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 次に静香の元を訪れたのは、双子のようにそっくりなレロシャン・カプティアティ(れろしゃん・かぷてぃあてぃ)ロレンシャ・カプティアティ(ろれんしゃ・かぷてぃあてぃ)の二人だった。だが、アホ毛の数が二本と三本なので、静香にはすぐ区別が付いた。
 それにレロシャンは生徒総会でもお茶会でもウトウトして、目をこすって頭をこっくりこっくりさせていたし。ま……まぁ、それを見なくても、ロレンシャの方は最近パートナーになったわけだし、雰囲気も多少違う。
 そんなことを考えている静香とは対照的に。
 レロシャンは二人でソファにかけて、質問する静香の顔を改めて見ながら、ちょっとどきどきしていた。
(緊張しますね〜。喋るの得意じゃないんですが……、静香先生は優しくて、あまり怒らないのがいいですよね。居眠りばっかりだからって怒られますかね〜。怒られないといいな〜)
「夢ですか〜、夢について考えたことってあんまりないですが、パラミタで最強になることですね。最強の女王様になって……その先は考えてないですけど。地球に家族とかはいないし、パラミタで暮らしたいです。ついでにネノノ達と一緒にサッカー大会で優勝、それも夢ですね」
「私は、姉さまと一緒ならどこで暮らしても構いませんわ。でも多分パラミタで進学して、就職先を探すことになるでしょうね」
 最強の女王様とサッカー大会優勝を同列に語られて、圧倒されかけた静香の頭の中に、一瞬遅れて、家族がいないという重要単語が浮き上がる。それに、ロレンシャの言葉も。
「ごめん、家族いない……の? ええっと、確か、プロフィールには放浪の旅を続けていた、ってあるけど……それにロレンシャさん、姉さまって言ってるし、レロシャンさんにそっくりじゃ? ロレンシャさんとはどういう関係? なんか大変なことに巻き込まれてそうだよね?」
「そう、ロレンシャさんのことが気になりますね〜。私の双子の姉妹って言うんだけど……記憶にないから全く実感が無くて〜」
「記憶もないの……?」
「でもこの頃彼女と接してるうちに、まるで自分が増えたような感覚になることがあるんです。それも二人ではなく三人くらいに。何でしょうね〜、これが『思い出す』って事なんだとしたら、何か不安です〜」
 不安です、なんて口で言いながら──実際不安なのだろうけど──あっさり世間話でもするような軽さがあるレロシャン。
 ロレンシャは頬に手を当ててため息をついた。
「私の悩みは、姉さまが中々私の事を思い出してくれない事ですわね……。昔と性格も変わってしまったようでどうしたらいいのか……」
「え、ええっ?」
 静香の方がどんどん不安になってきた。
「あの……そういうこと、じっくり相談できる友達いるのかな?」
「パラ実の生徒会長さんは今でも親しみを感じます〜。かっこよくて素敵なんだもん……。あと別な意味で気になるのが泉 美緒(いずみ・みお)さんです……」
「べ、別の意味? もしかして胸とかコスプレとか石化するとかチョコ化するとか? そういうの??」
「理由……? なんかこう彼女を見てると無性に興奮するというか……。ムラムラというか……」
「む、ムラムラ……あ、あの、ロレンシャさんの方は?」
「もちろん姉さまですわ。他の方とは……まだあまり交友がありませんの。今日のパーティーで多少なりとも交流できればと」
 静香は、色々と考えて。
「じゃあ、趣味について聞いてもいいかな。なんだか手がかりになるかもしれないよ?」
「趣味……んープロレスとか好きですねー。見るのもやるのも。何でと言われても、なんとなく?
 そうですねー、正義トランスヒューマンになって、悪行トランスヒューマンをプロレスでやっつけることですかね〜。あ、これも夢ということで。トランスヒューマンろくりんピックでも優勝したいです」
「た、戦う以外で!」
「ああ、あとファッションですかねー。気に入ったコーデがあるとついついそればっかり着ちゃいます。最近はイコプラも好きです〜」
「私も、最近始めたイコプラでしたら姉さまと遊びます。これが意外と奥が深くて夢中に」
 静香は手元のクリップボードに挟んだ無地の紙に、レロシャンとロレンシャのデータ? を書きながら、よく分からない家系図だの線をぐるぐる引いていたが、遂に目を回してしまった。
「うーん、なんだかすごい展開になって来たよね。これって、あの……ああでも、ロレンシャさんは過去のこと知ってるんだよね?」
「先程申し上げましたが、双子の姉妹ですから」
 レロシャンの複数人っぽい感覚が正しかったとして。
 ロレンシャがレロシャンのクローンだとか──これはロレンシャが強化人間だから、ありそうな気もする。クローンを作る時にレロシャンが記憶を奪われたとか、頭を打って過去をなくしてしまった、ということもありうる。
 でも、家族が増えた感じって、なんかの共鳴なんだろうか? まさか、実はレロシャンも誰かのクローンだとか。
(もしかして、アホ毛の数がクローンナンバーだったり……となると、オリジナル・レロシャンにはアホ毛がない? ……ううん、そんなSFみたいな話あるわけないよねっ)
 妄想を静香は自分で打ち消して、今後は注意深く話を聞いてあげることにしよう、と心の中で思うのだった。