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【おとこのこうちょう!】しずかがかんがん! 前編

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【おとこのこうちょう!】しずかがかんがん! 前編
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■□■5■□■ ラズィーヤと【畏華面四天王】(いけめんしてんのう)

ラズィーヤの自室に案内されてやってきた静香と小ラズィーヤ達一行だが、
そこに控えている者達がいた。
「俺は、【畏華面四天王】(いけめんしてんのう)……すなわち、
畏れるほど華麗な面をもつ男の1人【フラグ王】の田中ハメ太郎!」
「同じく、【畏華面四天王】の1人【黒服総大将】だ」
未来の武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)と、未来の橘 恭司(たちばな・きょうじ)であった。
現在の牙竜が、そこに走ってくる。
「どこかで、悪の男の娘の高笑いが聞こえる!
現代から未来へ泣く人がいるならば、悪の始末!
正義の味方ケンリュウガー。ご期待通り、ただいま参上!
悪の四天王が女性を狩っているというので駆けつけてみたが、
まさか、未来の俺が四天王の1人だと……ふざけるな!」
「畏華面四天王の中に俺がいるだと……」
現在の恭司も駆けつけ驚く。
「やはり来たか……お前の予想通り過去に俺もここへ来た。
そして、お前は俺と同じ様に俺に引導を渡しに来たようだが……さて、ヤれるかな?
教えておこう。
ここへ至る分岐の一つはお前の身近な者に降りかかる不幸から変わる。
まぁ情報を教えたところでお前が変えれるとも限らんがな……」
左目に眼帯をしている未来の恭司は、現在の恭司に言う。
「過去の俺よ。
息をするようにフラグを立て、フラグに関しては空気を読める天然。
ノーモーションでフラグという剛速球をブン投げた結果……引き返せないところまで辿り着いた。
それがオマエの未来だ!
ラズィーヤ様に忠誠を誓うことで、全てのフラグを維持しつつ増やすこと。
本能である「殖える力」を静香様に代り実行するのが、今の俺の正義だ!」
【フラグ王】の田中ハメ太郎こと、未来の牙竜が言う。
「過去の俺よ。2人の力を合わせれば、更なる男の野望の王国を築けるだろう」
「正義の心を捨てた俺の、ふざけた未来を否定する!」
ケンリュウガーこと、現在の牙竜は、未来の自分に躍り掛かる。
「来い、今の俺の全力を持って叩き潰してやる!」
【黒服総大将】こと未来の恭司も、現在の恭司に言う。
「俺が俺自身に引導を渡してやる!」
現在の恭司も刀を抜く。

こうして、戦いが始まった。

「銃と短刀での戦い方……チィ、やっぱり、未来の俺かよ」
「未来の俺……戦い方は変わらないか」
現在の牙竜、ケンリュウガーと恭司は、未来の自分を見てつぶやく。
「ならば、これを食らえ!
 【ワイヤー結界】!」
ケンリュウガーは、サイコキネシスとトラッパーでロープを操り、
相手の動きを封じる束縛術を使用する。
成功率の高い技ではない。
しかし、【フラグ王】の田中ハメ太郎は、その動きに驚いた様子を見せる。
「【ワイヤー結界】の戦い方を知らない?
そうか、俺とアイツの違いはセイニィに告白してない所か!」
ケンリュウガーは、未来の自分と現在の自分の決定的な違いに気づく。
一方、恭司も、【黒服総大将】の弱点を突こうとしていた。
「俺と戦い方が変わらないのであれば!
今のお前の死角を存分に突かせてもらう!」
自分の戦い方は自分が一番よくわかっている。
実力的には未来の自分の方が上でも、【黒服総大将】の弱点を一番理解しているのは恭司である。
「くっ、この【フラグ王】の田中ハメ太郎をここまで追い詰めるとは!
 いいだろう、【フラグ王】の田中ハメ太郎の実力、とくと見せてやろう!」
「さっきから思っていましたが、
 『ハメ太郎』とか下品です!!
 聖騎兵の強力な一撃、その身に受けろッ!!」
「ぐわああああああ!?」
音井 博季(おとい・ひろき)のツッコミにより、【フラグ王】の田中ハメ太郎はぶっ飛ばされた。
「え、えーと……」
ケンリュウガーは、呆然としている。
「ラズィーヤ!
 殺す殺す殺す殺す殺す殺す!
 あははははははははははははは!」
「貴様がっ! 校長をっ! こんな事にっ! したのかぁっ!」
そこに、二人のメニエス・レイン(めにえす・れいん)が野球のバットを手に殴りこんできて、さらに大混乱となった。
未来のメニエスは完全にヤンギレ化していた。
そうこうするうちに、【フラグ王】の田中ハメ太郎と、【黒服総大将】は倒され、
二人のメニエスは、不利になったのを認めて逃走したのであった。

★☆★

「まったく、困りましたわね」
未来のラズィーヤは、現在からやってきた一行を始末するため、
増援を呼ぼうかどうか迷ったそぶりを見せる。
「お待ちください、ラズィーヤおねえさま!」
そこに現れたのは、佐藤花子であった。
花子は、アルバ・フレスカのパートナーでもある。
「ラズィーヤおねえさま、
 この方々は、小ラズィーヤ様が過去の世界からお呼びしたのですわ。
 皆さん、この時代の百合園やシャンバラを憂えてのことです。
お話をしてあげていただけないでしょうか」
花子はラズィーヤに言う。
「さ、佐藤花子さん?」
静香は目をしばたたかせる。
百合園生である花子は、ラズィーヤを「おねえさま」と慕っていたが、
ラズィーヤのパートナーである静香に嫉妬して、よく意地悪をしていたのだ。
静香がこの変化に驚いても無理はない。
「よろしいですわ。事情を説明しましょう。
 どのようにして、静香さんが宦官になったかが知りたいのですわよね?」
ラズィーヤは笑みを浮かべ、言う。
「静香さんに『蟄居(ちっきょ)』を命じ、宦官にしたのはわたくしですわ」
「蟄居……?」
静香が疑問を口にする。
「『蟄居』とは、『カンガンガニ』のいる部屋に閉じ込めるという刑罰です」
花子が静香一行に説明する。
「カンガンガニの部屋!?」
静香は青ざめて震える。
カンガンガニは、昔、シャンバラで宦官になるために用いられたカニである。
「そ、それって、僕が悪いことをしたから、そうなったってことだよね」
静香の問いに、ラズィーヤは答えない。
にやにや笑いを、扇で隠すのみである。
「……だけど、そのせいで未来の僕は暴走してしまった。
 だから、僕は自分で自分を止めてきます!」
静香は、ラズィーヤが今も善人であると信じて宣言する。
「今日はもうお帰りなさい。
あなたには後でお話がありますわ」
ラズィーヤは一行を促し、小ラズィーヤに言う。
「私はママ……母様の人形ではない!
 私自身の考えで行動するのだ!」
「あっ、小ラズィーヤちゃん!」
七瀬 歩(ななせ・あゆむ)達が慌てて、走り去る小ラズィーヤを追う。
「ラズィーヤさん、
小ラズィーヤちゃんも悲しんでいますから、
もうこんなことはやめて、皆と話しあってください」
橘 舞(たちばな・まい)の説得に、ラズィーヤは微笑を浮かべ、
「もう、お行きなさい」
と促したのだった。

★☆★

一行を館の外に連れていった花子は言う。
「ラズィーヤおねえさまが改心すれば、
きっと静香校長も正気になるに違いないわ!
ラズィーヤおねえさまは宦官をもとの男の娘に戻す方法もご存知なのよ!」
花子の話によれば、カンガンガニをソーセージにすれば、
宦官になった男の娘は元に戻れるのだと言う。
「ソーセージ食べて元に戻るって、超展開だな……。
 『ケンリュウガーソーセージ』でも、身体再生は無理だぜ」
武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)はつぶやく。
「なぜ、それを俺達に教えてくれるんだ?」
橘 恭司(たちばな・きょうじ)の問いに、花子は答える。
「静香校長と会うことで、
ラズィーヤおねえさまはお考えを改められたのよ。
 だから、私はあなた達にこのことを伝えに来たの」
「ラズィーヤさんが?」
静香はつぶやく。
先ほどの様子では、ラズィーヤの内心はわからなかった。

★☆★

静香達が花子と話している間に、
現在と未来の橘 舞(たちばな・まい)が会話していた。

(従姉妹の千歳と一緒に未来に来てみたら、私はラズィーヤさんの側近になってて、
すごく悪い人になっちゃってるみたいで……)
舞は泣きそうになるのをこらえつつ、未来の自分に言う。
「桜井校長先生もラズィーヤさんもとってもいい人ですよ。
私は知っています。
こんなことになったのにも、何か事情があったんですね。
本当に悪い人から、
小ラズィーヤちゃんみたいな真っ直ぐな子が育つ訳ないですしね」
未来の舞は、過去の自分を見つめて考える。
(何も疑わず、正直に話せば理解されると信じていたあの頃の私……。
この件にはエリザベートとアーデルハイトが一枚噛んでいるようです。
ですから、あんなお邪魔女たちの首など
さっさと刎ねてしまいましょうと何度も言いましたのに。
首だけでも生きてそうですけど)
未来の舞は、ロケットを身に着けていた。
中には、死んでしまったパートナーのブリジットと一緒に写った写真が入っている。
(過去を変えられるなら、大切な親友を失うことも、
今のシャンバラの混乱もないことになります。
ですが、現在で何をしようとヴァイシャリーの混乱を増大させるだけのこと。
エリザベートとアーデルハイトも自分がラズィーヤ様に成り代わりたいだけのことでしょう。
レジスタンスと称する世直し気取りのテロリストと大差ないです)
「今日はお帰りなさい。
 あなたの希望通り、ラズィーヤさんとも面会できたのですから」
「わかりました、では今日はこれで」
未来の舞の言葉に、現在の舞はうなずく。
未来の舞の狙いは、従姉妹の千歳のいるレジスタンス組織に舞を戻して、
自覚なしのスパイにし、いざというときのための保険にすることであった。

さらに、未来の舞は、学生達と話す花子を見て考える。
(佐藤花子さん……いずれ、排除しなければいけませんね)

こうして、静香達一行は、ラズィーヤ邸を後にした。