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イベントミュージアム(ゴチメイ隊がいく)

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イベントミュージアム(ゴチメイ隊がいく)
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リアクション

 

02.エントランス

 
 
「ははははははは……」
「な、何? 何が通ったんだろ」
 突然外から美術館のエントランスに飛び込んできたサンタの橇を見て、高島 真理(たかしま・まり)が目を白黒させた。
「これはまた、面妖な。季節外れではござらぬか?」
 あまり動じた様子も見せずに、源 明日葉(みなもと・あすは)が言った。
「あれも、今回の展示に付随したイベントなのでしょうか?」
「えっと、あの、見てみたいです……」
 首をかしげる南蛮胴具足 秋津洲(なんばんどうぐそく・あきつしま)に、敷島 桜(しきしま・さくら)がつぶやくように言った。
「じゃ、行ってみるんだもん」
 高島真理がパートナーたちをうながした。
 ここ空京美術館では、現在イベントミュージアムなる企画が催されている。
 パラミタの様々な出来事を描いた絵画を、一堂に集めて展示しているのである。いつもは、それぞれの所有者のライブラリーで公開されている様々な絵画が一箇所に集まっているのは珍しいことであった。イコン博覧会を見に来たついでにこの企画の開催を知った者も多く、そこそこ観覧者がやってきている。
 
    ★    ★    ★
 
「それにしても、美術館はもっと静かな場所だと思っていたのであるがな」
 場所柄をわきまえず、あまつさえ室内で乗り物を乗り回す馬鹿はどこのどいつだとばかりに悠久ノ カナタ(とわの・かなた)が軽く顔を顰めた。
「まあ、楽しければいいんじゃないのか?」
 鹿の頭をなでながら、緋桜 ケイ(ひおう・けい)がのんびりと言った。
「ちょっと待て、なんでこんな所に鹿がいる!」
 おかしいとは思わないのかと叫んだ悠久ノカナタが、ふいに後ろ髪を引っぱられた。
「うきゃあ!!」
 振り返ると、別の鹿が悠久ノカナタ自慢の銀髪をもしゃもしゃと食べている。
「去(い)ね!」
 問答無用で悠久ノカナタがマジカルスタッフで鹿を叩くと、叩き潰された鹿が霧になって消えてしまった。
「これは……」
 悠久ノカナタと緋桜ケイが顔を見合わせた。
 この霧は、タシガンでさんざん見たことがある霧とよく似ている。とはいえ、なんでそんな物がここにあるのだろうか。
「実害はないみたいだが、調べてみる必要はあるかな?」
「実害なら、大ありであるぞ!!」
 毛先を必死に櫛で梳りながら、悠久ノカナタが緋桜ケイに言い返した。
「おのれ、どこから迷い込んできたのか。今度こそ根絶してくれる!」
 怒りに燃えて、悠久ノカナタは走りだしていった。
 
    ★    ★    ★
 
「絵かい。我は、あんまし興味はねえんだけどよ」
 秘伝 『闘神の書』(ひでん・とうじんのしょ)が、ラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)に言った。
「まあそう言うなって。見てみりゃ、意外と楽しいもんだぜ」
「へえー、なら悪かねえかもな。楽しめりゃ、それでいいってもんよ」
 ラルク・クローディスの言葉に、秘伝『闘神の書』が興味を示した。心なしか、歓声のようなものが聞こえたような気もする。
「おうよ。意外と知り合いの絵があるかもしれねえからな。にぎやかな絵もあるだろうさ。わくわくしてくるぜ!」
 楽しげに言うと、ラルク・クローディスは秘伝『闘神の書』をうながして美術館の奧へと進んでいった。
 
    ★    ★    ★
 
「メイベルさんたちは、どこに行ってしまったのでしょう。いちおう、好きに見学していいとは言ってましたけれど……」
 広いエントランスで、お上りさんのように周囲をキョロキョロと見回しながら、シャーロット・スターリング(しゃーろっと・すたーりんぐ)がつぶやいた。
「それにしても広いですね。まるで、ちょっとした街角のようです」
 広いエントランスに感動して、シャーロット・スターリングが言った。
 見あげるほどに高い天井は、ガラスを通して外からの光を余すところなく取り込み、ここが室内であることをあまり意識させなかった。いくつもの展示室へとのびる通路は、まるで見知らぬ裏通りへと続く街路のようだ。ただ、たまに床にちょっと赤黒い筋のような物が見えるのが少し不安だったが……。
 誘われるようにして、シャーロット・スターリングは進んで行った。
 
    ★    ★    ★
 
「ふむ。パラミタでの思い出のワンシーンがテーマの展示のようだが、地球関連の物もあるのか?」
 中原 鞆絵(なかはら・ともえ)の身体を借りたナラカ人の木曾 義仲(きそ・よしなか)が、女性の容姿とは似つかわしくないおっさん口調で言った。
『和物があればいいですね』
 中原鞆絵の意識が、木曾義仲に語りかける。言いつつ、先ほどチラリと見かけた鹿を弓矢で射止めたいという思いが、ダイレクトに伝わってきたりもする。
「なんだっていいわよ。どんな絵だって、このフィスがきっちりと評価してあげるわ」
 いかにも自身の審美眼を披露してたまらないとばかりに、シルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)が言った。
「はいはいはい、そこ、勝手にどこかに見に行かない。ちゃんと私についてくるようにね。さあ、鑑賞に行くわよ」
 フリーダムなパートナーたちをまとめると、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)は先へと進んでいった。
 
    ★    ★    ★
 
「わーい、ひっろーい♪」
 エントランスの広さを蒼空学園と比べながら、ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)が歓声をあげた。
 影野 陽太(かげの・ようた)がナラカにでかけてしまっているので、留守番のノーン・クリスタリアとしてはもてあました時間を有効に使おうと美術鑑賞にやってきたのだった。
「綺麗な絵があるといーなー」
 そう言いながら、ノーン・クリスタリアはリカイン・フェルマータたちの後を追うようにして展示室の方へとむかった。
 
    ★    ★    ★
 
「美術館っていうから、もっと静かにしろってうるさいとこかと思ったが、意外とにぎやかじゃねえか。とりあえず、はやってるとこ行ってみるぞ。ついてこい、ザムド」
 とんでもない到着の仕方をしたことなどなかったかのように、ケロッとしたジガン・シールダーズが、ザムド・ヒュッケバインをうながして、活気のある展示室の方へとむかっていった。
 
    ★    ★    ★
 
「結構人が来てるよね。みんな、はぐれちゃダメだよ」
 天王寺 沙耶(てんのうじ・さや)が、パートナーたちを見回して言った。
「大丈夫よ。子供じゃないんだから」
 クローディア・アッシュワース(くろーでぃあ・あっしゅわーす)が、心配しすぎだと天王寺沙耶に言った。
「そうでもないかもしれません……」
 シャーリー・アーミテージ(しゃーりー・あーみてーじ)が、展示室へ続く通路を指さして言った。
「わあ、鹿さんがいる♪」
 そちらでは、アルマ・オルソン(あるま・おるそん)が、鹿を追いかけて勝手に進んでしまっていた。
「あー、だから、勝手に行っちゃダメだったら。迷子になるでしょ。みんな、追いかけるわよ」
 軽く頭をかかえると、天王寺沙耶たちはあわててアルマ・オルソンを追いかけていった。
 
    ★    ★    ★
 
「今、何か、悲鳴みたいなのが聞こえなかったか?」
「多分、幻聴ネ」
 何かを聞いた気がしてあわてて周囲を見回すアキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)に、アリス・ドロワーズ(ありす・どろわーず)があっけらかんと答えた。
「確かめてみるか……」
 そうつぶやくと、アキラ・セイルーンは奥へと進んでいった。