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嘆きの邂逅~闇組織編~(第4回/全6回)

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嘆きの邂逅~闇組織編~(第4回/全6回)
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第8章 暗闇

 遠く離れた場所の河原に、静香を乗せた空飛ぶ箒は着地をした。
「ありがとう、助けてくれて。電話で連絡しないと」
 そう言って、静香は携帯電話を取り出した。
 その携帯電話を奪い取って。
 不思議そうな目を向けた静香に、その人物――メニエス・レイン(めにえす・れいん)は銃を向け、徐に肩口を、撃った。
 衝撃で転んで、肩から血を流しながら。
 静香は目を見開いて、メニエスを見た。
「ミストラルに傷つけさせて、ロザリアスを送り込んだの」
 怪我をした状態で、屋上に現れたのはロザリアス・レミーナ(ろざりあす・れみーな)。加勢に現れたのはミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)だった。
 静香は呼吸を荒げ、目を見開いたまま酷く混乱した状態だった。
 メニエスは銃口を静香の額に突きつける。
「私、百合園と因縁があるあの組織に、加担しているの。鏖殺寺院の一員でもあるわ」
 狂気の笑みを浮かべるメニエスの額に鏖殺寺院の紋章が浮かび上がる。
「う、そ……」
「本物よ」
 そう言って、メニエスは静香の反応を窺う。
 負傷したミストラル、それから満身創痍のロザリアスが、上空から現れてメニエスの後ろに着地をする。
 酷く、混乱して、何も考えられない状態の静香は。
 ただ、呼吸を荒げているだけで、動くことも出来なかった。
 メニエスの狂気の笑みが次第に消えていく。
 と、その時。
 静香は動く方の手を震わせながら――メニエスの方に伸ばしてきた。
「帰ろ、う」
 どこかしら虚ろな笑みを浮かべる。
「何か、理由があるんだよ、ね。大丈夫だから、帰ろう百合園に」
 メニエスの顔が凍りつき、動きが止まる。
 代わりに、ミストラルが動いた。
 静香を殴り飛ばして転ばせ、縄で縛り上げた後乱暴に空飛ぶ箒に括りつけていく。
 その時には既に静香は意識を失っていた。
「帰りますよ、メニエス様」
 まだ動こうとしないメニエスにミストラルはそう声をかける。
 メニエスは顔を凍りつかせたまま、空飛ぶ箒に跨った。
 そして、キマクの方へと飛び立つ。

〇     〇     〇


 所属する拠点に戻った高崎 悠司(たかさき・ゆうじ)は、幹部であるコリスという男に呼び出された。
 コリスは悠司の倍くらいの年齢のシャンバラ人だ。
 兄貴分だった男の代わりとして、コリスの直接の舎弟に格上げになったといったところだ。
 悠司は研究所から預かってきたデータを渡し、引き続き組織のメンバーとして尽くすことを示してみせた。
 そんな悠司の腕に、コリスは模様のついた腕輪を嵌めた。
 組織への反逆行為を行った場合や、無理やり外そうとした場合、爆発するような仕組みになっているらしい。
 ボスには魔法的な部下の行動を制限する能力があるようであり、このマジックアイテムでの行動制限はボスに直接忠誠を誓うまでの間の、暫定的な措置だということだ。
「例の酒場の状況はどうっすかね? 分校の奴等から襲撃くらいあっても変じゃないと思うんすけど」
 パソコンでデータを確認しているコリスに悠司はそう問いかけてみた。
「あの酒場は既に組織のものではない。取引先の一つという扱いだ。経営は相応の男に任せてある。奴が上手く動いてくれりゃあ、襲撃は俺らにとっては望むところだな」
 どうして望むところなのか、悠司にはよく分からなかったが……。いずれ分かるだろうと、それ以上説明を求めはしなかった。
「今日は1件、賞金の支払いがある。使えそうな奴ならお前の配下としてここに呼んでも構わない」
 コリスは封書を一つ、悠司に手渡した。
 組織が賞金をかけていた人物を殺害したと報告をしてきた者がいたらしい。
 悠司は遺体の確認と報酬の支払い、更に訪れた人物の選定を任された。
「その後はちと大きな仕事が入った。お前にも本部への使いを頼むかもな」
 言って、コリスは隣の部屋にちらりと目を向ける。
 隣の部屋には捕虜がいるらしく、捕らえたメニエスとミストラルが監視についている。

 キマク中心部にある酒場の個室でサルヴァトーレ・リッジョ(さるう゛ぁとーれ・りっじょ)ヴィト・ブシェッタ(う゛ぃと・ぶしぇった)と相談を行っていた。
「キマク家とコンタクトは取れませんでしたが、近隣の有力者とは概ね上手くやれそうです」
 ヴィトは根回しに動いていた。
 利益の一部を地区を束ねている者に上納し、支援を求め。
 組織へ資金を流す際も、直接の接触は行わず、他の施設を挟む形で行っている。
 ジィグラ研究所とも組織を通さずに、交渉をし開発品――キメラなどの買い付けの申し入れが済んでいる。
「ただ、店長を任せていた三井が例の分校の者達に捕らえられてしまったようですが、どういたしましょうか?」
 店の経営にはさほど問題はないが、彼にもしものことがあると、サルヴァトーレやヴィトも影響を受けることとなる。
「有力者の支援を受けた職業斡旋所と、外れにある小さな分校。パラ実生がどちらにつくかは目に見えている」
 サルヴァトーレはそうとだけ答えて、酒を飲む。

〇     〇     〇


 桜井静香の行方が分からないという知らせを受けた白百合団、団長の桜谷鈴子は、班長で静香を好いているロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)達を連れて、急いで百合園女学院に帰還した。
 百合園宛てに、郵便物が届いていた。
 差出人名は『桜井静香』と書かれている。

 中に入っていたのは、5センチほどの茶色の髪の毛の束。
 血のついた携帯電話。
 そして手紙が1通。

 百合園女学院校長桜井 静香(さくらい・しずか)を預かっている。
 剣の花嫁、アレナ・ミセファヌス(あれな・みせふぁぬす)との交換を要求する。
 本人確認の為、光条兵器持参のこと。
 次の満月の夜0時。
 場所はヴァイシャリー湖北西の無人島。
 島への立ち入りはアレナ・ミセファヌスの他2名まで許可。武装は一切認めない。
 何か連絡がある際には、同封の桜井静香の携帯電話にこちらから連絡を入れる。
 従わぬ場合は、人質の命はない。
 違反行為は、発見し次第人質の肉体の一部を切り落としていく。


―第4回 完―

担当マスターより

▼担当マスター

川岸満里亜

▼マスターコメント

ご参加ありがとうございます。
後半に突入し、シリアス度が更にアップしております。

嘆きの邂逅も残すところあと2回となりました。
あと2回でホントに完結ですので、悔いのないよう頑張って楽しんでいただければと思います。
闇組織側に入り込んでいる方は、次回中に本部にたどり着けないと、こちら方面から核心に迫ることは無理な気がします。

●昇格
・秋月 葵(SFM0003921)さん
・ヴァーナー・ヴォネガット(SFM0005115)さん

これまでの功績、白百合団員としての立派な姿勢から、班長に昇格とさせていただきます。
ただし、お2人共年齢や性格的に幼いため、作戦の指揮などを執る際には、それぞれLCのエレンディラ・ノイマン(SFL0003922)さん、セツカ・グラフトン(SFL0005116)さんと一緒に行っていただくことになります。

以後、川岸担当の百合園キャンペーンと、マスターコメントで班長として行動できると説明されているシナリオにご参加の際には、下級生3人ほど従えて行動をすることが可能です。但し交戦の指示、決定権はありません。

●お知らせ
次回の予告も兼ねて、状況の説明等をさせていただきます。

次回は、

・ファビオの封印解除
・研究所撃破
・人質交換

の3つを同時に行うことになります。

桜谷鈴子は、立場上の関係で封印解除に向うことになります。

人質交換については、百合園側からはロザリンド・セリナ(SFM0004185)さん、崩城 亜璃珠(SFM0007325)に打診がいきます。互いに、作戦時の積極的提案、行動が認められており、ロザリンドさんは静香を、亜璃珠さんはアレナの命を一番に考えてくれる方だと、判断されてのことです。
ただ、こちらはあくまで推薦になります。
特に亜璃珠さんは分校の仕事がありますので、そちらを優先するかどうかはご本人の判断次第です。
無人島までの移動は、目立たない小型漁船を利用する予定です。静香介抱の為などに、白百合団員数名も乗り込むことになります。

組織側からは、交換自体はメニエス・レイン(SFM0000300)さん次第になりますが、アレナを本部に護送するようにと、高崎悠司(SFM0005111)さんサルヴァトーレ・リッジョ(SFM0011890)さんにも連絡が入ります。この仕事は請けなくても構いません。
アレナは生死は問われませんが、必ず確保するよう強く命じられることになります。

神楽崎分校は研究所の破壊や研究所からヴァイシャリーに向うキメラ討伐に協力するかどうかを選んでいただくことになります。
パラ実間抗争が起きそうな状況ですがこちらについては、百合園キャンペーンである嘆きの邂逅では大きく取り扱う予定はありません。

研究所の破壊は、新たに班長に昇格した方に指揮をとっていただけたら助かりますが、その他の行動を優先していただいても構いません。
ライナが残っているため、桜谷鈴子と連絡を取り合ったり、指示を受けることが可能です。
白百合団員以外の百合園生が作戦に加わることは、本来望ましくはありませんが、雷霆 リナリエッタ(SFM0008575)さんが、罪を被る覚悟を鈴子に見せて下さったため、今回は(全員)黙認となります。

三井 八郎右衛門(SFL0016929)さんは、現在神楽崎分校生に拘束されています。
次回のアクションでは尋問に対する姿勢などお書きください。分校側に落ち度があれば、逃走できる可能性もあります。
不参加の場合は、飲食物を一切口にせず、黙秘を貫いているとさせていただき、次回終盤には衰弱して瀕死状態と扱わせていただきます(MCのみ参加している場合、MCに影響が出るということです)。

次回から、悲恋のカルロは神代 明日香(SFM0013112)さんのLCとなります。

テレサ・エーメンス(SFL0004186)さんが、神子の力を受け継ぎました。神子についての物語はグランドシナリオで展開されます。

連絡事項いっぱいで頭を混乱させてしまってるかもしれませんがっ。どうか最後までよろしくお願いいたします!
第5回のシナリオガイドは6月23日公開予定です。