リアクション
○ ○ ○ ○ そこはサルヴィン川流域にあるジィグラ研究所という、一般的にも知られている昔からある研究所だった。 神楽崎分校より北に位置している。 研究所に到着し、所長と面会を果たし数時間後。 兄貴分の男の遺体が発見されたと研究所に連絡が入った。 護衛の男2人は帰されたが、悠司とイルは捕縛時の状況などの説明と、しばらくの間イリィの世話を担当することになったため、研究所に残ることになった。 所長は無愛想な吸血鬼だった。雑談には一切応じず、報告だけを求めてきた。 その他、働いている者達は、普通の研究所の研究員と変わらない人々だ。 警備はかなり厳しく、許可なく出入りすることは出来はしない。悠司はハーフフェアリーを連れていたことと、下っ端とはいえ組織に写真と名前が登録されていることから門前払いを食らわずに済んだ。 悠司とイリィが自由に行動できる範囲は地下のごく一部であったが、イリィを連れて研究室に同行した際に、奇妙な物をいくつも目にしていた。 それは、水槽の中でうごめく奇怪な生物であったり。 機械の体と生身の体を持つ野獣であったり。 (キメラを作ってんのか? ……そういやあ、ハーフフェアリーだって、人間と妖精の間に自然に生まれてくる種族じゃねぇよな。なんか関係あんのか) そんなことを考えてはみるも、自分1人では答えはわかりはしない。 研究室への携帯電話やカメラの類は一切持ち込み禁止な為、写真を撮ったりはできなかった。脳裏にだけ刻んでおくことにする。 そして、この建物の地下には携帯電話の電波が届いていない。外部と連絡を取ることもできなかった。 「おてんきぃ〜おてんきぃ〜らんらんららぁ〜」 イリィはコップをマイク代わりに突如歌いだしたり、踊り出したり、今のところ楽しそうに過ごしている。 イルは常にイリィの側で、心配気に見守っている。服の中に隠して、脱出は出来なくもなさそうだが。 イリィの姿が消えたら、悠司が責任を取ることになるだろう。この組織のことだ。拷問くらいされてもおかしくはない。 ○ ○ ○ ○ 翌日。 黎明の元に、情報を送っているラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)からメールが届く。 シッターと名乗ったあの男は、ヴァイシャリーでも犯罪歴があったようだ。 妻子はおらず、恋人もいないとの報告だった。 「忙しい最中に、こんなに早く調べられるものですかね」 黎明は息をついて、携帯電話をしまった。 あの男を愛していた者に、一生恨まれることを覚悟している。 ただ――。 今は、ラズィーヤに騙されておこう。 目的を果たすまでは。 担当マスターより▼担当マスター 川岸満里亜 ▼マスターコメント
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