話】

リアクション

■□■2■□■「他のシナリオにまでネタを持っていったりしなければ、許されるはずです」

 こうして、ざんすかが朔を相手に死闘を繰り広げる中。

 高いところから笑いながら、
 日堂 真宵(にちどう・まよい)が現れた。
 「おーほほほほほほほ!!
  ライバルの地祇を出汁にしたカレーを食べることで、
  その地祇の力を得ることが出来ると文献で見たわよ!
  さあ、アーサーの作ってる鍋にライバルを放り込んでしまいなさい!」

 (うふふふふふ。
  世界と土地を象徴する地祇達の更なる争いをそそのかすとか凄い魔王っぽくないかしら?)
 真宵のパートナーの吸血鬼アーサー・レイス(あーさー・れいす)は、
 巨大な鍋を大荒野に設置していた。
 「さぁ、お風呂を用意しておりマース、
  大荒野で動き回って疲れた身体を癒してくだサーイ」
 「チョコを落としてじゃたに狙われないようにするんだ!」
 「アルティマ・トゥーレで凍らされたざんす!」
 つぁんだと、朔にひどい目にあわされたあげくそれ以上のことをして振り切ったざんすかが、
 アーサーのお風呂に飛び込む。
 「お風呂は半身浴で長い時間入るのが基本なのデ〜ス」
 「がるるるるじゃた」
 「おお、チョコのにおいに釣られて、じゃたさんも来まーした。
  カレーには隠し味にチョコを入れマ〜ス。
  本来はチョコを沢山食べさせた地祇を使うのが一番なのですよー」
 アーサーは、じゃたにチョコを食わせつつ、煮込む。

 「って、なんで一緒に煮込まれているざんす!?」
 「ざんすか! こんどこそ目に物見せてやるんだ!」

 そこに、【イルミンの良心】、ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)が、
 地祇たちの仲裁にやってきた。
 「ざんすかさんも、つぁんださんも、
  2人とも、同じシャンバラ地方の地祇さんなんですから、争わなくてもいいはずです!
  女王候補のことだって、シャンバラが国としてまとまるためのもので、
  都市ごとに優劣が付くのはおかしいですよっ!」
 「元はといえば悪いのはつぁんだざんす!」
 「うるさい! シャンバラを支配するのは僕なんだ!」
 「ふっ……同族どうしで争いとは、これだから地祇は不人気なのよ」
 高い場所から、ソアのパートナーの魔道書『空中庭園』 ソラ(くうちゅうていえん・そら)が現れた。
 「ユーは誰ざんす!?」
 「地祇が不人気とはどういう意味だ!」
 「あなた達も、最近になってパートナー契約を結ぶ人が出てきたみたいだけど……残念だったわね。
  今、もっとも人気のあるパートナーは……魔道書よ!」
 「何言ってるざんす!?」
 「ゆるゆるBUもデュアル商品も選べる僕たちが不人気なわけないじゃないか!」
 「ふふふ……嘘だと思うなら、各学校の入り口から検索機能を使って調べてみることね。
  圧倒的な契約数の差に、絶望しちゃうかもしれないけど」
 ソラが、悪役っぽく言う。
 「そんな風に初めて会った方たちを煽れるなんて、姉様は、やっぱりすごいです」
 ソラの双子の妹の魔道書『地底迷宮』 ミファ(ちていめいきゅう・みふぁ)が、後ろから登場する。
 「……私が思うに、地祇さんたちの持っている『ちぎのたくらみ』には重大な欠陥があったんだと思います」
 「何言ってやがるざんす!?」
 「こんなすばらしい能力はないじゃないか!?」
 反論するざんすかとつぁんだに、ミファが優しい口調で続ける。
 「だって、契約者の方はみなさん学生です。
  そのほとんどの方が、『最初から子ども』な方ばかりなんです。
  最初から子どもなのですから、
  子どもになれる能力に必要性を感じなかったのかもしれません」
 「それに対して、私たち魔道書は、絆値という、
  誰の目にもわかる数値で、
  パートナーとの関係を深めると同時に、徐々に力を強めることができるのよ!」
 「地祇さんたちは、私たち魔道書のように、
  絵葉書を成長する武器として売り込んでみては如何でしょうか。
  絵葉書を成長させるキャラクエ、きっと流行ると思います。
  姉様の言うとおり、数字になってわかることって、
  やっぱりとても楽しいことだと思うんです。
  絵葉書で戦えたら、きっとかわいいでしょうね」
 ソラが勝ち誇り、ミファが優しく提案するも、もはや皮肉にしか聞こえない。
 「ちょっとソラ、あんまり失礼なこと言っちゃ駄目ですよ!」
 「あら、これは2人を仲良くさせる作戦よ?
  共通の敵を認識すれば、あの2人も協力しあうに違いないわ」
 「うむ、人間、共通の敵といったものが存在すれば、自ずとお互いに歩み寄る意識が芽生えてくるもの。
  それは地祇であっても同じであろう。
  地球のSF映画では、地球外生命体の侵略に対し、
  それまで争い合っていた国家同士が協力し合うといった展開も王道よ」
 ソアが慌ててソラを止めるが、魔女の悠久ノ カナタ(とわの・かなた)がうなずいてみせる。
 「え、そうだったんですか!?
  カナタさんまでそうおっしゃってますし、そ、それなら仕方ないですね……」
 「……嘘だけどね」
 ソラはこっそり舌を出してみせる。
 (なんだか、微妙に作戦が噛みあってない気がするのは気のせいか?
  うん、気のせいに違いない)
 ミファとカナタのパートナーの緋桜 ケイ(ひおう・けい)は、
 地祇たちを仲良くさせる作戦を続行しようと話を始める。
 「『ちぎのたくらみ』ってすごい能力だよな。
  若返れるなんて夢のような力だよ。
  思わず俺もどこかの地祇と契約を結ぼうとしていたくらいだ。
  おそらく誰もがそう思っていただろう。
  だが、転機はすぐにやってきた……。
  禁書の解放だ。
  アーデルハイトが鏖殺寺院や十二星華、クイーン・ヴァンガードに対抗して、
  イルミンスールに封印されていた禁書を一般学生たちにも閲覧を許可したんだ。
  どういうつもりなのかわからないが、
  イルミンスールの生徒に限らず、蒼空学園やパラ実、あらゆる学校の生徒に許可を出しちまった。
  おかげで、クイーン・ヴァンガードに対抗していたはずなのに、
  クイーン・ヴァンガードが魔道書を持っているというおかしな事態になっている……。
  そういうこともあってか、来るはずだった『地祇との契約ブーム』が、
  『魔道書との契約ブーム』によって、横から掻っ攫われちまった。
  ざんすかたちは、地祇の長がどうのとかって争ってるけどさ。
  そんな争いをしている間に、
  パラミタにおける契約者のパワーバランスは魔道書たちに覆い尽くされ始めてるんだぜ……。
  ……まぁ、そういう俺もミファと契約したわけだが。
  今は誰が地祇の長かを決めることよりも、
  いかにして地球人たちの関心を地祇へ取り戻すかの方が大事なんじゃないか?
  デュアル商品でも『ちぎのたくらみ』を使えると頑張ってるみたいだが、
  獣人のほうが数は多いし、まだまだ油断できないぞ」
 「あのタイミングで禁書の解放をして、
  全学校生徒に契約できるようにしてしまったのは、
  アーデルハイトの陰謀ざんす!」
 「なにっ!?
  あの魔女は、そんなことを考えていたのか!?」
 「なるほど、アーデルハイトめ……。
  ロリキャラは自分だけでよいと、
  地球人のロリショタ化を防ぐつもりだったのだな。
  考えてみれば、地祇たちはわらわともキャラが被っているといえる。
  今回ばかりは、アーデルハイトの判断は正しかったと言えよう」
 ざんすかが言い、つぁんだが驚き、カナタがむう、とうなる。
 「ソアのような外見の地球人が増えるのは、
  わらわとしても本意ではない。
  これ以上、ロリキャラの競争を激化してたまるものか」
 「ちょ、何言ってるんだよ、カナタ!?」
 「ええっ!?
  カナタさん、そんなこと考えてたんですかーっ!?」
 カナタが【暗黒覚醒】を開始してしまい、ケイとソアが慌てる。
 「あいつら、わたくしより悪役っぽいじゃないの!
  許せないわ!!」
 真宵が、争いの火種を作ったソラとミファを見て地団太を踏む。
 「俺様からも言いたいことがある。
  地祇は正直、とても可愛らしい種族だとは思うぜ……だというのに!」
 ソアのパートナーで、自他共に認める小さい女の子好きの白熊型ゆる族、
 雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)は、
 煽りたいだけというソラの思惑に気づきつつも、便乗作戦をする。
 「ざんすかみたいに、実はマッチョなじいさんだったなんて聞いてしまったらどうだ!?
  一部の人はショックで立ち直れないぞ!
  その点やはり、ゆる族は良いぞ。
  中の人など断じていないからな。
  みんなも、ゆる族と契約しようぜ!
  光学迷彩ももれなく手に入って、しかも、かわいい!
  この俺様のように!」
 ベアが短い指の拳を握りしめて言う。
 「ベアまで何言ってるんですかー!?」
 ソアが叫ぶ。
 「やはり、偉い人にざんすかたちはよく思われていなかったのですね」
 ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)が、
 パートナーのブルドッグ顔のドラゴニュートネヴィル・ブレイロック(ねう゛ぃる・ぶれいろっく)と、
 四天王として、「ハーレック興業」の子分を引き連れて現れる。
 「地祇……明らかに世界の根幹エレメンタルな5大元素系精霊より
  5ランクは下の劣化精霊ですよね。
  やはり偉い人の意向で格下劣化精霊になったざんすかに同情します。
  キャンペーンだからと浮かれてはいけません。
  世界の根幹エレメンタルな5大元素系精霊は一神教の神や天使。
  ザ・ワールドな存在です。
  ご当地キャラ、集落、地域神クラスの地祇とは格が違います。
  設定が決まった以上、どうにもなりません。
  ですが、私は『クイーン・ヴァンガード ハーレック隊』として、
  『精霊女王ざんすか』のシャンバラ統一の聖戦に参加します。
  地祇だけではなく精霊たちも支配下に治める天下統一の戦いです」
 「こうなったら、全種族の頂点に立ってやるざんす!」
 ざんすかが、ガートルードに煽られて両手の拳を振り上げる。
 「じゃた、ルミーナとラズィーヤの義理チョコやるから一緒に闘おうぜ」
 「がるるるるじゃた」
 ネヴィルが、じゃたに噛まれないように気をつけながら、チョコを見せて煽る。
 「ちょっと、皆さん、種族抗争はやめてください!
  このままじゃキャンペーンシナリオがメタ発言で崩壊しちゃいますっ!?」
 「このシナリオで完結させて、
  他のシナリオにまでネタを持っていったりしなければ、
  たいていのことは許されるはずです。
  ざんすかが女王であることを既成事実化してしまいましょう」
 「いてえ、俺はチョコじゃな……ぎゃあああああ」
 「がるるるるじゃた」
 ソアが慌てて止めようとするが、ガートルードが宣言し、
 その後で、ネヴィルがじゃたに噛みつかれていた。

 そこに、さらに、鎌田 吹笛(かまた・ふぶえ)と、
 パートナーの機晶姫エウリーズ・グンデ(えうりーず・ぐんで)と、
 同じくパートナーの魔道書『女王の国一握の闇』 ハニバー(じょおうのくにいちあくのやみ・はにばー)がやってくる。
 「エリュシオンの龍騎士団に対抗するため、
  地祇の騎士団を結成するんです。
  土地を護る地祇の騎士団……。
  クイーン・ヴァンガード以上に一般市民に支持されるかもしれないですな」
 「どの町にも駐在してる地祇ちゃん達なら事件があってもすぐ活動出来るわね」
 吹笛の宣言に、エウリーズがうなずく。
 「エリュシオンの龍騎士団からライバルと認めてもらえば、
  合同演習で神様と手合わせ出来るかもしれないわよ」
 「誰が相手でもミーのラリアットでぶっ飛ばしてやるざんす!」
 「神様と肩を並べられたら6大都市の地祇の長なんて目じゃないわよ」
 「僕が神に……くくくくく、面白い」
 エウリーズが、ざんすかとつぁんだの興味を引く。
 「種族の性質を主張すれば、民衆からの信頼は容易に集められるはずだよ。
  君たちにとって土地を護る事は、自分の身を護る事に直結しているからね」
 ハニバーが、騎士団の設立による種族の地位向上を主張する。
 「よその国の神様から見たら、君たちのケンカなんてただの足の引っ張り合いよ、だから……」
 エウリーズがまとめに入るが、ハニバーがさらにダメ押しで続ける。
 「公式コミュニティに『ミスティルテ『ィ』ン騎士団』がある。
  けれどアーデルハイトの称号は【ミスティルテ『イ』ン騎士団開祖】。
  どっちが正しいのかは知らないけど、組織の存在感の弱さが招いた誤植だろうね。
  それに対し、君たちには今チャンスがある。
  地祇の騎士団の存在感をこのシナリオで存分に見せしめれば、
  君たちは方々のシナリオに介入し得る程の影響力を持てるはずさ」
 「こらーっ!
  他のシナリオに介入しようとするでない!
  このシナリオでできたことを無条件で別のシナリオでできると思ったら大間違いじゃっ!
  というか、私のミスティルテイン騎士団を愚弄するな!」
 いつのまにかやってきたアーデルハイトがブチ切れる。
 「ああ、大きい『イ』が正しかったんだね」
 「まだ言うかーっ!!」
 「これだけの強さを誇るアーデルハイト先生ですが、
  ざんすかさんはそんな先生を一撃で打ちのめしています。それでも皆さんはざんすかさんに挑みますか?」
 吹笛が、つぁんだ軍の地祇に向かって言う。
 「いいかげんにせんか、お前ら!」
 アーデルハイトが、吹笛とハニバーを魔法でぶっ飛ばす。
 「あぎゃっ!」
 (しかし、これで、アーデルハイト先生の強さがアピールされ、
  結果としてつぁんだ軍の士気が揺らぐのではないでしょうか)
 肝が据わっているので、ぶっ飛ばされつつも、吹笛はそんなことを考えていた。
 「やはり、本人も気にしていたのか……」
 ハニバーも、ぶっ飛ばされつつも、冷静にアーデルハイトの言動を指摘していた。

 「大ババ様、大人気ないですぅ」
 「ええい、放せエリザベート!」
 二人は退場する。

 そこに、ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)が現れて言う。
 「さっき、観光地の絵葉書の話が出ていましたが、
  たしかに、3Gとか、あの契約アイテムの扱いはひどいと思います。
  かわいそうすぎます。
  やはり、レアアイテムとして、皆さんが価値を認めてくれるような感じでないと、
  地祇の地位も向上しないのではないでしょうか。
  ここは、かわいそうなざんすかさんに味方します。
  いくら、ざんすかさんがちょっと頭の方もかわいそうでも、
  まぁ、何とかなるでしょう。
  つぁんだもあまり変わらないみたいですから。
  何事も為せば成るものです」
 カタールを手に、ザカコは、ざんすかの味方をしようとしていた。
 「誰がかわいそうざんす!」
 「僕がざんすかと同レベルだと!?」
 「うわあああああああ、なにをするんですか。
  自分は真剣に、地祇の立場を憂えて……」
 「じゃかあしいざんす!」
 「どいつもこいつも、僕たちは人気種族なんだ!」
 ザカコはざんすかとつぁんだに同時にぶっ飛ばされた。
 かくして、ザカコは「るる14号」と名付けられ、
 その間にも、カレンとジュレールは「彗星」として行ったり来たりしていた。
 
 「きゃー、地祇たんたちがお風呂上りです!
  一緒に入れなくて残念でした!」
 風森 望(かぜもり・のぞみ)が、
 パートナーの魔道書伯益著 『山海経』(はくえきちょ・せんがいきょう)とともに、つぁんだ軍地祇を捕まえる。
 「測量しましょうね、測量!
  うふふふふふふ。
  さぁ、名簿作りにの為にも、身長・体重・3サイズを測りましょう!」
 「え、名簿作ってパートナー契約しやすくするって?」
 望の提案に、地祇がわらわら集まる。
 「なぁ、主……身体測定は別に名簿作りには必要ないのではないかのう?」
 「何を言っているのです!
  地祇と言えばその土地を擬人化した神様!
  偶像!
  言わば、アイドルです!
  故にこの項目は必要なアピールポイントなのです!
  地祇アイドルとしての!」
 「いや、パラミタでの神の定義はとても強い存在のことで、
  地祇は神というわけではないのだが……。
  それに、この身体測定、主の趣味であろ?」
 「何を言うのです!
  これは測量!
  そこに疚しい気持ちは一切ありません!
  パートナー契約のために観光地の絵葉書を大量に売ったりと、
  『こいつら必死だな……』という気がしなくもない地祇たんたちが、
  地球人と契約しやすくするための作戦なんですよ!
  これは、いわば人助けなんです!」
 「そういうことは、鼻血を拭いてから言うのじゃ。
  ……抱きしめている地祇の身体が赤く染まっているぞ」
 「きゃああああ、じゃあ、もう一度お風呂に入りましょうね!」
 「ちょ、やめ、ぎゃあああああ」
 「しかたないのう」
 望にツッコミを入れる『山海経』であったが、
 「パラミタ地理書を作成する好機」と考えて、
 積極的に地祇の名簿作りや身体検査に関わっていた。
 「ところで、今回は『ひらにぃたん』や『きまくたん』は来られないのですか?」
 「ひらにぃときまくは、つぁんだと仲悪いよ。
  なんだか、ざんすかリンチの後に、
  ひらにぃときまくがつぁんだにも襲い掛かったらしいんだよね。
  それで、つぁんだが2人の悪い噂を流して、お互いを仲間割れさせようと仕向けたみたい。
  対立が深刻化したらしいんだよね」
 望に身の危険を感じたつぁんだ軍地祇が、知っていることを洗いざらいしゃべる。
 この段階にあっても、つぁんだに味方していたのに、
 正直にしゃべるあたり、よほどおそろしいと感じているに違いなかった。
 「なるほど……はい、じゃあ、測量をしましょうか」
 「わあああああ」
 「うむ、脅威は取り除かれず、胸囲を測られることになったのう」

 「ご賞味下サーイ、これが世界その物の味デース」
 「そういえば、このカレーは、
  地祇たんたちの出汁でできているんですよね?
  食べないわけにいきませんよね!?」
 望が、アーサーにすすめられてカレーを食べ始める。
 「さあ、これで、あなたも血が美味しい人になりまーした。
  我輩に血を吸われるのデース」
 「ぎゃああああああああ」
 望が、アーサーの罠にかかり、吸精幻夜される。
 「うむ、地理書の作成に集中するとしよう」
 『山海経』は、何も見なかったことにした。

 そんな状況で、イーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)と、
 パートナーの魔道書フィーネ・クラヴィス(ふぃーね・くらびす)は、
 冷静に調査を行っていた。
 「いまだに種としての地祇の性質はわからん」
 イーオンは、新聞記者のように、
 華麗に騒動は回避しつつ、
 一連の出来事を手記にまとめているのであった。
 「この戦争についてどう思う?」
 「うう、ホント、どうでもいいです……」
 望の被害にあった地祇は、イーオンにたずねられ、泣きながら答えた。
 「君はつぁんだに味方していたようだが、
  ……これはどういった意図によって行われたのだ?」
 「だって、つぁんだに殴られるのも怖いし、
  借金返せないし!」
 フィーネが冷静に、イーオンの質問に追加する。
 「参考にならんな」
 イーオンが一蹴する。

 「こうなったら、つぁんだ、魔道書をいっしょにぶっ飛ばしたら許してやるざんす!」
 「なにっ!?」
 「うむ、種族抗争が新たな局面を迎えているな」
 イーオンが、ざんすかとつぁんだの接触にいち早く気づき、メモを取る。

 「くっ、このままでは、ざんすかに負けてしまう!
  表面上だけでも従ったほうがいいかもしれないな、しかし……」
 つぁんだが迷っていると、歌うような声が大荒野に響いた。

 「ざんすかもかわいいです、つぁんだもかわいいですぅ!
  甲乙付けがたし!
  というわけで、パラミタ”撲殺天使”普及委員会としては、
  中立の立場を取りますぅ!
  ヒーローは最後に登場するもの!」
 メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)と、
 パートナーの剣の花嫁セシリア・ライト(せしりあ・らいと)
 同じくパートナーの英霊フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)が、
 それぞれ、野球のバットを持って現れた。
 「でもぉ、野球のバットを普及するためには、
  英雄的な功績が必要ですぅ。
  野球のバットを使って、何かなさねばなりません。
  ここは、かつてざんすかを倒したつぁんだに止めを刺し、
  美しく撲殺をするというのはどうでしょうか?
  すでに、アーデルハイトさんが火龍の杖で撲殺されているという現在、
  野球のバットでも誰かを撲殺して、
  野球のバットの有用性を強く認めさせないといけないですぅ」
 「パラミタ”撲殺天使”普及委員会の切り込み隊長を自認する僕としては、
  野球のバットでメイベルが進む道を作るだけだよ。
  野球のバットを広めるためにも、
  野球のバットを使って、
  一人でも多くの人を野球のバットの餌食にしないとね」
 「私のヒロイックアサルト、
  「ガーターの誓い」は女性を守るために立てられた誓いに基づき力を発揮するもの。
  メイベルを妨げようとする敵が居るなら、その敵から守り抜くための力です。
  獅子奮迅の戦いぶり、文字通り見せてあげます。
  これも、野球のバットを広めたいという、メイベルの、
  『野球のバット心』を、より、野球のバットするためなんです。
  つぁんだ様には、野球のバットを野球のバットして野球のバットしていただき、
  野球のバットがより野球のバットするために、野球のバットしていただきましょう。
  それが、野球のバットの野球のバットを野球のバットということなのです」
 メイベルとセシリアとフィリッパが、口々に言う。
 「言語野がもはや、野球のバットされたように、
  野球のバットしてしまっていますが、
  大脳野球のバット野が白兵武器で野球のバットしている私としては、
  野球のバット冥利につきるというものですぅ。
  野球のバットを野球のバットして、野球のバットしましょう」
 「うん、野球のバットだね!
  野球のバットな野球のバットを野球のバットしよう!
  野球のバットが野球のバットするために、野球のバットだよ!」
 「はい、野球のバットです!
  野球のバットが野球のバットだったのは、野球のバットだったに違いありません。
  野球のバット的な野球のバットが野球のバットなのですから。
  野球のバットを野球のバットために、野球のバットましょう!」
 「何言ってるんだ、君たちはうわああああああああああ」
 「チョコバットじゃた、がるるるるるるる」
 つぁんだ軍は、メイベルにチョコを投げつけられ、
 じゃたとともに、メイベルとセシリアとフィリッパに襲われ、完全に壊滅した。

 「ふむ、野球のバット、と……」
 「危険だぞ、さあこちらへ」
 手記を書きとめたイーオンは、フィーネの力技によって、巻き込まれるのを免れ、逃走した。