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ゴチメイ隊が行く3 オートマチック・オールドマジック

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ゴチメイ隊が行く3 オートマチック・オールドマジック

リアクション

 
 
『衣』勝負
 
 
「さあ、まずは衣装勝負から開始となりますう」
 楽屋裏のごたごたがなんとかおさまり、予定時間から少し遅れてメイドコンテストが開始された。
「にゅ〜。はーい、来たのですよー。お着替え勝負なのです〜」(V)
 『衣』と書かれたプラカードを持ったあいじゃわが髪に結んだ大きなリボンをはためかせて、ぽよよ〜んとはずみながらテントの端から端へと駆け抜けていった。
「メイドに必要な要素はいろいろとあると思いますがあ、御主人様への御奉仕ということでー、今回は衣食住に対応したファッション勝負、お料理勝負、お掃除勝負ということになってますう」
 放送席兼審査員席で、パイプ椅子に座った大谷文美が実況を始めた。
「最初に始まるのはファッション勝負ですがあ、これは、どういった戦いになるんでしょーか。審査員の悠久ノカナタさん」
「うむ。御主人様役のモデルを美しくコーディネートするのは当然として、そこにはメイドとしての品位がいつも要求されるのだ。着せ替えするときにも、モデルに苦痛を与えず、迅速に、優雅に、美しく。それから……」
「はい。長くなりそうなのでえ、競技状況の方を中継いたします。ですが、さすがに着替えをそのままお見せするわけにはいきませんのでえ、お見せできるのは脱衣所のカーテンに映る影だけでーす。それと音声だけとなります。実に十組もの方々がこちらの競技には参加していますう」
 長々と蘊蓄をたれようとする悠久ノカナタの台詞をぶった切って、大谷文美が各組の状況にマイクをむけた。
 
    ★    ★    ★
 
「手伝うのだよ」
「お手伝いしますわ」
 ココ・カンパーニュたちのいる脱衣所に、茅野 菫(ちの・すみれ)ロザリィヌ・フォン・メルローゼ(ろざりぃぬ・ふぉんめるろーぜ)がなだれ込んできた。
「殴り込みか!? いい度胸だわね。競技変更して掃除してあげるわよ」
 待ってましたとばかりに、ココ・カンパーニュがブンと腕を振った。
「いいえ、お手伝いですわ。ちゃんとした競技ですので、ささっ、お着替えを」
 素早く茅野菫を盾にしつつ、ロザリィヌ・フォン・メルローゼが言った。
「またいらぬお節介を……」
「まあ、いいじゃないですか。ちょうどモデルが必要だったんですし」
 思わずこのままテントごと吹っ飛ばそうとするココ・カンパーニュを、まあまあとアルディミアク・ミトゥナがなだめた。
「モデルですか。よろしいでしょう。ココ様がお脱ぎになるのでしたら、このわたくし一肌でも二肌でも脱ぎますわ」
 言うなりロザリィヌ・フォン・メルローゼが段ボール製の服をいそいそと脱ぎだした。
「こら、なんで下着まで脱ごうとする!」
「えっ、モデルですから当然なのでは。ああ、メイドのお仕事ですから、これも脱がせてもらわないといけないのでしたわね。はい、どうぞ」
 お尻を突き出してショーツを脱ぎかけていたロザリィヌ・フォン・メルローゼが、手を止めてココ・カンパーニュに迫った。
「シェリル、空に星を一つ増やしてもいいかなあ……」
 プルプルと握り拳を震わせながらココ・カンパーニュが言った。
「とりあえず、コンテスト後にしない?」
 苦笑しながら、アルディミアク・ミトゥナが言う。
「分かったわよ。じゃ、脱ぐ相談するからちょっと耳を貸しなさい」
「もちろんですわ」
 ココ・カンパーニュに手招きされて、ロザリィヌ・フォン・メルローゼは嬉々として近づいてきた。その耳許に、ココ・カンパーニュが唇を寄せる。そして、ココ・カンパーニュが何ごとか歌うようにささやくと、そのままぱったりとロザリィヌ・フォン・メルローゼが倒れた。
「お姉ちゃん、何をしたの!?」
 驚いてアルディミアク・ミトゥナがロザリィヌ・フォン・メルローゼの様子を見ると、しっかりと眠りこけている。
「うるさいんで、子守歌で寝てもらったのよ。さあ、急ぎましょう」
 あっけらかんとココ・カンパーニュが言った。
「じゃあ、ぜひこの衣装にお着替えを」
 あれよあれよの展開に黙っていた茅野菫が、持ってきた衣装のいくつかをココ・カンパーニュたちに見せた。
「ちょっと待って、私が着替えるの」
 自分を指さすココ・カンパーニュに、茅野菫とアルディミアク・ミトゥナがうんうんとうなずく。
「待ってよ、私だって、シェリル用に新しいゴチメイホワイトの衣装を持ってきてるんだから……」
「お嬢様、わがままは言わないで、お着替えください。ねっ♪」
 抵抗するココ・カンパーニュをアルディミアク・ミトゥナがさりげなく押さえつけた。
「ナイスだよ。さあ、急ぎましょう、お嬢様」
 調子に乗って、茅野菫が衣装を広げる。
「これも勝負でございますから。お嬢様も、勝負と名のつくものに負けるのは嫌でございましょう?」
 てきぱきとココ・カンパーニュを脱がしていきながら、アルディミアク・ミトゥナが言った。
「ううっ……」
 唸りながらも、一応ココ・カンパーニュがおとなしくしている。さすがにここで暴れたりしたら減点は間違いない。
「何、これ、着物?」
 茅野菫の持ってきた服を見て、ココ・カンパーニュが訊ねた。
「着物ドレスだよ。かわいいから空京デパートのバーゲンで前に買ったんだけどサイズがちょっと大きくてまだ着たことなかったんだ……」
「いいんじゃありませんか、お嬢様」
 アルディミアク・ミトゥナがちょっと意地悪く微笑んだ。だいたい、服は自分が用意するとココ・カンパーニュが言ったのだが、案の定、アルディミアク・ミトゥナ用の物しか用意していない。これはちょうどいい意趣返しだ。
「しかたないなあ」
 ぼやきながら、ピンク色のショーツ一枚のココ・カンパーニュが白い襦袢にまず袖を通していく。
「むにゃむにゃ……。和服で下着を着けるのは邪道ですわ……」
 ふいに、ロザリィヌ・フォン・メルローゼが寝言を言った。
「まさか、寝たふりしていたんじゃ……」
 思わずロザリィヌ・フォン・メルローゼの頭の上で踏みつぶそうと片足をあげたココ・カンパーニュであったが、まさか下から見あげるつもりなのではとあわてて引き下がった。
「さっさと着替えるわよ」
 そう言うと、ココ・カンパーニュは素早く襦袢を着込んだ。
「短いわね」
「着物ドレスはたいていミニが多いんだよ」
 軽く眉を顰めるココ・カンパーニュに、茅野菫が言った。
「ううっ」
 唸るココ・カンパーニュの胴に手を回して、アルディミアク・ミトゥナがぎゅうぎゅうと下帯を締めていった。立ちあがって襟元を整えると、着物ドレスに袖を通させる。ずいぶんと変わった服で、真紅のミニ着物の上に紗の上地がある重ね着構造になっており、鮮やかすぎる着物の色合いを実に上品に和らげていた。振り袖はつけ袖となっており、肩の部分と紐で編み込むように繋がれていて、脇は大きく空いていね。裾の方はフレアスカート状になっていて、裏地にはふんだんに紗の布が重ねて広がるようにしてあった。
「ぐっ、もうちょっと弱く……」
「それじゃ、解けてしまいますわよ、お嬢様」
 アルディミアク・ミトゥナにぎゅっと帯を締められて、ココ・カンパーニュが小さく悲鳴をあげた。振り袖の下をかいくぐるようにしながら、慣れた手つきでアルディミアク・ミトゥナが光沢のある浅黄色の帯を巻いていく。締めつけられてウエストが締まると同時に、胸とお尻がちょっと強調されたような気がしてならなかった。
「なんかしっくりこないなあ」
 ココ・カンパーニュはそう言うが、実際にはいつもの格好とあまり変わりはない。
 頭の方は、茅野菫が解いてストレートに梳りなおしていた。ミニシルクハットの代わりに大きな白い花飾りをちょっと斜につけ、足は赤いパンプスに白いロングソックスに履き替えさせる。両手には短めの白い手甲をつけた。
「はい、できました。お嬢様」
 アルディミアク・ミトゥナと茅野菫が、ふうっと一息ついた。
「レッドとはいえ、赤すぎるぅ〜」
 ココ・カンパーニュがまたまた軽く唸る。
「こうなったら、シェリルにも私が持ってきた服を着てもらわなきゃ気がすまないわよ」
「えっ、ちょ、ちょっと、お姉ちゃん……」